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2017年08月15日(火)

教員オススメの一冊 5:建築は詩 建築家 吉村順三のことば100

建築は詩

建築は詩 建築家 吉村順三のことば100
著者:吉村順三建築展実行委員会 (編集), 永橋爲成 (監修)
発行年:2005年
発行元:彰国社
おすすめしている教員:松井匠


夜、一人で図面を引いていると、不安になることがあります。
「この天井の高さで、低くないかな……」
「窓枠は、この厚みでいいのか……」
「引き戸の金物は、本当にこれが一番合うのか……」
そんな時はいつも、本棚から吉村順三の図面集とこの「建築は詩」を出して、手元に置いていました。

吉村順三の図面は、じっと線を目で追いかけていくと、線の向こう側から、そこに住む人々の生活を感じます。正確には「吉村順三がこの家で想定した生活の様子」が伝わって来て、目の奥に広がっていくのがわかります。住む人の生活に向けられた吉村順三の眼差しが、羅針盤のように正しい方角を示してくれるようでした。そして、そこに「建築は詩」の吉村の言葉が加わると、自分の図面も安心して進めるような気になったのです。

吉村順三

吉村順三は日本を代表する建築家で、人の生活と、その些細な幸福を大切にした家をつくりました。日本の自然と風土に根ざした木造建築を深く理解した美しく簡素な設計は、多くのデザイン様式を生み、たくさんのお弟子さんたちに受け継がれています。その活動は幅広く、「たためる椅子」や照明器具などにも吉村デザインの名作があり、建物の温熱や設備にも精通していました。

現代日本で、住宅建築を主とする建築家のほとんどが、吉村建築の系譜から何らかの影響を受けていると言っても言い過ぎではないかもしれません。言い換えれば、そのくらい汎用性のある、万人に愛される設計をしたのです。彼の愛弟子の奥村昭雄が開発したOMソーラーシステムは、森林文化アカデミー自力建設の木材乾燥倉庫「活木処」にも設置されています。あらゆるところに吉村イズムが。

たためる椅子

「建築は詩」は、吉村順三が残した言葉が綴られている小さな本です。図面はありません。その時々の吉村の語りが2行から10行くらいに切り取られ、100ページほど綴じられており、完読に10分かかりません。
しかし建築はもちろん、ものづくりに関わる人は特に、一度開くと最後まで読んでしまうでしょう。はっとしたり、感心したり、安心したりと、しみじみ読み直したり、きっと忙しい読書体験になると思います。吉村の語り口から、住む人の生活とその空間に対峙する彼の佇まいが見えてきます。そういう作者の佇まいを感じることが、創作の醍醐味ではないでしょうか。
中の文を一つだけ紹介してみます。ぜひ一冊読んでみてください。

 

「修学院離宮に琴を置く棚がありますね。楽器というのは、鳴らさなくてもそこにひとつの世界をつくるものなのですね。楽器があるということで、雰囲気がずっと豊富になりますね。昔よく三味線などが置いてあって、なかなか気持ちのよい部屋がありました。ああいうふうに楽器が部屋に置いてあるということ、これは世界共通につくってきた雰囲気ではないかと思うんですよ。(『新建築』1967年1月号)」

 

 

松井 匠 講師

松井 匠
「木組の家づくり」と「古民家の再生」
建築・ものづくりにおける美術の基礎
研究テーマ 郡上八幡空き家プロジェクト
建築・ものづくりにおける美術

 

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