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2020年01月30日(木)

まちを感じて空き家を改修しよう!「古民家の再生」

森林文化アカデミー建築専攻では2年生を対象とした「古民家の再生」という授業の中で、既存家屋の実測と改修設計を行っています。

この授業の背景と目的は、全国で既存建物の改修・利活用が急務となる中、建物の調査と設計能力が実務者に求められていることに加え、木造建築の構造は明治を境に大きく変化しており、設計の際に考慮する要点が存在するため、実習を通してそれを学ぶというものです。

さて初日は、実習の前に講義です。現代の住宅と、古民家の違いは何か?歴史的な架構の変遷を中心に、木造建築の基本を学びます。この授業では「実測野帳」を採るので、実測の仕方についても解説します。

古民家の再生2019八幡

郡上八幡の町を感じながら実習するのが大切です。

二日目は実測調査。今回の舞台は、アカデミーから車で45分の郡上市八幡町です。八幡は無形文化遺産の徹夜おどりに4夜で20万人近くの観光客が訪れる城下町。市街地の町並みは重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。そんな賑わいある八幡の町にも、空き家問題が深刻化しています。町は空き家対策プロジェクトとして「一般財団法人郡上八幡産業振興公社チームまちや」を設置し、移住促進と共に空き家の改修・管理を実施しています。実習は、チームまちやさんのご協力で、改修予定の物件で行わせていただきました。

古民家の再生2019実測1

実測野帳作成開始。むくり天井のある家です。

古民家の再生2019実測2

真壁と大壁が混在するので難易度の高い展開実測。

古民家の再生2019実測3

柱が傾いていたり梁が途中で切られていたり、詳細に見て図面に落としていきます。

古民家の再生2019全天球写真

全天球カメラは調査時に大活躍。見逃しやすい情報も漏らさず写します。

グラフ用紙に平面図、展開図、架構のわかる伏図をつくっていきます。家を図面にする、というのは、図面を家にする設計の業務とは逆に思えますが、部材の基本的なおさまりやサイズを知り寸法を測ることで空間の印象を理解し、そこにある様々な工夫を追うことで先人の知恵を得ることができます。実測野帳作成は非常に多くの学びのあるスキルアップの近道なのです。

古民家の再生2019実測平面

実測平面野帳の完成。集中して描いた分、見やすく上手にかけました。

古民家の再生2019実測展開

実測展開野帳。たった二日ですが、後半にはかなり慣れて描くスピードが上がります。

古民家の再生2019集合

空き家と集合写真。良い利活用に導きたいですね。

三日目も野帳を採ります。実測したことで、この建物は二つの家屋が合体したような作りになっており、そのジョイントの部分の構造と雨仕舞いが、改修時の要点になることがわかりました。

古民家の再生2019山崎

チームまちや創設時からのスタッフ山崎寛功さんをアカデミーにお呼びして講義してもらいました。空き家対策室からみた空き家の現状です。

四日目は、午前中に各自で改修プランを設計します。実測時によく観て空間を感じているので「その建物の良さを生かす」「弱点を克服する」方向に設計することができました。
午後は、チームまちやからスタッフの山崎寛功さんをお呼びして、チームまちやの日本でも先進的な空き家対策の仕組みや、空き家対策のリアルな現状についてお話いただきました。その後はプランの講評にも参加していただき、予算との兼ね合いなどご意見をいただきました。

お話いただいた中で、東京生まれの山崎さんがどうしてチームまちやを選んだのか、というくだりは、人生の転機にアカデミーを選んだ学生さんにとって参考になったのではないかと思います。もしかしたら建築のスキルよりも大切なことだったかも。

古民家の再生2019プレゼン3

各自の案を発表。山崎さんからはこれまでの経験から現実的な意見が。そして最終日。2チームに分かれて改修案をまとめ上げます。構造と防火の仕様については講師から提案し、実際にチームまちやに提案できる案にまとめることを目標にして作業開始。各自のプランから良い点を集約させてもよし、コンセプトや問題解決点から考え直してもよしです。
夕方には発表です。2チームそれぞれがパース絵や紙芝居を用意して、色をつけたプランをプレゼンしました。移住者が楽しく住めて、建物の性能も向上させる面白い案になりました。

古民家の再生2019設計

2チームに分かれてプランを詰めていきます。

古民家の再生2019プレゼン1

最後はプレゼン。問題解決の項目をまとめ、それに沿った設計を進めることができたようです。

古民家の再生2019プレゼン2

人にわかりやすく説明するのが設計者の仕事のほとんどと言っても過言ではありません。図面もプレゼンもわかりやすく。

古民家の再生2019改修プラン

予算と使い勝手を考慮して玄関の位置を変更するという面白い案になりました。

古民家の再生2019断面

構造強度と防火性能と断熱性能を向上するための設計を提案できました。

 

今回の授業では、実測の時点で「見やすい図面の描き方」「建物の基本的なつくり」「改修時に気をつけなくていけない構造の部分」に加えて「町の雰囲気」を理解していることで、性能向上と、その町と家に合ったプランができるようになりました。

実際の空き家対策は、予算や工期の制限や、町の特有の条件が重なり、単純に建物の性能基準値を満たすことができないことが多々あります。しかし、かといって放っておくことはできないのが空き家です。まちを形づくっていた建物たちは空き家となって刻一刻と壊されていき、町は歯抜けになって、町並みに魅力が失われ、人も減っていきます。負のスパイラルを生まないために、空き家対策は様々な条件を詳細に整理し、いまの状況でその家にしかない最適解を導く労力が必要になります。画一的でなく一つ一つの建物に対してトータルに、自分で考える能力。授業ではそうした実務者としての姿勢を伝えています。

ご協力いただいたチームまちやの皆さんにこの場を借りて御礼申し上げます。
(今回の実測野帳と改修プランは成果物としてチームまちやに寄稿いたします。)

木造建築専攻教員:松井匠

 


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