活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2026年07月23日(木)

実物の観察で理解を深める:Cr森林獣害の基礎

森林獣害の基礎では、様々な視点(森林での過密エリア・里山エリア)からニホンジカを中心とした獣害について現地視察を通じて考えてきました。中山間地域では深刻な問題ですが、都市部ではまた別の視点での課題があります。そこで、歴史的にニホンジカとの距離の近い奈良を訪れ、森林では出来ない個体の観察をじっくり行いました。以下は学生のレポートです↓ ↓ 

【獣害対策の基礎】 奈良公園における二ホンジカの生態観察レポート

                                森林環境教育専攻 1年 藤井 恵・油谷 浩樹

 

4月以降、獣害動物の概要や二ホンジカによる森林被害、イノシシによる農作物被害など、身近な森林や農地の獣害を学んできましたが、最終回の授業は奈良を訪ね、二ホンジカの生態を詳しく観察するというものでした。距離を狭め、多少触れ合うことで見えてくるものや感じるものもありました。

 

【移動車中】

当日、早朝にアカデミーを出発し車にて3時間の道程でしたが、その車中も学びの時間となりました。美濃インターから高速に乗り、大垣経由で西に向かいましたが、名神高速に乗ってからは数々の「動物注意」の道路標識を発見しました。

可愛らしい「タヌキ」の注意標識は大垣市内から養老山系に入っていく里山あたりで発見しました。山深くなってくると「シカ」の注意標識が増え、また時折「サル」の標識も設置されており、街が近づくと「タヌキ」、といったように、動物の生活環境がそのまま標識の設置場所に反映されているということを再認識しました。結果的には奈良公園までの高速道路上の標識は、シカが10か所、タヌキが5か所、サルとイノシシが各1か所、合計17か所となりました。

  

【奈良公園~鹿苑~春日大社】

骨格やニホンジカの特徴を理解してから観察を始めました

奈良公園では1,300~1,500頭のシカが塀のない自然環境の中で生息し、地域の人々と共生しているという世界でも珍しい環境のため、世界中の観光客がこの公園に訪れています。共生が故の事故も少なからず発生しており、不測の事態に備えて(一財)奈良の鹿愛護会が鹿苑という保護施設を運営しています。私たちも春日大社まで徒歩で移動する途中で鹿苑に立ち寄りました。鹿苑は事故などでケガをしているシカや出産の近い雌シカなどを他のシカから隔離している一時収容です。このような民間保護団体の存在が奈良公園のシカを保護しているという現実を初めて知りました。奈良公園付近では「神の使い」として大切に保護され、保護地域から一歩出ると害獣として駆除されるという、一見矛盾しているような現実の前に獣害対策の難しさを感じました。

シカせんべい屋の前にスタンバイするシカ

鹿苑の保護されたシカ。暑さで日陰に避難

【30分間の追跡観察】

奈良公園を離れる時間が迫る中、各自で「対象シカを絞った行動追跡(30分程度)」を行うという最終ミッションにチャレンジ。私は「チュィーン」と鳴き声を上げながら歩き回っているメスジカにターゲットを絞り追跡しました。この鳴き声は母シカが見失った小ジカを探す際に発するのですが、なかなか見つからずに、ずっと公園内をさまよい続けていました。持ち時間の30分が経過し、小ジカは見つからないままに追跡は終了。この広大な公園敷地の中で見つかるのかと不安になりつつも帰途につきました。

他には30分中草などの餌を食べている時間がどの程度占めているのかに注目し追跡した学生や採食時におけるシカせんべいの場合と草の場合の反芻の違いに着目した学生もいました。

 

【帰途に向けて】

近くで細かな所作にこだわって観察することを重要性を感じました。奈良公園には過去に5回以上訪問したことがありますが、ここまでゆっくりと時間をかけ、テーマを持ちながらシカを観察したことはありませんでした。改めて、見学と観察の違いを考える機会を与えていただきありがとうございました。これをきっかけとして、今後も獣害に関して考え続けていきたいと思います。

遠路ご引率いただき、ありがとうございました。

シカから採食の被害を受けない植物だけ下層に残る(ナンキンハゼ)

土産物屋の店先で店先で寝そべる鹿は野生動物と呼ぶのに躊躇する姿

親子鹿。大きさだけでなく頭部の骨格の違いが見て取れます

以上

 

フィールドサインとしての足跡や食痕などを見て、野生動物の被害や気配を感じる事が出来ますが、実際に目の前でその痕跡を作る行動を見る事で、よりニホンジカへの理解を深める事が出来たのではないでしょうか。現地では海外からの来訪者が非常に多く、飲食店やお土産屋も観光で成り立っている部分もあります。被害と経済効果をどのようなバランスで地域を見ていくべきなのか、林業専攻と環境教育専攻の学生はそれぞれの想いをもって帰路につきました。

柵が一部でも外れていると樹木への被害は甚大です

編集:新津裕(YUTA)