【木工事例調査】木曽のおもちゃツアー
今年度は、木のおもちゃ作りに関心があるという学生が複数いたため、放課後の時間を使って「木のおもちゃゼミ」という学びの時間を月に数回行っています。
少し前になってしまうのですが、先だって、このゼミに参加している学生達と一緒に木のおもちゃ工房とおもちゃ美術館を合わせて見学に行く「木曽のおもちゃツアー」を行いましたのでご紹介します。
ナルカリクラフト
ナルカリクラフトは長野県木曽郡木祖村にある木のおもちゃ工房です。木のおもちゃ作家で電動糸鋸を使ったパフォーマンスでも知られている草刈成雄さんの工房とショップがあります。草刈さんの工房は山の景色がひらけた道路沿いにあり、ここで木のおもちゃを作られています。

ナルカリクラフトのショップ、草刈さんの作品に埋め尽くされた素敵なお店でした
工房を訪問した私たちは、まず最初に、草刈さんの作品の並ぶショップを見せて頂きました。ショップの棚や壁は、隙間を埋め尽くすように草刈さんによって作られた木のおもちゃやアート作品が並んでいました。
草刈さんの作るおもちゃは、地元のカラマツなどの間伐材を使った、かわいらしい動物をモチーフにした車やカスタネットなどがあるのですが、ふとよく見ると、ギョッとするような、解剖模型やモンスターなど、一般にイメージされる、子どもの木のおもちゃではまず使われないであろうモチーフを使ったパズルや人形なども並んでいます。
その独特の世界観に一同、びっくりしたり、面白がったりしながら見学をさせてもらいました。

かわいいカラマツの間伐材のガラガラなど
草刈さんはとてもサービス精神旺盛な方で、工房の案内をしながら、木のおもちゃを作り始めたいきさつや、これまでどんなふうにして作家のキャリアを積まれてきたのかを聞かせて下さいました。

ナルカリクラフトの草刈成雄さん
草刈さんは上松技術専門校で木工を学んだあとに、ここ木祖村に工房を構えました。当時、木工を学んだあとは家具を作る人が主流だった中で、木のおもちゃ作りに進んだ草刈さんは、かなりめずらしい存在だったそうです。
当時人気番組だったTVチャンピオンに出演をされたりもしながら、地元での活動も大切にされており、相談を請ければ地域のイベントを運営してみたり、糸鋸メーカーとのかかわりの中で「パフォーマンスとしての糸鋸作品作り」を始められた話など、おもちゃの作り手から広がっていく活動のお話をたくさん聞かせて頂くことができました。今はご自身で作られた作品を出演させるストップモーション映画を作ることに力を入れて取り組まれているそうです。ただ作って売るだけではない、作家として取り組まれている表現ともの作りのについて、とても楽しそうにお話されるのが印象的でした。

本当に、あっという間に、目の前で作って頂いた動物パズル

自分が普段、糸鋸を使いこなしていないので、すごい勉強になりました。
草刈さんの作品というと、時にブラック的なセンスも混じる独自の世界観に目が行きがちになってしまうのですが、お話を聞くほどに、1つ1つの作品作りや、プロジェクトに対して、とても丁寧に・誠実に取り組まれている方であることを強く感じました。
例えば、イベントなどで行うパフォーマンスでは、ものすごいスピードで糸鋸作品を作り出していくのですが、それを見に来てくれた子どもに配る作品は、「早切りでは切断面が荒れたものになってしまうから」と、別にきれいに切り抜いた作品を用意するのだそうです。そこには「良いものを届けたい」「地域の木を活かしたい」といった、実直な作り手のあり様を感じました。
これから自分の作品として木のおもちゃを作っていきたいと考える学生にとって、これ以上ない、良い言葉を頂くことができました。

おもちゃ作りの機械のお話から話題はどんどん広がりました
木曽おもちゃ美術館
ナルカリクラフトの工房見学を終えた後も、ショップでお土産探しをしたり、少し遅いお昼(おいしい長野のお蕎麦)を食べた後、さらに車を走らせて木曽町にある木曽おもちゃ美術館を見学に行きました。この木曽おもちゃ美術館は、近年、日本各地に増えている東京おもちゃ美術館の姉妹館になる美術館です。

全国に展開するおもちゃ美術館
ここはもともと、築百年を超える木造校舎を改修して作られた施設で、一部は体験工房や民具を展示するスペースにもなっています。おもちゃ美術館のメインになる講堂部分は「体験型ミュージアム」になっており、おもちゃを実際に手にとって遊ぶことができるのが大きな特徴です。
ここでは靴を脱いで、足の裏に木の感触を楽しみながらいろいろなおもちゃを見たり、手に取ったりして遊んできました。

学芸員さんに教えてもらいながら5連けん玉に挑戦

東京おもちゃ美術館にもある、テーブルサッカーをしたり

収穫の森で、リンゴやきのこを収穫してみたり

展示されたグッド・トイであそんでみたり
これはなんだろう・・?という、遊び方のわからないおもちゃは、学芸員さんがやさしく遊び方を教えてくれます。
結局、これをやってみよう!あれはなんだろう・・と、閉館時間いっぱいいっぱいになるまで、色々なおもちゃに触れて、遊んで、楽しい時間を過ごしてきました。
岐阜県にも、色々な木のおもちゃで遊べる施設はありますが、建物全体がデザインされた空間として作りこまれたおもちゃ美術館は、また違った形で、目につくいろいろなところにワクワクが感じられる、素敵な場所でした。
木のおもちゃだけでなく、毎年選考されている「グッド・トイ」も展示されており、様々なおもちゃや遊びの形があることを感じられる、とても良い体験になりました。
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今回のツアーは、おもちゃゼミということで、おもちゃつながりの見学地を日帰りで回ってみました。
また機会があれば、このような見学と学びの場を作っていきましょう。
学生の見学に、お仕事の手をとめてご対応頂いた草刈さんやおもちゃ学芸員の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げます。
どうもありがとうございました!
木工専攻 准教授
前野 健