【‘25秋 木工事例調査⑤】久保田家具工房
木工やものづくりの事例見学をする木工事例調査。今回は1泊2日の行程で、滋賀県と三重県へ行ってきました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。
木工事例調査の最後に訪れたのは、
久保田家具工房です。
岐阜県・養老町の静かな田畑と山がゆったりと広がる景色の中に、
一棟のショールームがぽつんと佇んでいました。
お父様、久保田堅さんと
息子さん、久保田芳弘さん
のお二人で運営されていて、得意なことも、苦手なことも、お互いに補い合いながら作業されているそうです。
お父様のできない部分を息子さんが、息子さんのできない部分をお父様が支え合う、そんな自然な二人三脚の姿が印象的でした。
世代を越えて木と向き合い続ける、その柔らかな関係性が工房全体の空気にも表れているように感じました。
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お父様の彫刻 ─ ため息が出るほど繊細な手仕事
工房に入ってまず目に入ったのが、お父様の手がける彫刻作品でした。
木の流れや動きを丁寧に読み取りながら削り込まれた線は、どれも柔らかく、思わず触れたくなるほどの美しさがあります。
「木をどう生かすか」「どの木で彫刻を活かすか」を常に問いながら、長年積み重ねてきた技の深さを感じました。
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原木で材を仕入れ、天然乾燥で材を育てる
久保田家具工房では、材料を原木で仕入れ、製材所で挽いてもらっているそうです。
乾燥も人工乾燥ではなく、すべて天然乾燥。
時間も手間もかかる方法ですが、
•木のクセが素直に出る
•色味や香りがやわらかく残る
•家具になった時に経年変化が美しい
そんな理由から、長く続けてこられたといいます。
木を「材料」ではなく、「生きてきた一本の木」として扱う姿勢が強く伝わってきました。
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息子さんが広げる新しい方向:グリーンウッドワーク
一方、息子さんはお父様とは少し違う道を選び、
“生木を使ったグリーンウッドワーク”にも取り組んでおられるとのこと。
「父とは違う、自分のやり方で木に向き合いたい」
そんな思いから始められたそうです。
削り馬やナイフや斧を使い、生木のまま削る作業は、木の香りやしなりをダイレクトに感じられるもの。
新しい風が工房に流れていて、親子の価値観の違いが良い意味で調和し、工房全体に奥行きを生んでいるように感じました。
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今回の見学から学んだこと
“久保田家具工房”は
木を読むように、お互いの動きや間合いを読む。
そんなお二人の作業の様子がとても印象的でした。
丁寧な木の扱い方と、親子の穏やかな関係性がどこか似ていて、
その空気の中に長く身を置きたくなるような心地よさがありました。
森と木のクリエーター科 木工専攻1年 西川知花



