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2019年03月03日(日)

木工事例調査 in 宇治・伊賀〜 ②平山日用品店

京都府宇治市の『平山日用品店』に見学に伺わせていただきました。製作・構造設計担当である平山和彦さん、製品企画・デザイン担当である平山真喜子さんご夫婦にお出迎えいただき、まずはお二人の経歴や『平山日用品店』開業までの経緯などをお話しいただきました。

 

お二人は、滋賀県立大学の同級生。旦那さまの和彦さんはプロダクトデザインを、奥さまの真喜子さんは住宅設計を専攻されていました。和彦さんは、大学2回生から家具作りを志し、上松技術専門校での修行後、京都の木工所にて設計事務所からの住宅に関わるお仕事に7年従事。一方の奥さまの真喜子さんは、大阪の会社でリフォームの営業や施工管理に3年弱従事されたのち、京都に戻り、大工さんの職業訓練校へ。のち、カフェ店員や雑貨の販売などをしながら「店主になりたい」と思われていたそうです。そんななか、独立を考えていた和彦さんと一緒にやろうという話になり、現在の場所に工房を構えたのが7年前。さらに5年前からは、工房に隣接するかたちで通り沿いに念願の実店舗もオープンなさいました。

 

『平山日用品店』という店名は、お店をやると決めた当初からのもの。平山さんが手がける家具は「作品」としてではなく「日用品」として扱ってほしい、という思いが込められているそうです。

真喜子さんがデザインするうえでの一番大きな目標は「自分が欲しいもの以外はつくらない」こと。また「デザインしたぞ!というものは作りたくない」「意味のある線でデザインをしたい」というご説明は、ショールームで目の当たりにしている平山さんの家具ひとつひとつが持つ、生活を支える日用品としての慎ましさ、潔さ、地に足のついた存在感などを納得させるものでした。

お二人のお話を伺うなかで印象的だったのは、店舗経営&デザイン、構造設計&制作という、お二人の役割分担の絶妙さです。それぞれが自然体で自分の役割をこなしていて、きれいに噛み合うご様子は、傍で見ていても大変に心地よく感じました。「妻がいなかったら、独立していなかったかもしれない。店を構えて独立したいという「欲」で引っ張ってくれているのは妻のほう」「作ること以外の負担は、妻が居ることでだいぶ減っている」等、奥様の「店主」という願いを共に叶えつつ、感謝の思いを口にされる和彦さんからは、人をまるごと受け入れ思いに寄り添う、静かだけれどどっしりした包容力のようなものを感じました。このお人柄がそのまま、生活に寄り添う「日用品」としての家具の佇まいに反映されているのかもしれません。

 

ショールーム内の家具についても、解説を伺いながら、じっくり触れたり座ったりする機会をいただきました。近年は、オリジナル家具のなかでも、椅子に力を入れているとのこと。とくに背もたれは、低めに作るというこだわりがあるそうです。見学者の皆で入れ替わり立ち替わり、大盛り上がりで座り比べた椅子それぞれ、背中が心地よく感じるポイントを座ってみて実感、かつ納得するところがあり、それぞれがお気に入りの椅子を見つけていました。

 

また、名古屋の木工家ウィークへのご出展でおなじみの方も多いであろう、折り畳み椅子を間近に拝見することができました。とある椅子の展示会に「折り畳み椅子が集まっていないけど、どう?」と誘われたことがきっかけで出展したところ評判がよく、この椅子のおかげで『平山日用品店』としてもかなり認知度がアップしたそうです。目の前でパタパタと箱状の椅子が平面に展開され、折り畳まれてキチンとコンパクトに収まる様子は、からくり細工を見ているようで、とても心躍るものがありました。

 

折り畳み椅子以前には、パズルのような組み立て式の子供椅子も作っていらっしゃいます。組み方によって出来上がりが選べる機能性と、子供が手を動かして自分のちからでカタチづくることができる面白さ、なにより組み合わせパーツとして考えられた線の格好良さをあわせ持つ、自分が子供のときに(大人になっても!)もらったら、とても嬉しい椅子だなと感じました。

最後に、今後の展望について伺いました。オリジナル家具を手がける割合は伸ばしていきたいそうです。独立当初は、あえて手仕事感を出さない感じを目指していたそうですが、それだと大手メーカーとの違いが伝わらないということにもなりかねません。今のお客さんは家具の知識も豊富で、ここに来る時点でマニアックな方が多いとのこと。お客さんはどういうものが欲しいのか、手探りで方向性を考え続けていると仰っていました。

 

私達がこの日訪問を予定していた他2件の木工家さんともお顔なじみの平山さんは、ご自身のスタンスについて「(手工具はほぼ使わず、木工機械を理知的に駆使する)永野さんと、(かんななどの手工具仕上げが特徴的な作風の)朝倉さんタイプの、中間を漂って模索しています」と謙遜して笑っておられましたが、その模索の「あそび」の幅が、お客さんひとりひとりの日々の暮らしに寄り添うような、懐の広さにも繋がっているのではないかと感じました。

お忙しいなかの貴重なお時間を割いていただいたうえ、終始、私達の聞きたいことを気にかけてくださり、丁寧にご説明いただきまして、一同とても感謝しております。

平山さん、ありがとうございました。

文責:森と木のクリエーター科木工専攻(1年) 庄司晴美


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