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2025年08月08日(金)

【‘25夏 木工事例調査④】神宮式年遷宮裏木曽御用材伐採式跡の見学

中津川市を訪問して行った木工事例調査。1日目の午後からは「護山神社」「第63回神宮式年遷宮裏木曽御用材伐採式跡」「高樽の滝」を見学に行きました。その時の様子を森と木のクリエーター科木工専攻の学生がレポートで紹介します。

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2025年7月8日と9日の木工事例調査。8日に中津川市の「護山神社」「第63回神宮式年遷宮伐採式跡」「高樽の滝」を訪れました。そこでは、裏木曽古事の森ウォーキングツアーガイドの前川信孝さんにお話を伺いました。

まず訪れたのは「護山神社」です。「護山神社」は木曽全山の総鎮守であり、今年、20年に一度行われる伊勢神宮式年遷宮に向けた「神宮式年遷宮裏木曽御用材伐採式跡」で伐採された御神木が化粧掛けを施された場所でもあります。
護山神社の歴史は1838年まで遡ります。江戸城の西の丸御殿が火事により焼失し、再建用の材を中津川の付知周辺の木曾檜林に求めました。この木曾檜林で木を切り出していたところ、火事や病、事故といった災いが流行し、当時の人はこれが山の祟りであると考え、神社を建てたそうです。これが現在の護山神社の奥社にあたります。
しかし、この奥社は山の中に建てられており、当時の人たちの参拝などに支障をきたしたため、現在の護山神社の里宮が建設されたそうです。

護山神社

護山神社の境内

護山神社には、巨大なヒノキの年輪板が収蔵されています。この年輪板は井出之小路の木曽大ヒノキと呼ばれる大檜で、御神木とされていました。しかし、昭和9年の室戸台風の影響で、地上12メートルの高さで折れてしまい、学術参考用の資料として伐採、輪切りにされたものが護山神社で収蔵、展示されています。長い年月を生きた木が、こうして形を変えて人々の目に触れ続けていることに、自然への感謝や敬意を改めて感じさせられます。

初代大ヒノキの説明をされる前川さん

初代大ヒノキの説明をされる前川さん

護山神社を後にして、バスで林道を進むこと10分ほど。
護山神社の奥社の入口と呼ばれる場所をまず見学しました。
「ちょうどいい比較ができる」と前川さん。私たちにサワラとヒノキの天然木を紹介して下さいました。

ヒノキとサワラの違い、わかりますか?

ヒノキとサワラの違い、わかりますか?

木曽ヒノキは自然と生えてきた天然林であるヒノキに対して使う言葉であり、東濃ヒノキは人が植林した人工林でありヒノキに対して使う言葉です。ちなみにサワラは天然でも人工でもサワラだそうです。アカデミー生は樹木同定をしているので、葉っぱで見分けるのはお手の物ですが、幹だけで見分けるのは難しかったですね。

そこから5分ほど歩いて、第63回神宮式年遷宮裏木曽御用材伐採式跡に到着しました。

式年遷宮伐採跡地

神宮式年遷宮裏木曽御用材伐採式跡

この林分は大正時代に植林された樹齢110年のヒノキのエリアです。このように人工林である東濃ヒノキの材ですが、天然林である木曽ヒノキの材が建築材として多く切られたことで枯渇するようになり、木曽ヒノキに変わる材として注目されています。今回の式年遷宮でも人工林ではありますが、木曽ヒノキの太さや材質を代用しうるものであるとして、この東濃ヒノキが伊勢神宮に納められました。
伐採現場に近づき、切り株を見てみます。

伐採されたヒノキの切り株

伐採されたヒノキの切り株

チェーンソーでの伐倒とは異なる切り株の形をしていますが、これは三ツ紐伐り(みつひもぎり)〔三ツ緒伐り(みつおぎり)〕といって、3方向から斧を入れていき、伐倒方向に合わせてツルを調整しながら人力で伐倒した跡です。

三ツ紐切りの伐り方

三ツ緒伐りの伐り方

伐採する木にもいくつかの選定条件があり、3~4年をかけていくつも候補地を出して検討しています。例えば、伐採現場には2つの切り株が平行に並ぶようになっていますが、伊勢神宮の内宮用の材、外宮用の材を交差させて倒すようにする必要があります。これを人力で成し遂げているので、日頃の練習で培った卓越した技術の表れであると実感します。
林業専攻である私は、4月の授業で三ツ緒伐りでの伐倒練習を見学しました。練習といえども1本の木を伐倒するので、時間をかけて木と向き合い、斧を入れ続け、ツルを調整し、ついに倒れる瞬間はとても迫力があり重厚感のあるものでした。
今回の神宮御用材伐採式ですが、いくつかインターネット上にも動画がアップロードされていますので、ぜひ視聴してみてください。

最後に高樽の滝を訪れました。

高樽の瀧

高樽の滝

落差21mほどの滝は迫力があり、滝つぼの透明感もよかったです。
裏木曽の雄大な自然を感じながら、周りを散策しよいリフレッシュができたのではないでしょうか。

集合写真を撮って頂きました

集合写真を撮って頂きました

事例調査1日目は森林文化の観点から『どのような歴史を裏木曽とよばれるこの地域は辿ってきたのか?』について実感する1日となりました。山守資料館で地域の全体像を知り、早川産業・森の木遊館で地域文化としてどのように材が利用されているのかを見てきました。そして、森の中ではどのような山でどんな材が生まれてきたのかについて実感することができました。
ご案内いただきました裏木曽古事の森ウォーキングツアーガイドの前川信孝様に、この場をお借りして感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

事例調査は2日目も続きますので、次回更新をお楽しみに!

クリエーター科
林業専攻2年 米澤翼
木工専攻2年 見世健太