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2025年11月10日(月)

【‘25秋 木工事例調査①】ヘムスロイド村

木工やものづくりの事例見学をする木工事例調査。今回は1泊2日の行程で、滋賀県へ行ってきました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。

 

木工事例調査1日目の午前は、滋賀県東近江市の「ヘムスロイド村」を訪問しました。

ヘムスロイド村は、広葉樹に囲まれた中に5軒の工房が並ぶ場所です。藍染、銅版画、写真、金属、染織の工房のほか、カフェや生木木工の工房もあります。

「ヘムスロイド」という言葉は、スウェーデン語で「家庭の手工芸」という意味です。暮らしに必要な衣類や織物、家具や道具などを手作りすることを指します。それぞれの工房では、自然の素材を生かして、さまざまな手工芸品が作られています。

最初に訪ねたのは、嶋田拓真さんと三浦優佑さんの藍染工房「Slow Fabric」です。「藍」とは、ある種の植物に含まれる成分が変化してできる藍色の染料のこと。畑の準備から藍の種取りまで、一年を通して行う作業だそうです。夏から秋にかけて葉を刈り取り、乾燥させて粉にしたり、「すくも」と呼ばれる染料を作ったりします。

面白いのは、藍染は海外にもあるけれど、使う植物の種類が国によって違うことです!

藍の染料づくりはとても手間がかかり、ほとんどが手作業です。でも、工業化が進む中で、天然染料の代わりに人工染料が広く使われるようになりました。一方でSlow Fabricでは、江戸時代から伝わる「天然灰汁発酵建て」という昔ながらの技法で染めを続けています。

布を染めるときには、糸で縛ったり、型紙や蝋を使ったりして、いろんな模様を作ることができます。しかも、布だけじゃなく木も染められるそうです!

次に訪れたのは、西正己さんの写真スタジオ「Photo Works Hinna」。西さんの得意分野は「人」で、結婚式やスポーツ選手の写真など、素敵な作品を見せてくれました。ヘムスロイド村の背景や、あまり同じジャンルの作家が入居しないようになど、バランスを取りながら活動していることについても話してくれました。

それぞれの職人は、自分の工房を自由にデザインできるそうです。西さんのスタジオも、ワンちゃんと一緒に過ごせるとても心地よい空間になっていました。

最後に訪ねたのは、石倉創さんと石倉康夫さん兄弟の「Tan Forge Works」です。お二人は1979年に京都で会社を立ち上げ、1992年に滋賀県へ移転しました。鉄工を始められたきっかけは、アメリカ人の鍛冶職人が書いた『The Modern Blacksmith』という本に出会ったことだったそうです。

日本には鍛冶の長い歴史がありますが、美術や工芸のための鍛造はあまり行われていませんでした。二人は「自然と向き合うのではなく、溶け込んでいく」という考えを大切にしながら、美しい作品を作り続けています。

お二人の得意な技法の一つが「split and drift(スプリット・アンド・ドリフト)」です。鉄の棒に穴を開け、別の棒を差し込むことで格子のような形を作ることができます。この技法にはたくさんの忍耐と正確さが求められるそうです。

ヘムスロイド村のような場所を訪れるのは本当に刺激的でした。それぞれの職人が自立しながらも協力し合い、ものづくりをしている姿がとても印象的でした。とても素敵で、学ぶことの多い場所でした。

クリエーター科木工専攻2年 ベケット りんど