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2020年04月20日(月)

Cobikiのウッドマイルズを算出する

先日morinos(森林総合教育センター)においては辻先生の行ったウッドマイルズの算出。今回Cobikiについても実施してみました。一言でいえば木材(ウッド)の輸送距離(マイルズ)に関する環境指標とのことですが、ウッドマイルズの説明はmorinosブログで詳しく説明されているので、こちらも併せてご覧ください。

https://www.forest.ac.jp/academy-archives/morinos-archi34/

 

計算・入力はそれほど面倒なことはありません。ユーザーは輸送ルート、距離、乾燥割合さえわかれば後はExcelに入れるだけ。Cobikiについては自分たちで木の調達をしているので、木材の出所については明確、、、と思っていたら意外と経路がありました。例年演習林(学内)の木材のみで完結することが多い中、今回は材料が足りなくて、外部(岐阜県産材ではあります)の木材も使用していたためです。

 

全部で5種類の経路の木材を利用

Cobikiでは全部で5つの経路の木材を使用しています。

1.アカデミー演習林材(人口乾燥あり)

思い返せば今回の自力は材料確保との闘いでした。材が足りないので、丸太から製材するのは良いとしても、天然で乾燥する時間がないことから人口乾燥で仕上げる必要がありました。

学内に山積みの木材から使えそうな丸太をピックアップ

 

人口乾燥炉を使用し、天然乾燥だと1年以上かかる乾燥を1週間程度で仕上げます

2.アカデミー演習林材(人口乾燥なし)

同じく演習林材ですが、天然乾燥の木材も使用しています。この場合輸送ルートは同じですが、乾燥に使用したエネルギーが発生していないので、別経路ということで算出します。

長すぎ・大きすぎて乾燥機に入らなかった丸太

3.母屋(もや)・東農ヒノキ製品流通協同組合にて購入

母屋については必要本数が学内調達では間に合わず、大工合宿を行った東農ヒノキ製品流通協同組合で購入。墨付け・刻みを同じ場所で実施したため、他のところから購入するよりは若干輸送距離の節約になったかもしれません。

 

4.野地板・白鳥林工にて購入

屋根に使う野地板についても同様に購入しました。板材からパネル作成という選択肢もなくはなかったのですが、屋根ということで面積が大きいこと、また板材も十分にはなかったため郡上にある白鳥林工にて購入。コストを抑えるため、最終仕上げは自分達で行いました。

表面はあえて荒材仕上げ。塗装をして長さを合わせていきます。

5.レールカバー・オリンピック/パラリンピック材用の岐阜県産材

オリンピック・パラリンピック用に県内にて準備されたものの、検査にはじかれた材をアカデミーで一部もらい受けています。割れが目立つものが多いのですが、構造に影響のないレールカバーに使用しています。

 

作成したレールカバー

Cobikiのウッドマイルズ算定結果

さて上記の経路情報を入力した結果がこちら。

星の数、平均値との比較を見る限りCobikiはかなり優等生だということがわかります。ただ当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。世間の建築物は外材も使用するし、そもそもウッドマイルズなど意識しない所が大半。学内の木材を使用できる自力建設の建物は相当恵まれた環境にあると言えるでしょう。

 

ウッドマイルズを使う意義

気になるのはウッドマイルズを運用するメリットですね。普通に考えると輸送距離(乾燥方法)による「CO2の削減量」等の見える化が主な目的になるのでしょうが、私としてはそれに加えて「木材の経路の見える化」が有用なのではと感じました。

 

今回Cobikiの輸送経路を振り返ると意外と多くのルートがあり、その中の作業、経路には無駄も多くあったわけです。もちろん通常の建築であれば、使用部材などはもう少し整理されているのでしょうが、単なる樹種とか、寸法以外の切り口でまとめることで物流を見直すきっかけになるのではと思ったりしました。

 

また売る側(工務店・設計事務所)としては自社の使用木材の素性を宣伝として使用出来、買う側(一般消費者)としてもどこにどんな材料が使われているかを知ることで、より愛着のある家を建てることができるのではと思います。

 

ウッドマイルズの算出には特別な環境が必要なわけではないので一度使ってみて、自分なりにカスタマイズしてみるとさらに面白い発見があるかもしれません。

19期生 下田大輔