樹種サンプルの製作〜オンライン授業に備えて
木工教員の久津輪です。森林文化アカデミーは5/31まで休校となり、新1年生は入学式もなく授業も始まらず、新2年生は学校施設を使うこともできません。このような状況の中で少しでも学ぶ機会を持ってもらおうと、5/11から新1年生向けのオンライン授業を始めることになり、教員たちは準備に追われています。
私は「木材の適材適所」という授業を提供します。これは、木材の種類を色や木目から同定し、それぞれの樹種の用途などを学ぶものです。30種類ほどを見分けられるようになってもらう予定です。
3月で退職した先輩教員が担当していた授業を私が引き継ぐのですが、去年まで使っていた樹種サンプルは「私物だから」と持っていってしまったので(笑)、新たに製作することになりました。結果的には、製作を通して私自身も改めてそれぞれの樹種を学び直すことになり、非常に良かったです。
岐阜県産の広葉樹で人工乾燥をかけた板材はふだん高山市の(株)カネモクで購入しています。カネモクはウェブサイトに在庫情報を載せているので、購入できる材の種類がすぐ分かります。新任の渡辺圭さんの研修を兼ねて、アカデミーの材料庫に切らしている板を買いにでかけました。
ここでは樹種ごとの山の中から1枚ずつ選んで購入させてもらえるので、ありがたいです。今回購入したのは17種類。1種類を除き、すべて岐阜県内の森で育った材です。
1枚1枚を検尺し、価格を出してもらいます。樹種ごと、厚みごとに単価が決まっていて、1枚1枚幅や長さが違うので、価格も異なるのです。
以前アカデミーで購入して保管しておいた材や、演習林などで伐採して製材・乾燥させた材を合わせると、全部で42種類になりました。これを同じ寸法に加工していくのですが、途中であることに気が付き、長さ30センチ、幅10センチ、厚さ3.33センチに統一しました。さて、なぜこの寸法にしたのでしょうか。
こうすると体積がほぼ1000立方センチ=1リットルになるのです。つまり水ならば1kgの重さになる大きさで、この角材をハカリに載せれば、だいたいの比重が分かるのです。
この木の場合、重量は約508グラム、つまり比重は0.51ぐらいで、水の約半分の重さということが分かります。厳密にはそれぞれの木の乾燥状態が異なるので、正確な比較はできませんが、だいたいの目安になります。
さらに、加工の際に木口(こぐち)を1ミリの厚さにスライスしました。道管や組織の配列を見るためです。その後、角材とこのスライス板をそれぞれスキャナでスキャンします。
すると、材面は上の写真のように、木口は下の写真のようになりました。このブログでは限られた倍率までしか見られませんが、実際には600dpiの解像度でスキャンしているので、道管の細かい配列までくっきり確認できます。
これらの写真データと、それぞれの樹種が民具、伝統工芸品、現代家具などにどのように用いられてきたかという資料を合わせ、オンライン授業用の教材を作っていきます。本当は手にとってもらえると、材ごとの質感、重量感、光沢など、いろいろなことを感じてもらえるのですが、このような状況なので仕方ありません。なるべくリアルに感じてもらえるよう、最善を尽くします。
さらに、学生に負担をかけずに使えるオンライン会議システムの比較テストなど、新しいことに次々チャレンジする毎日。なかなか大変です。あれっ、でもずいぶん楽しそうだなあ・・・。
ところで、上の見本に使った樹種、何か分かりますか? ある際立った特徴があり、木に詳しい人ならすぐ分かる樹種です。学生のみなさんは、正解はオンライン授業で!