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2026年09月29日(火)

木工の経営学② ノクターレ(高山市)の見学

 木工の経営学の授業で、飛騨高山を中心に活躍中の木工職人、ノクターレの塩谷英雄(しおたに  ひでお)さんの工房を訪ね、講義をしていただきました。

小学校で指導中の塩谷英雄さん

地元の小学校でグリーンウッドワークを指導中の塩谷英雄さん

 木工を学ぶ私達にとって、木工は続けていきたいけど「どのように生計を立てていけば良いの?」などの疑問に個人工房のリアルな経営、決算やコスト計算など数字の面からリアルに語っていただきました。

 塩谷さんには、この授業の前から木工やグリーンウッドワークなどアカデミー関連で大変お世話になっております。私自身、活動に参加させていただくと作品の丁寧さはもちろん、講座の伝え方、子供も難なく体験ができるような丁寧な仕組み作りに魅了されます。その秘密は工房の隅々にも現れていました。

削り馬という道具

削り馬のペダル付近にオリジナルの工夫

 これは、グリーンウッドワークで使用する「削り馬」です。足で押すことにより、手元の材料がしっかりと固定される仕組みです。足元を見ると、子供が一人でも無理なく、しっかりと足で踏み込めるようにと塩谷さんが考えた専用のアタッチメントが取り付けられていました。このようにどんな人でも使用しやすく、楽しく体験ができるように様々な工夫が多岐に渡りされていました。

 

茶杓製作用の治具

茶杓製作用の治具

 この写真は、グリーンウッドワークで商品化を目指すため、木の個性を出しながら一定の精度、均一さを出すために考えられた茶杓製作用の治具です。効率よく、かつ丁寧に仕上げられるように治具の工夫をされている様子が見えます。まさに、『アイディアマン』です。

 

 次に経営面の講義についてです。

 塩谷さんの工房は、もともとフラッシュ家具の部材加工など、大手家具メーカーの下請け仕事からスタートしたそうです。当時は図面通りに作れば注文が来る安定感があったものの、2004年頃に大手の下請け仕事が内製化され、打ち切りされるという危機を経験されたとおっしゃっていました。

「ひとつの仕事に依存していると、突然ゼロになった時に明日からどうしようもなくなる」と仰っていました。

 その経験から、自社オリジナル商品の開発や、相手先と共同で作り方を提案するODM(Original Design Manufacturing)、ふるさと納税、さらにグリーンウッドワークを中心とした体験ワークショップや商品開発、収益の柱をいくつも持つ「リスク分散」を徹底されていました。グリーンウッドワークを続ける理由の一つとして、万が一、工房の機械がダメになった時のことも考慮しているとおっしゃっていました。このように分散させると、管理の手間ややり取りは増えて大変ですが、長く続けていくためには大切なことだとお話を聞いていて感じました。

塩谷さんの講義のスライド

塩谷さんの講義のスライド

 

 塩谷さんは、「今思うともっとスマートに稼ぐ道はいくらでもあったかもしれないと後悔する日もあるが、崖っぷちを幾度と経験し、その度、たくさん考え工夫し、行動してきたことでやり続けることができた。」「木工で食べていくことは簡単ではないけど、常にアンテナをはってチャンスをつかむことを続けることで自分自身、少しずつ木工を営む面白さを感じてきた」とおっしゃっていました。そんな試行錯誤を繰り返し、新しいことに挑戦し続ける塩谷さんだからこそ、その周りには自然とたくさんの人が集まり、また、そこから新しい仕事やご縁が生まれていくのだと感じました。

塩谷さんの代表作の1つ、iPhoneケース

塩谷さんの代表作の1つ、iPhoneケース

 技術を磨くだけでなく、数字としっかり向き合い、失敗しても検証しながら前へ進む。ものづくりを志す人にとって、大変リアルな講義でした。

 塩谷さん、本当にありがとうございました!

 

文・西川知花(木工専攻2年)