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2026年09月08日(火)

【アニュアルレポート2025】七宗町有林における木材生産と獣害対策を両立する森林作業道計画の作成

岐阜県立森林文化アカデミー活動報告より

七宗町有林における木材生産と獣害対策を両立する森林作業道計画の作成

准教授 塩田昌弘

目的

 一般的に林業が盛んな地域は森林率が高く、人工林率も高い。また、そのような山間地域では、過疎化が進み、高齢化も進んでいることが多く、森林率が81%を超える岐阜県では、濃尾平野から少し上流側に足を延ばすと、高齢化の進んだ集落と人工林という風景が当たり前に広がっている。

今回の調査地となった七宗町でも他の中山間地域と同様、過疎化・高齢化(令和6年時点で高齢化率48.74%)が進行している。その結果、集落周辺での人的活動が低下し、人と野生動物の境界線である「バッファーゾーン(以下、緩衝帯)」の維持が困難になっており、生活圏での野生動物被害が増加している。町民アンケートでも74%が鳥獣害対策を重要視しており、早急な対策が求められている。

この事態に対し七宗町はこれまで、クラウドファンディングを活用した森林整備などで緩衝帯の確保対策を講じてきたが、森林は間伐後に放置すると再び野生動物の住処に戻ってしまうという課題があった。そこで、「人が入り続けられる、入り続ける動機の持てる森林」を実現するため、年間を通じて頻繁に入山する猟師の活動に着目し、猟師が活用しやすい森林作業道の条件は何かを調査し作業道計画に盛り込む計画を作成した。

通常の森林作業道では、林業従事者の視点で計画するが、今回は猟師の視点を加えることで、継続的な獣害対策と木材生産を両立することを目指した。今回は、その計画作成の中で見えてきた知見について概要を紹介する。

概要

 本計画では、林業従事者だけでなく、地域の猟師も主要な使用者として想定した点が特徴となっている。計画作成にあたっては、通常の森林作業道の調査内容に加え、猟師への聞取りと使用実態から見えてきた点を盛り込んだ。その調査結果と最終的に選定したルートに盛り込んだ条件を紹介する。

 ① 猟師による作業道活用の実態把握

 まず、地域の中で実際に狩猟を営む方々が、どのように作業道を使っているか、また、作業道に求める希望を聞取りした。今回の計画に反映できなかった項目もあるが、参考にした主な実態や意見を記載する。

・町内の林道、作業道は猟期になれば、日常的に使用する。
・町内狩猟者のほとんどが高齢者、一日に何ヶ所も見回るので、車両(最低でも軽トラ)で走行可能な道が望ましい。
・道の途中や終点に車回しが必要。終点には必須。(狩猟ポイントになりうる)
・循環できるような作業道があれば最高。
・獣は山と川を行き来している。その動線に法の低い斜面があるとよい。
・人工林は、林内の倒木(切捨て間伐の倒木)が邪魔なことが多く、入る気になれない。

●図1 森林作業道の終点で篭罠が設置されている様子

 ② 地形・地質から見たリスク回避

 通常の森林作業道と同様、近年の集中豪雨による土砂災害リスクや管理メンテナンスの低減を図るべく、岐阜県の森林基本図、赤色立体図、地質図など様々な地図による検討や現地の観察、また踏査を行い、リスクを軽減できるルート選定を行った。

具体的には、常に礫が供給される崖錐がみられた「鞍部」、水分条件が良く小崩壊の履歴が疑われる「三角に侵食された斜面」、過去に描かれた基本図上で「雨列」記号が確認された地点、および地域の文化的遺跡の可能性がる「石垣」などが確認され、これらの通過を避ける線形を選定した。

 ③ 実際の計画に反映した、獣害対策を両立するための視点

 今回の調査地で見えてきた視点は、

 ・獣道と作業道線形の重なる地点の把握。 
 ・獣道の近くに捕獲等の作業ができる作業ポイントを設置すること。
 ・最低でも軽トラが通れる最小回転半径が望ましい。

以上3点を、新たな視点として計画に盛り込むことで、林業従事者が使い終わった後も、猟師による利用が期待できる計画とした。

今後の課題と展望

 今回作成した作業道計画は、既に開設が進み2026年度には、木材生産が実施され、獣害対策に資するか問われることになる。
 今回の計画作成が妥当であったのか、今後の継続的な観察を続ける祭の、振り返りポイントを記して今後の課題と展望にかる。

・水飲み場と隠れ場となるような住みか(今回の調査地でいえば尾根付近や隣接する広葉樹林)を結ぶルート上に、今回設置した作業ポイントが選ばれ獣道ができるか。

図2 木材生産と獣害対策を両立する作業道計画

教員からのメッセージ

 森林作業道は、木材生産の後10年程度放置されることが多いが、今回は、地域住民の中で日常的に森林に通う猟師が通うことを想定した計画作成という貴重な経験を得た。ここで得られた知見はシンプルだが意義深い。
 しかも、今後も観察を続け、今回得られた知見のブラッシュアップにつなげることができる。
 ゆくゆくは、森林整備で開設する森林作業道が、当り前に猟師が通い続ける道として活用され、一頭でも多くの獣の確保、集落周辺の農地や草花等の食害軽減につながり、ひとつでも多くの笑顔につながる、地域密着型の森林作業道の活用事例に繋がればと期待している。
 今回の調査では、24期生、米澤翼さん、杉村光香さんに、現場に何度も足を運び踏査を共に進めていただいた。最後に、この場をかりて感謝を伝えたい。道なき道を共に歩き、藪を払い、汗を流してくれてありがとう御座いました。

 

活動期間

 2025年5月~

連携団体

・可茂森林組合、七宗町役場

関連授業・課題研究&関連研修

・森林作業道・林道 (En)

・事業プラン作成(指導)実習 (Cr)

過去のアニュアルレポートは、ダウンロードページからご覧いただけます。