新カリキュラム始動:獣害対策PG
森林文化アカデミービジョン2040に基づいて獣害対策の新カリキュラムが開講しました
これまでにも森林文化アカデミーでは、クリエーター科・エンジニア科に向けた獣害対策についての基礎的なカリキュラムが存在しましたが、これからの日本の森林を持続的に維持管理していく為には「防護」「捕獲」だけではなく、科学的な知見に基づいた調査や生態を踏まえての適切な管理が必要であると考え、2025年から2週間を超える時間をかけて獣害対策を学ぶカリキュラムを作成しました。
受講者は11名ですが、狩猟に関心のある学生・食に関心のある学生・野生動物について知りたい学生・森林プランナーを進路に考えている学生など履修の動機は様々です。
まず初日は概論として森林と野生動物の現状把握そして野生動物管理の考え方に触れ、野生動物を取り扱う上で注意しなければならない感染症(※今年の夏にはSFTSが岐阜県内で発生しています)や関係法令などの講義を行いました。
野生動物の管理を取り巻く関係法令は複雑な為、岐阜県 環境エネルギー生活部 環境生活生活課の美濃輪晃人様にお越しいただき講義をしていただきました。ご本人も狩猟を長年続けており、過去・現在の経歴でも野生動物に関わる機会が多かったとの事で、複雑な法律や岐阜県の現状についても非常に分かりやすく解説していただきました。
・鳥獣保護管理法
・鳥獣被害防止特措法
・鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
・銃砲刀剣類所持等取締法
・自然公園法 自然環境保全法 森林法
・動物の愛護及び管理に関する法律 など野生動物の管理を考える際に必要な関係法令は煩雑です
2022年から岐阜県は岐阜大学と連携し『野生動物管理推進センター』を設立し、様々な調査研究が進んでいます。そのおかげで科学的な知見からの野生動物の管理に関するアプローチが可能になりますが、管理を担う現状の課題もまだまだある様です。現在公開されている捕獲数などの統計データを見るとニホンジカ等の対策は進んでいる様に見えがち(設定された目標値にはまだ達してはいないモノの)ですが、はたして今後森林被害の現状は改善されるのか?2023年におこなったシンポジウムでの参加者(山主さん)から発言のあった「数字上はニホンジカが減っているが、山林や農地の所有者としてはシカが減っている感覚はない」というコメントが思い起こされました。
実情を理解しこれから何を考え行動していくのか、森林を次世代に引き継いでいく為に林業に関わる我々が出来ることはまだまだありそうです。
美濃輪様
お忙しい中、整理が非常に難しい分野についてアカデミーの学生に向けて非常に分かりやすくリアルな話をしていただき誠にありがとうございました
報告:新津裕(YUTA)