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2020年07月29日(水)

コミュニティスペース+社宅の提案(木造建築計画の応用)

クリエーター科2年の「木造建築計画の応用」は、1年次に学んだ計画の基礎を実物件で活かす授業です

今年の課題は、岐阜市にある小さな住まいの改修計画です。北西に小高い山を背負った景色の良い立地で、3方が道路に囲われた開けた土地です。

まずは、現地調査に6月末に伺いました。

木造建築病理学で学んできた現地実測の経験を活かし、各学生が効率よく分担して調査を始めます。

間取りはもちろん、小屋裏や床下も調査していきます。

この時わかった重要なことは、木造だと思っていた建物が、鉄骨造だったということ。

外壁は大壁(柱が見えないつくり)でしたが、内部には木の柱がありました。ですが、室内に見えていた柱は、間仕切り用のもので、直接構造とは絡んでいませんでした。

そこで、外壁の柱やブレース(地震や台風に耐える壁)を調べるために鉄探査機で位置を特定していきます。

 

概ね、構造や劣化具合が確認できたところで、今回の依頼主であるWさんにインタビューです。

利用用途や予算、改修への想いなどを聞いていきます。

ポイントとなる利用用途は2段階。

改修当初は、ご両親が地域のコミュニティスペースとして活用し、その後、工房を運営しているWさん社員の社宅として転用する計画。

なかなか、提案しがいのある内容です。

 

学生4名が各々計画を練り、学内での検討を繰り返し詰めていきます。

課題となる鉄骨造は構造の先生と話しながら方向性を固めていきます。

並行して行っているコミュニティスペースの提案は、4者4通り。どの方向性も捨てがたいと考え、4案のプレゼンをお願いしました。

 

さて、1か月の計画期間を経て、昨日再びWさんの工房に赴き、ご両親含めてプレゼンを行いました。

まずは、木造建築計画の基礎の流れを踏まえ、気象データの分析、航空写真等も活用して地域環境の分析、依頼主の要望整理などの共通説明を行いました。
依頼主であるWさんも建物を上から見た景色は初めてのようで、北西に広がる小高い丘や隣家との関係になるほどと。

そして、4人の学生から、図面や模型、3Dパースなど、それぞれのプレゼン手法で、コミュニティスペースや社宅としての利用、+αの提案をしていきます。

南北に抜ける通り土間を中心に機能を分けた提案。
最低限の設備だけを建築でつくり、家具で空間を分割して多用途に活用できる提案。
上下の動きを取り入れて外の景色につながる提案。
大黒柱を中心に4つに分割・融合された空間提案。

と計画内容は様々です。

Wさんからは、北西にある桜や山並みなど、自分たちでは気が付いていなかった魅力を改めて感じることができたとの感想や、コミュニティスペースというと、自治会集会場のような広い和室といった固定観念があったが、それ以外の可能性を感じることができたといった、ご意見をいただきました。

今後4つの案を検討して、どのような空間、進め方を行うかの家族会議が開かれそうです。

この先、どのように進んでいくか楽しみです。

准教授 辻充孝