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2026年10月23日(金)

森の姿と森遊びから森林文化を伝える【クリエーター科共通授業 森林文化】

10月19日はクリエーター科とエンジニア化2年生の共通授業『森林文化』を行いました。
この授業では学外から招いた講師の方に、森と人の関わりや様々な森林文化のありようを学びます。
今回は木工専攻が授業を担当して、北海道の黒松内町より北限のブナ研究所所長の齋藤均(さいとう ひとし)さんをお招きして、授業を行いました。

森林文化の講義をする齋藤さん

森林文化の講義をする齋藤さん

黒松内町は日本にあるブナ林の北限地になります。
ここには自然博物館の黒松内町ブナセンターがあり、齋藤さんは20年以上にわたり学芸員をされてきました。
齋藤さんは現在、ライフワーク的に毎年、沖縄から北海道まで、日本全国の森にテーマを定めて、数十日というスパンで森を訪ね歩きながら、日本各地の多様な森の姿をご自身のインスタグラムで紹介されています。(齋藤さんのInstagram)

授業では、最初に地元である北海道の自然、そして、そこに関わる人たちの自然観について教えて頂きました。

北限のブナ林がラインになって見える

北限のブナ林がラインになって見える、貴重な景観

齋藤さんはまず、春の新緑のブナ林と秋の黄葉するブナ林が帯状のラインになっている様子を写真で紹介してくれました。このように植生の境界ラインをはっきりと見て取れる森というのは世界に例がなく、この景観はとても貴重なものなのだそうです。

北海道の森は明治以後の開拓期に大規模に伐採されてしまったために、それ以前の森の姿というのは、ほとんど残っていないのだそうです。大正時代に入って、この地域にブナ林が残っていたを当時の研究者は「奇跡」と表現して、黒松内町の歌才(うたさい)ブナ林の天然記念物指定に尽力されたそうです。

齋藤さんは講義の中で、たびたび「日本に森は残っていない」とおっしゃいました。当初はどういう意味だろう?と思っていた私たちですが、この後に紹介して頂いた日本各地の森をめぐる旅から、この言葉の意味に気付くことになりました。

照葉樹林に見られるクラウンシャイネス

照葉樹林に見られる、葉と葉が重ならないよう樹冠ができるクラウンシャイネス

森に関わる人は1度は行くべき!と言われた森

これから森林に関わるのであれば、1度は行くべき!と言われた森

日本各地の森をめぐる旅の様子は、齋藤さんのインスタグラムでも紹介されています。興味のある方はぜひ、そちらをご覧頂きたいのですが、本来の自然の生態系に沿った植生の森には、その土地に根差した樹種が巨木に育ち、その地域の気候や標高ならではの美しい森の姿が残っていることを紹介して頂きました。
私たちは齋藤さんが足を運ばれ森の旅の写真を見て「ぜひ行ってみたい!」という森を知ると同時に、今の日本では、本来の森がほとんど残っていないという課題にも気付くことになりました。

・・・・

今回の講義では、齋藤さんが実際に触れてきたり、誰もが知っている映画の中にも見られるような“森林文化”、森から得られる素材を、それぞれの地域、文化圏で人がどのように使ってきたかについても紹介して頂きました。

数々の話題の中で感じたこと。それは、昔は人が森と一緒に暮らしてきたこと。森の素材を上手に生活の中に活用してきたということです。
授業の中ではクイズの形で、森の植物や生き物から得られた繊維を並べて、それがどのような生き物から、どのようにして採られているのかを教えてもらいました。

これなーんだ?

これなーんだ?先生方もわからない素材が並びます

並べられた繊維の中には、「なんでそんな製造方法にたどり着くの?」というような、不可思議な工程で作られるもの。今は文献に残っていても、実際にそれを作れるのは数人しか残っていないというような、失われつつある素材もありました。

つまりこういうことです

なぜこのような製法にたどり着いたのか?昔の人、すごい!

齋藤さんは、このような森の資源を探し出し、実際に昔のもの作りを再現したり、使ってみたりする『実験考古学』を森あそびとして楽しむ様子もご紹介下さいました。その中には、木材を叩いてかご編みの素材を作ってみたり、アイヌの道具を自作してみたり、そして、今の時点で齋藤さんが行き着いた、道具のもとになる刃物の素材作り『たたら製鉄』のお話にまで、話題は広がっていきました。
お話を聞いていく中で、森遊びを深めていくほどに、本来の森の姿や、かつての森林文化の大切さにも意識が向くようになっていくのだということを感じました。

一方で齋藤さんは、いきなり難しいことから始めるのではなく、まずは地元の森の山菜を食べてみることや、目につく自然の変化を暦にしてみるような、やさしい一歩から始めていくのでも、森を見る視点は変わっていくとアドバイスをしてくれました。

齋藤さん自作の刃物で木を削ってみる教員、学生たち

齋藤さん自作の刃物で木を削ってみる教員、学生たち

講義終了後も齋藤さんを囲んでの質疑や、持って来て頂いた様々な自作の道具をさわらせてもらい、それを試す学生、教員が多く残り、楽しそうに交流をしていた様子がとても印象的でした。

「一生幸せでいたいなら、森の遊び方を覚えなさい」

齋藤さんの言葉が、学生達にとって、これからの人生を楽しむための良い助言となることを願っています。

木工専攻 准教授
前野 健