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2025年12月10日(水)

大人の木育ワークショップ <装森具>をつくる

木工専攻の規定の授業を履修することで、学生はぎふ木育指導員の認定がもらえます。今回ご紹介する授業は、2年生が自ら企画した木育プログラム(ワークショップ)の運営する、実践型の授業(木育講座の実践)になります。今回は2年生の浅野さんが自ら企画して取り組んだ、実践レポートをご紹介します。(木工教員 前野)

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去る11月9日、翔楓祭2日目にて、大人の木育WS―<装森具>をつくる―と題したアクセサリー作りのワークショップを行いました。

昨年実施した『木育講座の基礎』からステップアップした授業『木育講座の実践』として、自分で講座内容を考えて組み立て、実践してみるという授業です。

内容の検討

En2の林産業コースの皆さんにも協力してもらいながら、まずは講座内容の検討をしました。
今回対象にしたのは<大人>かつ<木育ライト層>。子どもが対象の木育講座に出会う機会は多いものの、大人が対象のものはそこまで多く無い印象だったことと、講座を体験した大人から大人へ、また大人から子どもたちへとその経験を伝えてもらえると「ぎふ木育」というものをより広く知ってもらえるのではないかと考えました。
<木育ライト層>向けとするにあたって、何を伝えればいいのか?という事を考えた時には、「そもそも木育という言葉は浸透しているのだろうか?」と感じたことから、講座の冒頭には木育という言葉の始まりと、ぎふ木育についてさわりだけ、そして今回使った材料に関して5分程度にまとめたスライドを使って説明をさせていただきました。

そして今回はストーリーのある木を中心にビーズを作って、それをアクセサリーとしてもらうという内容としました。ストーリーとは例えば、近所の保育園でやむをえず切ることになった木、アカデミーの工房から出たまだまだ使える端材、或いはロクショウグサレキンで青みがかった材、一般的にはまだ馴染みのないであろうスポルテッド材などを使用するといった事です。そういった具体的なストーリー性や来歴のわかる材料を用いることで、より親しみを持ってもらえるのではないかと考えました。

またアクセサリーにするというのは、身に付けるものを自分の手で作ることで、より木に対して愛着を持ってもらえるのではないかと考えたからです。私がこれまで趣味的に行っていたアクセサリー作りの経験が講座に役立てられそうだということもありました。

パーツの用意

先生から事前に「(ビーズの様な小さなパーツをたくさん作るのは)大変だよ…」と言われてはいたのですが、一度チャレンジしてみようという事で取り組み始めました。案の定、先生の言った通り細かいものを多量に作るのは大変でした…。

特に丸いパーツ!薄めの丸いパーツをたくさん作るのは丸棒を輪切りにする、という訳にはいきません。薄いパーツなので輪切りだと木口方向ですぐに割れてしまうからです。先生に相談し、一旦小さな板状の四角いパーツを作る→角の2点のみ仮接着して角材状にしていく→旋盤で丸棒状に削っておおよそ完成…という工程で製作しましたが、一度に沢山作ることはできないため、少し心が折れそうでした。一見単純な形状に見えても、出来上がるまでには多くの工程があります。

また薄めのパーツといえど、もう少し厚みを持たせておけば厚み方向からの穴を開けやすかったな…というような事に講座をやってみてから気づかされ、試作の回数や自分の中の想像が足りていなかったなと反省しました。パーツ製作中にはトラブルも発生し、かなり落ち込むこともあったのですが、色々と軌道修正など行いつつ何とか準備を行いました。

本筋とは逸れるかもしれませんが、友人でもある名古屋のフェアトレードショップ【顔の見える店 風”s】さんにお願いし、インドの職人さんが手仕事で作られたガラスビーズも用意しました。木のパーツとの相性も良く、参加いただいた方にも好評だったように思います。これを用意したのは「誰が、どこで、どうやって ものがつくられているのか、それをどうやって伝えていくのか」という事を私自身がものづくりに携わる上でのテーマ的にしたいと思ってのことです。
木のものづくりに関して言えば、川上でどんな人が何をどうやって伐り出して、川中で誰がどう木材として整えてくれて、川下の私たちがどのようにそれらを用いて、最終的に使ってくださる方に届けられるのか、という事も今回のWSで(押し付けない程度に…)伝えられたらと思い、そこに導入するために【フェアトレード】という言葉はとても分かりやすいキーワードだと考えました。

いざ当日…!

今回製作していただけるように用意したのはブレスレット、ピアス(又はイヤリング)そしてカブトピン(ストールピン)の3種類。今回カブトピンが最も人気でした。

当日、En2の水野君にスタッフで入ってもらっていたのですが、私の段取りが悪くきちんと色々なことを伝えられないままバタバタとスタートしてしまいました。申し訳なく思いつつ、てきぱきと動いてくれた水野君には大変感謝しております。

この日は前述したとおり対象は大人(18歳以上)、午前1回、午後2回の計3回、各回定員3名の予定で随時受付としていたのですが、これも事前告知や当日のアナウンスが十分でなく、結果的には想定した様な進め方はできませんでした。また通りがかる子どもたちがかなり興味を持ってくださったこともあり、タイミングや状況を見ながらではありますが、自分である程度製作が可能な年齢と思われる子どもたちにも体験してもらうことにしました。やりたいと思ってもらえるものをお断りする心苦しさがすごく大きかったという事もあります。その辺りは準備不足もですが、圧倒的に自分の経験不足を痛感しました。

結果的には全部で16名程の方にご参加いただきました。皆様自分の作品が出来上がった時にはとても嬉しそうにしてくださっていて、ホッとしました。ただ木育講座としてはそれだけで終わってはいけないので、本当は参加者の方からのフィードバックや感想をお聞きできていると次につなげられたかと思うのですが、そこも自分に余裕が無く気が回らず、大きな反省点であると感じます。一通り終えた今『木育講座の基礎』の時に伊佐治先生がおっしゃっていた「準備が八割」という言葉を今回も身に染みて感じています。

参加者さまの作品。それぞれの個性が光るような素敵な作品に仕上がりました。

そんな訳で私の木育講座デビュー戦(?)、自分としては歯がゆい結果にはなりましたが、次回のチャンスがあるならばまたブラッシュアップして、楽しく木育に携われるようなきっかけづくりとなる講座にできたらと思います。
最後に今回ご参加、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!

森と木のクリエーター科 木工専攻2年 浅野由佳梨