【‘25秋 木工事例調査④】山本工房
木工やものづくりの事例見学をする木工事例調査。今回は1泊2日の行程で、滋賀県と三重県へ行ってきました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。
木工事例調査の授業の一環として、三重県伊賀市にある木工房「山本工房」様の見学をさせていただきました。
バスから降りて階段を上ると前庭の先に大きな工房の全景と、牧歌的なデザインの鶏小屋、そして芸術家然としたたたずまいの工房主の姿が視界に飛び込んできました。
ポロンポロンと爪弾かれるピアノの音の流れるギャラリーには円環・螺旋・メビウスの輪をモチーフにされたと思わしき大小様々な木工作品が配置され、主の世界観で飾られた内装やそこに流れている荘厳な音楽とも相まって、何となく「永遠」とか「無限」といった言葉が連想されるように思えました。時々、とても遠くて高い所に来てしまったような感覚に陥ってしまいました。


その建物内部を横切って抜けると奥には公園のような、あるいはアート作品を配置した美術館の庭園のような趣きの空間が広がっていました。その一角にある、最近始められたというピザや飲み物を提供するカフェのような建物にて、山本様のお話をうかがいました。ちなみにこの建物もご自身で建造されたそうです(完成までの期間は三ヶ月とのこと)。


気持ちの良い風の吹き抜ける場所に、立派な一枚板の花梨や神代欅のテーブルが置かれていました。
何気なく置かれた柿の置物(洋梨もギャラリーにありました)、寄木で作られたテーブルの脚、天使をモチーフにした椅子など、強さや大きさだけではなく、そこには丁寧に作り込まれた繊細な美しさもあって、そのふり幅の大きさに終始圧倒されていました。
各種道具を収納する場所や作業台の上も細かく作り込まれていて(引き出しが小人の家の扉のようになっているなど)、使いやすさの為の工夫だけではなく、さらに見た目にも楽しく/美しく映るようにデザイン/造作されていました。
「何故、人は感動すると手をたたくのか?」
「魔女は何故、ほうきにまたがって空を飛ぶのか?」
飲み物を手に談笑する中、そんな問いかけが山本様よりありました。まるでギリシャ神話に登場するスフィンクスのなぞなぞのような趣き(「朝には4本足、昼には2本足、夕方には3本足の生き物は何か?」)。
各々、思いついた答えを提示してみるものの、最後まで主から「正解」という言葉はなく、結局その答えが語られることもありませんでした。
・日々のストレスや自分の中のもやもやを製作のエネルギーに変換する。
・誰かと同じ物を作っても仕方がない(その誰かの方が巧みなはずだから)。
・誰もやっていないことを見つけてそれを作らなくてはいけない。
・日々の中の色々な「何故?」に気づき、それについて真剣に考えることが大切。
正解にたどり着くことよりも、とことんまで問い続ける姿勢(過程)が大事なんだ、ということを言われたかったのかな?その姿勢の積み重ねが新しい発見や面白いアイデアにつながっていくということなのかな?と思いながら今この原稿を書いております。
工房内での丁寧なご説明、今後の私たちへの実務的・哲学的なご意見、そして心地の良い場所での素敵なひと時をありがとうございました。
森と木のクリエーター科 木工専攻1年 若井 芳昭







