活動報告
2017年12月12日(火)

「古民家の再生」美濃の旧松久邸で“実測野帳”作成!

今年度から森林文化アカデミーでは「古民家再生」の授業がはじまりました。
この授業では【古民家の見方・調べ方】と【古民家の良さを活かした再生の要点】を学びます。

日本は2030年には3割の家が空き家になると言われており、リフォーム・リノベーションの設計は、これからの設計者には必須のスキルです。中でも古民家リノベーションは、その風合いや文化的見地からも注目を集めており、観光施設としても地域のつながりをつくる場としても、利活用が重要視されるようになりました。

古民家は現代の一般的な木造住宅とは少し違うつくり方がされていて、良さを活かした再生のためには古民家の特性をよく知っておく必要があります。それを学ぶのがこの授業です。

授業は、初回が古民家の特性についてスライド講義、2回目からは「古民家の実測調査」を行う流れなのですが、今年の実測物件はなんと、文化財級の豪邸となりました!というのも、美濃市うだつの町並みにある「旧松久家」の調査を森林文化アカデミーが依頼され、それが偶然この授業の時期とぴったり重なったのです。素晴らしい!本格調査の前に、授業で実測という運びになりました。
「旧松久家」は、うだつの町並みの中にあります。和紙問屋を営み財を成した松久家の持ち家で、茶室と蔵がいくつもある大豪邸で、大小の庭を囲むように建てられ、各部屋から別々の庭を眺めることができ、室内も手間をかけた風情ある設えになっています。
近年、美濃市に寄付され、美濃市はこの建物を利活用するため、10年間無償貸与する形で、修理・利活用運用してくれる民間業者をプロポーザル形式で募りました。その結果「丸重製紙+一般社団法人NOTE」による提案が採択され、この建物を改修、整備することになったのです。

茶室を複数備えた間取りのためか、全体に数寄屋風のしつらえです。

趣のある台所。かまども、直したら使えるかも?

そこで工事の前に“「旧松久家」の良さを活かした”改修のために、森林文化アカデミーに建物の詳細調査依頼があったというわけです。調査は今年度内に、アカデミー卒業生で「一般社団法人インク」代表の中島さんにご協力いただく形で、木造建築病理学に則った調査を行います。

檜皮葺きを支える垂木。竹の端を杉で蓋して鉢の侵入を防いでいます。趣向が凝らされたつくりです。

蔵は豪壮な小屋組を見ることができます。骨組みを活かした改修になるといいですね。

今回の授業では、建物の内部の高さと意匠を測る「野帳」を採りました。これは実際に部屋に立って、図面でいう展開図にあたる画を描き起こすというもの。図面→施工という普段の設計業務と逆ですね。これによって建物のつくられ方がわかると同時に、つくり手の意図を理解することができます。その建物固有の「良さ」を感じる方法としては、一番良い方法ではないでしょうか。良質な建物で行う「実測調査」は、とても贅沢な時間です。

学生さんの描いた「野帳」。丸三日も描いたので、かなり手早く描けるようになりました。

この他にもたくさんの図面が完成。建具のデザインや、内部造作のおさまりを勉強する方法としても最適です。

丸三日間の調査実習で、寸法の入った13枚の野帳が完成しました。改修設計は、これを見ながら行うことで、より詳細に詰めて設計することが可能です。また、この建物が持つ独特な雰囲気を三日間感じ続けながら、構造からディティールまで採寸したことで、この建物の改修設計で残すべき部分が見えてきました。

できた図面をみんなで確認。「旧松久家」の特徴を捉えることができました。

みなさん、寒い中の実測、たいへんお疲れ様でした。みなさん渾身の成果品は、調査報告となって、今後の設計に活かされます。授業はここで終了ですが、詳細調査はまだまだ続きます。この建物の良さを最大限に活かしたリノベーションになることを願って、気を引き締めて調査していきたいと思います。

 

講師 松井匠


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