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2026年04月06日(月)

ドイツ木工視察報告④ ロッテンブルク林業大学と中学校の連携授業

改めてロッテンブルク林業大学について

 ロッテンブルク林業大学(Hochschule für Forstwirtschaft Rottenburg、以下HFR)は、ドイツ・バーテンビュルテンベルク州(以下BW州)のロッテンブルク・アム・ネッカーにある大学です。森林文化アカデミーとは2014年に連携協定を結んでいます。本来、正式名称は「ロッテンブルク応用森林科学大学」と訳すべきですが、アカデミーでは通称で呼ばれています。

 ドイツでは大学が総合大学と応用科学大学に分かれており、前者は理論・研究重視、後者は実践重視の教育内容です。たとえば同じBW州内には総合大学のフライブルク大学があり、環境・天然資源学部で林学が教えられていますが、森へ行く機会は年に数回しかないとのこと。それに対して応用科学大学のロッテンブルク大学では毎週、森に通って学びます。前者は森林行政の事務方を、後者は現地の森林官を育成する役割を担うためだそうです。

 HFRの学科構成はは以下の通りです。

 学士課程 5学科
・林業(定員90)
・再生可能エネルギー(35)
・木材管理と技術(35)
・持続可能な地域管理(35)
・水資源管理(35)

 修士課程 3学科
・森林管理(15)
・再生可能エネルギー(15)
・資源効率の良い建築(15)

 教員数 33人
 学生数 約1100人

 私が訪問した時、学内の廊下にはHFRと森林文化アカデミーとの交流について紹介する企画展示が行われていました。日本語とドイツ語のポスターが多数貼られ、天井には手ぬぐいの装飾も。林業の教授で国際交流室のディレクターも務めるセバスチャン・ハイン教授が担当してくださったとのこと。HFRは世界の40以上の大学と連携しているそうですが、森林文化アカデミーとの関係を大切にしてくれていることを感じます。

 

地元中等学校との連携授業

 HFRがロッテンブルクの公立中等学校(11〜16歳)と連携授業を行っていると聞き、見学させてもらいました。その公立中等学校の先生によれば、学校には親の国籍が様々な子供たちが集まっており(30人中23人がドイツ国籍以外というクラスもあると聞きました)、コミュニケーションが取りにくかったり通常の授業が成立しにくいことがあるそうです。そこで近隣のHFRに相談し、森の中やHFR学内で実践的な活動を行う連携授業を立ち上げ、去年夏から毎週1回(x 3クラス)続けているとのこと。HFRの各専攻の教員が持ち回りで担当し、学生有志がスタッフとして支えています。

 私が見学した日は、林業のハイン教授の担当でした。1時間目は14歳の生徒たち1クラス20人ほどが森に集まり、針葉樹の苗を植えます。

 その後は林縁の大きなナラの丸太が置いてある場所(ここで売買が行われるのだそうです)へ移動して、丸太を使った授業が始まりました。

ハイン教授
「この丸太の樹種は何でしょう?知っている人はいる?匂いを嗅いでみて」

生徒
「酢の匂いがする!」

ハイン教授
「そうだね。これは、ナラの木です」

ハイン教授とHFR学生
「では、この丸太の体積を計算してみよう」
「円柱の体積を求める公式は何だったかな? 底面積 x 高さですね」
「断面に86、5.3と数字が書いてありますね。86は直径、5.3は長さです」
「スマホを出して計算していいですよ」
(中等学生の生徒が計算)
「0.43 x 0.43 x 3.14 x 5.3= 3.07ですね。約3立方メートルです」
「この丸太は販売されます。いくらだと思いますか?」
「1立方メートルあたり600ユーロ(約11万円)です。ということは、丸太1本で1800ユーロ(約33万円)の価値があるということですね」

 ハイン教授は、HFRは中等学校の子どもたちを学校に通えるようにする責任を担っているわけではないけれど、森や木に関わる活動が社会課題にどう貢献できるかという視点で大学として関わっていること、教員や学生に研究的な意味でのメリットはないけれど人格形成においてとても有益であること、などを話してくれました。現場の社会課題に対して柔軟に取り組もうとする姿勢は、総合大学ではなく応用科学大学だからこそだと感じるとともに、森林文化アカデミーとの共通点でもあると思いました。

(この視察では、森林文化アカデミーを卒業してHFRの大学院で学ぶ小原光力(おはらありちか)さんに通訳を務めていただきました)

 

森林文化アカデミーとの連携の可能性

 この授業を企画した中等学校の先生と話したところ、森林文化アカデミーで実践しているグリーンウッドワークにとても関心を持ってくれました。私が今回視察した限りでは、グリーンウッドワークはドイツの森林環境教育施設で子供向けに行われている所が少しあるものの、日本、英米、北欧ほど広く普及していないようでした。そこで私から拙著『グリーンウッドワーク』をプレゼントしたらとても喜んでくださり、ぜひ一緒にやりましょう!とのこと。日本の学生がドイツから学ぶだけでなく、ドイツの人たちに教える活動もあってもいいのかもしれません。いずれ実現できればと思います。

 

報告:久津輪 雅(木工・教授)