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2026年09月04日(金)

林業事例調査2026(2日目(1):岡山県真庭市)

 視察の2日目の午前中は、改めて西粟倉村にて、株式会社百森代表田畑様、百年の森林協同組合事務局内田様にお話をお聞きしました。

1.百年の森林構想の経緯・目的
 西粟倉村は、岡山県北東端にあり、兵庫県および鳥取県と県境を接する、西粟倉村の人口は1,218名(R8年6月時点、移住者20%)。村内面積は約5,800ha、内森林面積約5,400ha(森林率93%)、内人工林約5,000ha、50~60年のスギ、ヒノキ(1:1)で構成されています。

 百年の森林構想は、平成の大合併時に村の独立を志した西粟倉村の生き残り政策として作られました。この構想の目標は、村にある森林資源を活用し、地域に新たな雇用の場を作り、定住人口を促し、村のコミュニティを守ることです。

 村HPによると、当構想の具体施策は①光の差し込む森づくり、②森林所有者から村へ委託された森林管理、③森林再生のための商品化、を柱としています(※1)。2058年に「上質な田舎」になることを目指し、多様なローカルベンチャーと協働し、森林の集約化による適正管理と木材の付加価値化に挑戦。再生可能エネルギー導入にも積極的に取り組み、低炭素な地域づくりと地域内資源循環を起こす。このような村のビジョンと取組は、村に多様な人材を呼び込み、ローカルベンチャー起業による産業の多様化や関係人口の拡大につながっています。

※1:百年の森林構想https://www.vill.nishiawakura.okayama.jp/

 

2.株式会社 百森
 さて、百年の森林構想では、全国的にも課題となっている林業経営が困難=森林資源活用の低下・森林の公益的機能の低下(特に人工林)を背景に、村が山主から10年間の森林管理の委託を受け森林整備、木材生産を行っています。もし木材生産を行った場合の利益は村:山主/1:1の分収がなされています。ただし、数十年間整備・活用が充分に行われなかった森林の長期に渡る再活用には、森林の活用基盤を整える必要があります。村や林業事業体が森林を整備・活用する際に、①各森林がどこにあって、どこまでの範囲にあるのか、山主の権利関係の確認・調整、②その森林が今どのような状態で、どのような整備・活用が可能なのか、その際に活用できる補助施策や、個々の森林を超えた広域的・長期的な森林管理方針立案・検討・調整を行う、③実際の森林施業を行う事業体との調整、木材販売調整・清算等、などです。具体的には、森林の集約化(森林所有者の特定、所有森林の範囲(境界)の明確化、村と森林所有者との森林施業委託契約締結までの働きかけ)、森林施業内容の決定・森林経営計画の立案・申請・実行・調整(森林調査、施業内容検討<切捨て/搬出、作業道作設>、施業範囲検討、測量・施業実施主体への事業発注、木材販売、清算)業務が必要となります。これらの業務を株式会社百森が村からの委託業務として担っています。ちなみに、平成31年から全国で市町村が主体で行われる森林経営管理制度が施行される以前からこのような森林整備体制を実施しています。

 

3.百年の森林協同組合
 このように西粟倉村内の森林側の資源活用体制が構築された一方で、村の森から生産された木材を、先の構想に基づいて、様々な木材関係者とどのように活用・価値化していくかを調整する必要があります。百年の森林協同組合は、原木生産者(百森)、製材・木材製品加工業、薪生産業等が参加し、需給調整や売買価格決定、村産材の流通・PR・活用の検討を行っています。また協同組合は、村内で生産された木材が集約される土場の運営、木材の選別(山主毎、品質毎)や薪生産・乾燥場所の提供を行っています。

 村内での原木生産は約1万㎥/年、AB材2千㎥は村内製材業者、B材5千㎥は村外合板会社直送、C材3千㎥は村内熱エネルギーとして活用されています。村内加工された製材・製品は、都市部の商業建築物部材や遊具として販売、さらに村内公共建築に活用されています。C材は薪などに加工され、村内の温浴施設等で活用されています。

 

4.今後の展開
 西粟倉村の百年の森林構想の取組は、村の公共資金を投入され成り立っています。これを地域産業振興政策としてではなく、山間地域の地域コミュニティ継承支援政策、集落営林事業ととらえるべきだと思われました。しかし、村だけでの閉じた経済・社会システムだけで成立つわけではなく、村外部の経済社会環境の影響に常に晒されながら、木材販売(原木・加工品)や森林管理の戦術を更新していかなくてはなりません。この点では、今回は十分にお聞きできなかった村内森林資源の価値化を担う地域商社機能も重要となります。

 村内外の個人・組織と連携しながら、村の守るもの/変化させていくもの、を見極めながら5千haの森林を活用しながら100年単位の村づくりを村関係者の手作りで行っていく姿にとても共感を覚えました。

林業専攻1年 高橋 啓