活動報告
2020年04月10日(金)

木材の輸送過程を見つめるウッドマイルズ(morinos建築秘話34)

「ウッドマイルズ」という言葉をご存知でしょうか。
このブログを見られている木材にも関心の高い方は当然ご存知ですよね(笑)

名前の通り、木材(ウッド)の輸送距離(マイルズ)に関する環境指標です。

morinosのV字柱用の演習林内の100年生ヒノキ。丸太の素性は明らかです。

今でこそ林業白書にも出てくる言葉になりましたが、きっかけは森林文化アカデミーの1期生、滝口さん(ウッドマイルズフォーラム理事)が課題研究の一部として取り組んだのが始まりです。

さて、このウッドマイルズ評価を行うと何がわかるのでしょうか。morinosのウッドマイルズを計算したシートを見てみましょう。

この3つの指標がウッドマイルズ評価の要です。

1.ウッドマイルズ

1つ目の指標は「ウッドマイルズ」です。
木材1m3を平均何kmの距離を輸送したかです。当然近い方が輸送時の環境負荷が小さくなります。

morinosのウッドマイルスは123 kmと計算されました。
あれっ、意外と大きい??
長野県や滋賀県まで行ってしまいそうです。

morinosは、基本的に木材は全て岐阜県産材ですが、原木市場や加工場、プレカット工場などを、うろうろしながら現場にやってきています。

例えば、V柱の丸太は、敷地のすぐ裏山のアカデミー演習林から伐採してきました。
そのまま学内で加工して使用していれば、この丸太のウッドマイルズは1kmもないでしょう。

アカデミー演習林の丸太を三つ紐伐りしている様子

ですが、さすがにアカデミーで加工するわけにもいかず、一度、郡上市白鳥町にある工務店の加工場に持っていき、木材乾燥や材料検査、大工さんによる加工を行いました。

丸太の加工が終わってmorinosの現場への出発を待つV字柱

それから、再度アカデミーに戻しています。

つまり、V字柱用の丸太10本は、アカデミーから白鳥町の加工場まで51.9km輸送し、加工後また51.9kmの距離を戻していますので、ウッドマイルズは103.8 kmとなります。
morinos全体平均の123kmに近いですね。

他の材も、山から原木市場、加工場、morinosへと各地を転々と移動して出来上がってきています。

ところで、日本の木材自給率をご存知でしょうか。

最新の統計では木材自給率は平均で36.6%です。パルプ・チップ類の自給率が低く足を引っ張っていますが、製材品でも48.9%です。(令和元年9月林野庁発表の平成30年度に実績より)
アカデミーが開学した20年前に比べて木材自給率が2倍近くになったとはいえ、まだまだ外材の方が使用量が多い現状にあります。

外材を使うとどの程度のウッドマイルズになるのでしょう。
ウッドマイルズフォーラムで、各地の平均的な輸送距離をまとめていますので見てみましょう。

例えば、各国の山から日本の港までのウッドマイルズは、
梁などによく使用される米松で、概ね8,200km
木目があっさりしていて建具や家具などにもよく使用される欧州材で、概ね21,400km
morinosのウッドマイルズ 123kmとは桁が1つか2つも違ってきます。morinosが、いかに近くの木材で建設されたかがわかります。

 

2.流通把握度

2つ目の指標は「流通把握度」です。
伐採された山から現場まで、どれだけ経路を把握できているかの割合を示す指標です。

morinosの流通把握度は77.5%と計算されました。

例えば、V字丸太は私たちが演習林に入ってこの木を伐ろうとマーキングし、どの経路で加工されて戻ってきたかの流通過程は全てわかっているため流通把握度は100%です。

ですが、合板や集成材などは岐阜県産材を使用したということはわかっていますが、全ての材で、どの山から伐出してきたかは把握しきれていません。
この不明な分が流通把握度を落としている要因です。

例えば、ヒノキ集成材の登り梁は、岐阜県内のどこかの山から岐阜市の木材市場に集められました。ここまでが流通経路が不明なところ。ぎふの平均的な集積距離の31kmで暫定的に計算しています。
その後、中津川市加子母で集成材に加工され、郡上市白鳥町で大工さんが刻んで、現場に搬入されています。
ウッドマイルズはmorinosの木材の中でも最も長い 255km。流通把握度は88%でした。

3.CO2削減率

3つ目の指標が「CO2削減率」です。
使用された木材の輸送過程におけるCO2排出量が外材も併用した場合の平均的なCO2排出量(ウッドマイルズフォーラム試算)に対して削減された割合を示しています。

morinosのCO2削減率は80.3%と計算されました。8割減とはかなり少ないです。

ウッドマイルズが小さいと当然、輸送時のCO2排出量も少なくなりますが、考えることはそれだけではありません。輸送時の効率を考える必要があります。

例えば、外国からやってくる船便であれば大量の木材を効率的に輸送できますが、国内輸送のトラックは船に比べて燃費が悪く、同じ材積、同じ距離を輸送するのに20倍以上ものCO2を排出することもあります。

そのため、輸送手段によるCO2排出量も考慮した指標として、CO2削減率が明示されています。
morinosは、船や鉄道に比べて輸送効率の悪いトラック輸送ばかりですが、ウッドマイルズが小さいというのが大きな削減ポイントになっています。

morinosと同程度の木造建築を地域材利用などを考えずに建設すると、平均的に4399 kmのウッドマイルズがかかるところ、morinosでは123 kmと非常に近くの材を用いています。(削減距離4,276 km)
そのため、3931 kgものCO2を減らすことができていると試算されました。

ウッドマイルズフォーラムのHPには、木材関連の図表や研究ノートなどいろいろな情報が掲載されていますので参考にしてください。

そのほかにも、ウッドマイルズを算出する過程で、いろいろな情報がまとまってきます。

・木材使用料:94.194 m3
  構造材(軸材):40.423m3
  V字丸太    :12.560m3
  CLTパネル  :10.800m3
  合板類    :6.013m3
  造作材    :17.888m3
  板材     :6.510m3
一般的な同規模の住宅では20~25m3程度なので4倍近い木材を使用しています。

・炭素固定量:63 t-CO2(使用している木材に含まれる炭素量)
建物を長く使用すればそれだけ長期間、炭素が固定されています。ハード的な劣化対策と、ソフト面からも長寿命化を目指すことが重要ですね。

・ウッドマイレージ:11,568 m3・km(ウッドマイルズ×材積)

・ウッドマイレージCO2:967 kg-CO2(輸送時に総量でどの程度CO2を排出したかの値)

 

近くの木で建設する魅力は、
携わった方々の顔が見えやすく、愛着がわき丁寧な施設利用につながったり、
身近な山の手入れが行き届き、山の健全化につながったり、
近くの職人さんの仕事を生み出し地域経済の活性化につながったり、
と、いろいろありますが、定量的に把握できる環境指標の一つとしての本学から始まったウッドマイルズ評価はいかがでしょうか。

准教授 辻 充孝


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