大滝 絢香
伝統技術を未来につなぐため、人・原材料・道具の課題解決を支援する
プロフィール
1979年生まれ、宮城県仙台市出身。木工専攻18期生。一般社団法人技の環理事。
大学でフランス語と言語学を学んだ後、共済組合、翻訳会社、旅行会社、大使館など国内外の様々な業界での事務を経験し、岐阜へ移住。在学時より、岐阜県文化伝承課「匠の技を支える道具の保存伝承事業」に調査員として携わり、現在は一般社団法人技の環(ぎのわ)にて活動中。
ウェブサイト: https://ginowa.org/
質問1)今の仕事内容を教えてください。
一般社団法人技の環では、伝統工芸品の製作や文化財の保存修理など伝統的なものづくりに関わる技術を次の世代へ持続的に継承していけるよう、主に人・道具・原材料を中心に調査や情報提供、普及啓発など課題解決に向けた支援を行っています。今は岐阜県文化伝承課から「『匠の国ぎふ』の技を支える相談事業」を受託し、その業務にあたっています。この他、運営に必要な経理、総務など事務局的な仕事も担当しています。
質問2)今の仕事で大変だなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください。
伝統工芸や文化財などの課題はその業界だけのことではなく、林業、漁業などの第一次産業、他の工芸分野、国内外の市場経済、人間関係など多種多様な課題が複雑に絡みあっています。その広大さに、専門性のない私は恐れ慄くこともしばしばですが、門外漢にも一分ぐらいは利があるだろうと開き直りつつ、日々勉強の毎日です。
質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?
この仕事には課題を解決したと言えるようなはっきりとした成果はなかなかありませんが、少しずつでも進める歩みの1つ1つが大河の一滴となり、伝統文化や技術を未来へつなぐ流れの1つになれたらいいなと願っています。
質問4)アカデミーに入学を決めたきっかけは何ですか?
海外生活を終えて帰国してから、日本の各地域に受け継がれる文化の豊かさを再発見しました。結婚で岐阜に移住することり、できることなら地域に根差した仕事をしたいと思ったものの、知識も地縁もない自分に何ができるのかと逡巡していた頃にアカデミーのセミナーを知りました。セミナーに参加して、「岐阜のことを知ろう、まずはそこからだ」と思うに至り、入学を決意しました。
質問5)アカデミーの学びで役に立ったことは何ですか?
「現地現物主義」の精神と「いなしの知恵」です。ややもすると頭でっかちに進みがちなので、自分自身や現状を顧みるお守りになっています。
質問6)専門分野以外の授業やプロジェクトで、役に立ったものはありますか?
専攻以外に林業や里山利活用に関する授業も取っていたのですが、その全てが今の仕事に役立っています。中でも「林業・林産業体験実習」と「原木の利用と流通」は、原材料の課題の理解にとても助けになっています。また、エゴノキの調査に一度参加させてもらった際に、原木育成の難しさを自分の目で見て知ることができたことも大きな学びとなりました。
質問7)アカデミーの学生生活で印象に残ったことは?
一番は、同期とのよもやま話。年齢もバックグラウンドも様々ですがそれを感じさせず、それぞれの来し方行く末を自分のことのように真剣に考えながらも、笑いの波に乗って心を軽くさせる人たちと共に過ごした時間は私の宝物になっています。
また、先生方の知見や情熱にも常に圧倒されていました。授業のどれもが濃密な上に導き方が巧みで、授業を受けただけで世界が広がるような高揚感がありました。いま振り返ってみても、こんなにも贅沢な学びの場にいられたことを幸せに思います。
質問8)アカデミー入学前の仕事が、今に活きていると感じることはありますか?
様々な業界を経験したこともありますが、任された仕事も多岐に渡っていたため知らず知らずのうちに「事務の何でも屋さん」となっていました。それが今の法人運営に役立っているなと感じます。
質問9)今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?
モットー:考え、悩み、学ぶ。
メッセージ:やりたいと思うことがあったら、思い切って飛び込んでみてください。真摯に取り組む先で可能性が静かに芽吹き、思いもよらぬ世界が築かれていきます。