【アニュアルレポート2025】日本型「森のせんせい」育成プログラムの検討
教授 萩原・ナバ・裕作

目的
morinosでは地域の森と子どもをつなぎ、五感体験と自由な遊びを日常化する「森のじかん」を展開してきた。保護者や学校からの評価も高く、それを促す専門家「森のせんせい」の育成が急がれる。しかし既存の環境教育指導者やインタープリターの育成プログラムでは不十分であることも分かっている。そこでドイツとイギリスの森林教育指導者育成プログラムを参考にしつつ、日本の状況に合わせた独自の「森のせんせい」育成プログラムを検討した。
概要
ドイツやイギリスの森林教育指導者の育成プログラム
ドイツの事例
ドイツ「Haus des Waldes」の指導者育成プログラムは、教師とフォレスターがペアで学び活動する「タンデムシステム」が採用されている。自然科学、持続可能教育、企画実践、アートなどの共通科目に加え、教師は森を、フォレスターは教育を学ぶことで、互いを理解し合い協働を円滑にする。研修は自らの現場で実践しながら3年以上かけて行われる。最終試験は企画と実践で厳しく審査され落第者も多い。年間15モジュール100本近い研修プログラムが提供されている。
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「Forst School」(イギリス)の事例
「Forest School」指導者育成プログラムは、主に教員や自然学校職員を対象に行われている。森林生態、アート、認知、野外技術、コミュニション、道具の使い方説明方法等幅広い領域をカバーし、異なるラーニングスタイルをリアルに体感しながら習得できる。5日間の実践講習後の研修は、日々の現場の実践をポートフォリオで報告し、チューターがそれにフィードバックをし続ける。指導者になるまで数年かかり、取得後は保育、学習、放課後、週末などに活動を展開する人が多い。

日本の保育教育現場から見えてきた課題と提案
日本型「森のせんせい」育成プログラムの検討にあたり、現場の課題とその解決案を20年間に及ぶ出前授業での経験をもとにまとめた。
🟢 教育アプローチへの固定観念
→ 大学や指導書で学ぶ指導方法や、勤務園(学校)の現在のやり方だけ
が絶対で唯一のアプローチだと信じている人が多い。保育士や教師の
視野や選択肢、価値観を広げる必要がある。
🟢 職員の異動
→ 日本独特の問題が職員の異動。動き始めた活動も、数年ごとに起きる
職員の異動でゼロに戻ることが多い。異動のある公立園&学校である
限り、専門的な技術を持った「森のせんせい」が外から関わり活動を
継続させる必要がここにある。
🟢現場でうまく提案・実現できない
→ 「森で保育や授業をしたいけど、上司や保護者の許可が得られない」
という例をよく聞く。森で活動することのメリットをしっかりと説明
でき、実現できる知識と行動力を養う必要がある。
🟢仲間がいない
→ たとえ一教員が森で授業を始めたとしても、同僚の応援なしに日常
化は難しい。森の楽しさや意義を実感できる応援団づくりの機会も必
要だ。
🟢原体験や野外技術がない。・森との精神的距離が遠い。
→ 若い保育士や教師の大半は、原体験がなく、森との精神的距離が遠
い。前向きに「森のじかん」を進めてもらうためにも、教師向けに原
体験を補充するプログラムも必要だ。
🟢 森林管理技術がない
→ ドイツやイギリスの教師の多くは野外技術や森の整備に精通してい
る。「森のせんせい」はもちろん、保育士や教員も森を健全で安全に
保ち活用できる基本的な野外技術および森林整備技術が必要だ。
🟢クレイジーさの欠損
→ 真面目すぎる教師が多い。森の空間を学びの場として最大限活用す
るには、柔らかい頭、遊び心、そしてクレイジーなマインドが必要
だ。
🟢「教えてしまう」
→ 「教えてしまう」癖がある。子どもたちの自由な発想や失敗、トラ
ブルを温かく見守り、子どもたちが考え、何度もトライしながら、解
決したり、創造できたりするよう、過不足ない関わり方を習得してほ
しい。
🟢予算がない。
→ 「やりたいけど予算がない」という話をよく聞く。保育士や教師の多
くは既存予算の中でのやりくりを考えている。外部資金を得るテクニ
ックを習得することが望ましい。
日本型「森のせんせい」必要な知識や技術 育成方法
前述の課題を踏まえ、日本型「森のせんせい」育成プログラムの理想的なスキルアップ領域と育成方法を以下の図にまとめた。
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今後の課題と可能性
今年度「森のせんせい」OJTトレーニングを、アカデミー卒業生を対象に始めた。また、美濃加茂市の現役保育士が科目履修生として学ぶ「里山保育士ベーシック1」もスタートした。これらの実践結果を参考にしながら「森のせんせい」の育成プログラムを徐々に構築していきたい。
教員からのメッセージ
指導者育成も、育成プログラムやシステム構築も、一筋縄ではいきません。ドイツの先駆者曰く「我々だって40年かかったんだよ」とのこと。どうやら近道はなさそうです。気長に、コツコツと頑張ります。