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2026年11月05日(木)

【視察報告】ドイツ・オーストリアの林業と林産業を視察しました ④製材工場・製材機械メーカーについて学ぶ

 令和8年10月9日(金)~18日(日)の行程(※移動込み)で、「ドイツ・オーストリア森林・林業視察2026」に参加しました。

【参考記事】

【視察報告】ドイツ・オーストリアの林業と林産業を視察しました ③ロッテンブルグ林業大学の施設見学

 

木造建築専攻の畑佐です。

今回は、13日(火)に訪問したドイツの製材工場・製材機械メーカーについてご報告します。
訪問したのは、ドイツ南西部の黒い森(シュヴァルツヴァルト)地域にある製材工場「Echtle社(エヒテレ社)」と、製材機械メーカー「LINCK社(リンク社)」です。

ロッテンブルク林業大学のカイザー学長にも同行いただき、移動中には黒い森の製材業についてさまざまなお話を伺いました。

(黒い森は酪農(牛)が盛んらしいです。写真は馬です。)

 

【黒い森の製材業】
意外だったのは、黒い森では年間原木消費量100万㎥を超えるような大規模製材所をつくることが難しいということです。有名な林業地なので製材業もものすごい規模の工場がバンバンあると思っていました。

日本から見ると100万㎥というだけでも桁違いの規模ですが、ドイツではそれほど珍しくなく港湾部を中心にこうした大規模製材所が数多くあります。

一方、黒い森は山間部で、輸送や工場敷地、原木の貯木スペースの確保などに制約があります。そのため、小中規模の製材所がいまだに数多く地域に点在しているそうです。
山間部に製材所が点々と立地する様子には、岐阜県の飛騨・高山など、日本の山間地域にも少し似た雰囲気を感じました。

(バス移動中もたくさんの製材所を見かけました)

 

 【「量より質」のエヒテレ社】
午前中に訪問したエヒテレ社は、主にモミの大径材を製材する中規模の製材工場です。
年間原木消費量は約45,000㎥、従業員は45名とのことでした。

(エヒテレ社)
特に印象的だったのは、「量ではなく質」を重視した経営です。
廉価品を大量生産するのではなく、地域材であるヨーロッパモミの特徴を生かした高付加価値製品を生産しています。モミは1番玉のみ使用します。

(小原さんとエヒテレ社長、後ろはモミ。とても大きい)

代表的な製品の一つが、モミの白く落ち着いた色調を生かした無節の柾目フローリングです。
製材だけでなく、乾燥、選別、加工まで一貫して行っていることも特徴でした。
日本にも、柾目を生かして、かまぼこ板や塔婆などの製品を輸出しています。

(内装材を製造している様子)

また、製材時に出る副産物を利用したバイオマス熱供給も行っており、周辺約300世帯へ温水を供給しているとのことで、製材所が地域のエネルギー供給にも関わっていることが印象的でした。

(社内で300以上の世帯すべての配給状況を管理している)

そして、個人的に一番驚いたのが製材設備です。
ドイツへ行く前の私は、「ヨーロッパでは丸鋸による製材が主流で、帯鋸はほとんど使われていないのでは?」と思っていました。
ところが、エヒテレ社で使われていたのは帯鋸盤でした。

(EWD社製の傾斜帯鋸盤)

しかも日本でよく見るものとは異なり、往復の両方向で切削できる「両刃帯鋸」です。
帯鋸を選択している理由の一つとして、歩留まりの良さが挙げられていました。

(両刃帯鋸)

実際の設備を見ることで、自分が日本で抱いていた「ドイツの製材」のイメージが大きく変わりました。

 

【製材機械メーカー「リンク社」】
午後は、製材機械メーカーのリンク社を訪問しました。
こちらは丸鋸を用いた製材機の製造を主力事業とする、歴史あるメーカーです。
普段は視察をほとんど受け入れていないとのことでしたが、今回はロッテンブルク林業大学の教授のご協力もあり、特別に施設内をご案内いただきました。

(社内の撮影はNGだったため正面玄関の写真をたくさん撮りました)

リンク社では、機械だけでなく、デジタル技術や油圧・電気系統などすべての技術を自社で設計しているそうです。
原木の種類や製品構成、生産量、工場のスペースなど、顧客ごとの条件に合わせてライン全体を設計することを重視していました。
同社の製材機は日本でもすでに3か所で導入されており、世界では約350社の顧客がいるとのことでした。

特に興味深かったのは、原木の元末を揃えずに製材できる設備などを通して、製材機械の進化が川上側の仕分けや流通にも影響する可能性があると感じたことです。
製材速度だけを追求するのではなく、川上から製材まで、全体として効率化する視点の重要性を感じました。

 

【一日を通して】
ドイツの製材業の一端を実際に見ることができ、とても有意義な視察となりました。
特に印象に残ったのは、帯鋸の使用、大径材への対応、少量多品種・高付加価値化による生き残り戦略など、日本とドイツに、意外と共通点がたくさんあったことです。

日本で考えているだけでは、知らず知らずのうちに思い込みができてしまいます。
だからこそ、実際に現地へ行き、自分の目で見て確認できたことに大きな価値を感じました。

(料理名は忘れましたが、この日の夜ご飯が一番おいしかったです)

ご案内いただいた皆さん、同行いただいたカイザー学長、そして通訳していただいた小原さん、本当にありがとうございました。

 

木造建築専攻 畑佐