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2020年12月25日(金)

「DON’T TRY」クロッキー教室2020

こんにちは。森林文化アカデミー木造建築専攻教員の松井匠です。

アカデミーで「クロッキー教室」をはじめて、はや三年になります。
「クロッキー教室」は平日毎朝、10分間絵を描いて、10分間講評する、という実習です。朝練みたいなものですね。
毎日描くことで、頭と身体の両方に「審美眼」を備えよう!という狙いで、ほんとうにほぼ毎日描いています。

今年は、新型コロナ対策で、教室よりも広々した学生ホールでクロッキーをしています。
タイムラプス動画を駆使して、実際のクロッキー教室の様子を動画にしてみました。0分51秒ですので、どうぞご覧ください。

 

 

この授業には「DON’T TRY」という隠れテーマがあって、それをちょっと解説します。

「DON’T TRY」は、チャールズ・ブコウスキー(Henry Charles Bukowski, 1920年8月16日 – 1994年3月9日)というアメリカの作家・詩人が、自身の墓碑銘にしている言葉です。「ブコウスキー 墓」で検索すると、写真がたくさん出てきます。ブコウスキーという人の破天荒な生き様と作品は、6つくらいタイトルを並べると想像つくかもしれません。(以下6つのタイトルはWikipediaより抜粋)

  • 『町でいちばんの美女』 The Most Beautiful Woman in Town & Other Stories 1972(青野聰訳 新潮社、1994 のち文庫)
  • 『ありきたりの狂気の物語』 Tales of Ordinary Madness 1972年(青野聰訳 新潮社、1995 のち文庫)
  • 『勝手に生きろ!』 Factotum 1975年 (都甲幸治訳 学習研究社、1995 のち文庫、河出文庫)
  • 『詩人と女たち』 Women 1978年(中川五郎訳 河出書房新社、1992 のち文庫)
  • 『くそったれ! 少年時代』 Ham on Rye 1982年(中川五郎訳 河出書房新社、1995 のち文庫)
  • 酔いどれ詩人になるまえに』 Factotum 2006年 (原作、『勝手に生きろ!』より) ← (これはマット・ディロン主演の映画。おすすめです。)

ブコウスキーの墓碑銘「DON’T TRY」については、これまでいろんな人が訳しています。「無理すんなよ。」とか「頑張るなよ。」というニュアンスが多いですね。そんな中、僕の恩師である青野聰先生が、ある手記の中で、この言葉をどう訳すか推敲しているシーンがあります。

“ブコウスキーの墓には「don’t try」と刻まれている。自分のことばにかえるなら「やめとけ」かな、と写真をみて何日かして思いがまとまった。そのあとで彼の詩からとっていることを知らされ、やりなおし。言語をまたぐことのむずかしさを楽しんだ。日本語の「……に会ってみる」とか「……と話してみる」「……をやってみる」といった、動詞のあとに「みる」をつける言い方。そこには現実の世界へ立ちむかうときの態度があらわれている。リハーサルに似た「試し」の希薄感がブコウスキーにはたまらない。「会ってみる」のではなく「会う」だ。「話してみる」のなら話すな、話すならただ「話せ」。ということで、時間にたいする不道徳を戒めているととろう。そうすると、素直に「試すな」とするのがよさそうだ。もっとすすめて「まじめにやれ」もいい。「ふざけるな」も悪くない。”

クールな翻訳でしょ?ぼくはこのエピソードが大好きなのです。でもこれをクロッキー教室のテーマにしているのは、好きだけではなくて、ちゃんと理由があります。

クロッキー教室2020早坂くんの絵

林業専攻2年生、“奇才”早坂くんの作品。

 

森林文化アカデミークリエーター科に入学してくる人は、自分の人生の方向を変えて、これからクリエーターになろうという人がほとんどです。
その人たちに伝えるべき“クリエーターとして備わってなくてはいけないこと”って、なんでしょう。
……これを読んでいるクリエーター稼業の方々にもご意見を伺いたいところです。ぼくはこの学校の教員なので、いつもこれを考えていますが、とても難しいです。考えれば考えるほど、どんどんわけがわからなくなってくる……。
けれど、ずっとこの世界に身を置いていたことで、ほんの僅かですが言えることがいくつかあって、その一つは「クリエーターは、自分がつくったものはぜんぶ自分のせい」ということです。「そんなの当たり前でしょ」と思いますよね。その通り!これは当たり前です。且つ、基本中の基本なので、これが徹底されていないと何も始まらないのですが、周囲を見回すと、意外にこれが抜けている場面に出会します。

「(成果物が変になったけど)クライアントがそうしろと言ったから(仕方ない)」
「(成果物が変になったけど)風邪気味だったから(仕方ない)」
「(成果物が変になったけど)今回は本番じゃないから(仕方ない)」

ね?ありそうでしょ?
だから毎朝「DON’T TRY」の気持ちで絵を描くのです。「試すな」「まじめにやれ」「ふざけるな」を当たり前にしよう、というのがクロッキー教室です。毎朝なので「EVERYDAY 」をつけています。

たった5分×2枚ですが、そこに描いてある絵は、四角い紙の端から端、線の描かれていない部分まで、全て自分の絵。時間が足りなくて間に合わなくても、手や顔が変な方向を向いていても、くしゃみした拍子に紙が破れても、自分の絵です。自分だけの結果。それを同じ条件で描かれた友達の絵を並べて見比べる。こういう機会って、なかなかありません。

これからも続けて行きたいと思いますので、学生の皆さんは頑張って30分早起きして参加しよう!たのしいよ。

 
早坂くん卒業

今年は平均して6人くらいが毎朝集まります。毎年、朝型の学生さんが残ります。

休校だった5月には、オンラインで実施しました。学生のみなさんは家からネットを介して毎日参加し、技術の向上に努めました。講評も画面共有で行うことができ、これはなかなか面白かった!

 

 

木造建築教員:松井匠


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