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2020年03月14日(土)

黒いスリットの秘密(morinos建築秘話10)

天井の黒いスリットにいくつかの狙いがあることは、以下のブログでも紹介しました。

照明計画と光の質(morinos建築秘話9)
大断面集成材の登り梁(morinos建築秘話6)

照明や防犯、火災センサー類を設置したり、登り梁の大きさを表現したりと活躍している黒いスリットですが、まだ秘密があります。

もう一度、スリットの登り梁上部をアップで見てみます。
気が付きましたか・・・。右のスリットになにやら黒い細長い物体があります。

このスリットの登り梁の下の方には・・・、何かロープが伸びていて、金物が取りついて足元まで下りています。

実はこれ、スクリーンや垂れ幕、飾りなどを取り付けられる黒い鉄棒が仕込まれているのです。

morinosでは電動ハイテクの設備より、ローテクで故障が少ない仕組みが似合いそうということで考えた仕組みです。

スリット内に仕込まれた滑車を利用して、2本のロープで黒い鉄棒を操作します。

まず1本のロープを緩めると、鉄棒の片側が下りてきて水平になります。(下の写真)

さらに、2本のロープを緩めていくと、順調に下りてきて、下の写真のあたり(FL+1700)で一旦止まります。
子供の頭に落ちてくることはありません。大人であれば、この高さでスクリーンなどを吊るすことができます。

この一旦止まる仕組みはシンプルなもので、ストッパーとして付けたワッシャが中段の金物に引っ掛かります。

この金物、何かフニャっと歪んでいます。実はこの歪んだ隙間を使ってストッパーをかわすともう一段階下がってまた止まります。もう一段上にストッパーがあるからです。(FL+400 )
こちらは歪んでませんので、これ以上は下がって床を傷つけることはありませえん。

ここまでくると、お子さんでも飾り付けを手伝うことができます。

金物屋さんとどんな仕組みにしようかと試作を何度か作成して打ち合わせてきましたが、なかなか上手くいきました。
私も実際に上げ下げしてみましたが、大人であれば、一人で操作もできる範囲です。

思い起こせば、現場事務所の白板で毎回いろんな打ち合わせをしてました。
下写真の右の方がこのシステムを検討していた時の図ですね。他のスケッチも実現しているものもあります。

さすがに、子供が10人ぶら下がると滑車が壊れかねませんので、やめてくださいね。あっと、1人でもダメです。

この鉄棒が、morinosのスリットに3か所仕込まれています。プログラムやイベントなどで活用してもらえると嬉しいです。

准教授 辻充孝