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2023年08月29日(火)

中津川市 ぎふ木遊館サテライト施設構想プロジェクト

先日、岐阜県知事と中津川市長より、中津川市にぎふ木遊館のサテライト施設が設置されることが発表されました。

この概略設計やコンセプトの立案は、木造建築専攻の小島、杉山、坂井、そして木工専攻の寺島の4名を中心に、先生方のアドバイスをいただきながらプロジェクトとして今春から進めてきたものです。
今までは、私たちなりに良い施設にしたいとまっすぐな気持ちで進めてきました。
今回の報道で、作成したパースを持つ知事と市長の姿を拝見して、これ以上ない経験をさせていただいているのだとようやく実感し、喜びの気持ちがより大きくなりました。

このブログでは、これまで私たちが進めてきたことを振り返りながら、ご紹介させていただきます。

施設外観イメージ

施設内イメージ

プロジェクトは施設の概要を聞いたうえで、有志のメンバーにより始まりました。
初めての現地視察の日に候補地の「道の駅 花街道付知」を見て、直線的な形だなという第一印象をもちました。
ガラス窓の部分があったので、ここで子供たちがにぎやかに遊んでいて、その姿が垣間見えたら素敵だなと思ったことも覚えています。

サテライト施設として改修する 「道の駅 花街道付知」

その日は、中津川を代表する色々な場所や技術を見せていただきました。中でも、早川木材の桶、小池ドラムスのドラムを作る技術を見せていただいたことは、のちに設計の大きなヒントになりました。

早川木材の桶の技術

設計のはじめは、施設の六角形のかたちに捉われて、思うように空間を活かせませんでした。
さらに、サテライト施設は道の駅の一部を改修してつくるため、壁のいたるところに取り外すことのできない構造上主要な柱と筋交いがあることも、設計上の大きな課題でした。
改修で、この筋交いがあるからこそ、できる空間があるのではないかと思いつつ、悩む日々。

構造上主要な筋交い

そんな中、辻先生が「既存のグリッド(柱の間隔)を一度気にしないで自由にやってみるといいかもしれない」というアドバイスをくださったことで、私たちは直線的な既存のかたちを気にせずに考えていくことができました。
そして、先日見せていただいた桶の技術、木本来の丸い姿を活かして、立木に見立てた筒を、筋交いや壁をも取り込んで、空間全体に配置することを考えました。
筒をうろのようにくりぬいて、居場所を作ったり、収納棚にしたり。根っこに見立てたベンチや、滑り台、などなど。様々な要素をもった切株を空間に配置することで、筋交いの問題や直線的だった印象を、やわらげていきました。

設計ダイアグラム1

設計ダイアグラム2

また、私たちの提案した施設のコンセプトは「motto(もっと)」です。

すでにある「(ぎふ)木遊館」と「morinos」から、「も」で始まる言葉を探しました。
子供から大人まで多くの人が、森への興味をもち、もっと知りたいもっと楽しみたいのこころを育む施設となるようにという思いが込められています。
また木曽五木の5から5つの要素をイメージして、この施設を木と暮らし・遊び・学び・文化・いきものをつないでいく拠点としたいと考えました。

コンセプト イメージ1

コンセプト イメージ2

この要素は、空間のゾーニングとしての役割も担っています。
各エリアで遊ぶことで、中津川市の文化と産業を担ってきた林業の歴史、そしてアカデミーで実践的に日々勉強している、川上から川下の流れ、木材がどこから取れてどのように暮らしの中に加工されて使われていくのかを楽しく学べる施設を目指しています。

提案時の平面プラン(仮)

これらのコンセプトをもとに、中津川市の林業振興課の方や、県の担当の方、そして実施設計をされる卒業生のWOOD ACの方をはじめとした方々にプレゼンを重ね、色々な意見をいただいたうえで、中津川市長へのプレゼンへのぞみました。

プレゼンはとても緊張しましたが、ご質問などをいただきながら市長と話をするうちに、この施設をより良いものにしたいという思いは共通なんだと感じ、さらに先へ進める意欲へと変わっていきました。

中津川市長には森林資源の大切さ、中津川で行われていた林業の歴史などを改めて教えていただきました。案についてもアドバイスをくださったため、サテライト施設を中津川市に建てるからこその意義を見出せたように感じました。

中津川市長プレゼン

市長プレゼンを踏まえ、さらに学内で案を煮詰め、約1か月後、学長プレゼンにのぞみました。学長は、私たちのプレゼンを聞くとすぐに、案にちりばめた様々な意図を汲み取ってくださり、とても嬉しかったです。

 学長には、遊具の安全面検討の重要性や、中山道のイメージなどのアドバイスをいただきました。限られた時間の中で、時間いっぱいに対話し、意見をいただけたことから、計画への不安がなくなり、私たちの理想とする施設が見えてきた気がしました。

学長プレゼン

以上が、サテライト施設の計画立案の一部です。私たちの夢を詰め込んだ提案が少しずつ現実味を帯びていき、沢山の方々のご意見をいただきながら、よりよい施設になっていく過程に携わらせていただいたこと、感謝の念に堪えません。何より、本当に挑戦してよかったと思っています。

 現在は、実務者の方々を中心に、工事に向けた準備が進められています。施設がオープンし、そこで遊ぶ人々の笑顔を見るまで、これからも、私たちなりにできることを頑張りたいです。

木造建築専攻2年 小島亜素佳