【学術交流】鹿児島県内の木材事業者を視察しました
木造建築専攻・講師の石原です。
鹿児島県工業技術センターとの学術交流の一環で、
同センター主任研究員の中原さん、吉村さんの案内で鹿児島県内の木材事業者を2社視察しました。
※同センターの視察に関しては過去のブログにて報告しています。
【㈱はやし林業鹿児島支店】
まず訪れたのは、出水市にある㈱はやし林業(鹿児島支店)さん。
工場長の尾ノ上則夫さん、企画部長の尾ノ上竜次、技術部長の濵﨑洋一に対応して頂きました。
ここでは、ログハウス向け構造材、特に「接着合わせ材(Widthwise Glued Timber)」の生産と加工を行っています。
岐阜県では森林研究所にて「接着重ね材」の研究は行っていますが、合わせ材の生産拠点は全国的にも稀有な存在です。
同社の生産する合わせ材は、耐朽性向上や、表面割れの防止の観点から、木裏が表面側になるように接着されています。
同社は東京ドーム1個分の広大な工場敷地を有しています。今回は、合わせ材の製造ラインを中心に見学させてもらいました。
「合わせ材」用のプレス機はオリジナル。随所に創意工夫が感じれられます。
珍しい曲面プレスも設置されていました。これは治具を平板上の任意の位置に設置することで、あらゆる形状で接着ができるものです(ただし、現在では専ら縦継ぎ用のプレスとしてしようしているとのこと)。
こちらは接着性能評価のための加力装置(せん断強度試験機)。なんと、「強度試験機が高いから」・・・と、試験治具を含めて工場長が自作されたものです。
こちらも接着性能評価のための減圧加圧装置。せん断強度試験機と同様に、工場長が自作したものです。ないものはとりあえず自作してしまう・・・という、工場長のエンジニア精神には脱帽です。
なお、同工場は今回は時間の都合で見学できませんでしたが、12m材に対応した製材機や、木材乾燥機など、様々な設備を有しているいるそうです。
国内の木造建築におけるログハウスのシェアは高くはありませんが、視察を通じて工場の皆さんからログハウスへの情熱が伝わってきました。
【㈱南薩木材加工センター】
続いて訪れたのは、㈱南薩木材加工センターさん。
同社では、センター長の塩屋博之さん、営業主任の桜庭秀樹さんに対応して頂きました。
同社は南薩地区の木材業者・森林所有者・自治体等が出資して設立され、平成6年から操業を開始した鹿児島県屈指の規模を誇る製材工場とのことです。
桜庭さんの解説のもと、工場内を見学しました。
原木土場では、概ね2000㎥の原木をストックしてます。県内8か所の共販所などから仕入れているとのこと。
原木の樹種はほとんどがスギ。南九州地方のスギは黒心材が多い傾向にあるのだとか。
選木機もあります(ただし、選木そのものは職人さんが目視で行っているとのことです)。
おが粉の製造装置も見学しました。酪農業が盛んなこの地方では、おが粉等の引き合いも多いとのこと。
形状が不良であったり大きすぎる原木は、おが粉等になるのですが、サイズによってはこちらの縦割り機である程度細かくしてから破砕します。
工場内には多様な製品がストックされています。
木材乾燥機(蒸気式)は計7基あります。
ただし、南九州地方では、本州に比べてグリーン材(未乾燥材)が未だに多く流通しています(もっとも、ここ数年でかなり取扱量は少なくなったそうですが)。
モルダー加工のラインも乾燥材(KD材)とグリーン材に分かれていました。
写真の貫(グリーン材)はかなりの量を生産しているとのこと。
防腐施設(薬液注入缶)もあります。
こちらが製材ラインになります。
1日で、概ね100㎥の原木を消費しています。
木取りは自動で行い、歩留まりよくあらゆる寸法の製材が生産されています。
敷地の裏側には、天然乾燥のための広いスペースもありました。
同工場では、JASの機械等級の取得を目指してグレーディングマシンを導入しています(現在、試運転中)。構造材のJAS化は全国的な流れです。
昨今、帯鋸の目立て業者の減少が全国的な課題となっていますが、同社では目立てを自社で行っているそうです(アカデミーにも昔は目立て機があったのですが・・・泣)。
林産業は基本的には地域産業であって、その核たる製材工場には地域ごとの特色が色濃く反映されると思います。岐阜県の工場とは、同じところもあれば異なる特徴もあり、勉強になりました。
さて、一連の見学・研修では、先にご紹介した視察先の皆様のほか、
鹿児島県工業技術センター・地域資源部の皆さん(同部部長・上薗さん、主任研究員・中原さん、主任研究員・吉村さん)に大変お世話になりました。
この場を借りて深謝致します。
・・・ちなみにですが、岐阜県と鹿児島県は宝暦治水の関連で姉妹県となっています(なお、鹿児島市と大垣市は姉妹都市となっています)。
こうした交流を機に、木材に関わる研究・教育の面でも、交流を始めていきたいと思います。
講師 石原 亘




























