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2025年08月13日(水)

揖斐川町 ぎふ木遊館サテライト施設構想プロジェクト 後編

先日、プレスリリースされた揖斐川町 ぎふ木遊館サテライト施設構想の計画案について前回に引き続きお伝えします。

後編は、私たちが建物に込めた想いと施設運営についても触れていきます。

森と建築のつながりをあらわす

揖斐川地域の林業は、古来から続く文化・産業の一つです。
丁寧な森づくりをされていることから、皇室の方々が植樹され地元の従事者の方々が代々育成された「天皇林」という貴重な森もあります。
その天皇林も伐り時を迎えつつあり、今回、計画している建物に木に使うことも重要な目的の一つです。
この大切に育てられた天皇林から出てくる通直な材を来場者の方に直接触れることができるようにし、森と建築のつながりを肌で体感できる建物にしたいと考えています。
そして、今、森のプロット調査の結果と照らし合わせながら、山から出てくる材を推定し、使い方を考えながら、揖斐川町産の木造建築としての設計を進めています。

外観パース(南面)

外観パース(北面)

中心をつくる

今回の計画では、「中心をつくる」ことを意識しています。
建物は敷地の中心に配置し、その建物の中心にも広いホールを設けています。

まず、建物を敷地の中心に置くことで、どのゾーンに対しても大きな距離の差が生まないことにより、子供たちが元気に屋外遊びに出ても、保護者や運営者から目が届きやすくなるように配慮しています。

そして、建物では、中心にホールをつくり、その周りにアスレチック遊具や乳幼児エリアなどを配置し、劇場型の横方向にも高さ方向にも広がりのある空間の構成にしています。
加えて、ウッドデッキを外壁にそってぐるっと配置することで、屋内外の緩やかなつながりをもたせ、敷地の各ゾーンへアクセスしていけるようにしています。
これにより、ホールで催しをすると、主催者を中心にして利用者が囲むように集まって楽しむ演出ができる空間にしたい狙いがあります。

建物を中心に置いた敷地計画

ホールを中心に置いた室内構成

地域で育てる施設を考える

今回の施設のように、より多くの方に永く愛される地域の施設を目指す時、その地域に存在を認知してもらい、運営者と共に育てていく運用が必要であると考えています。
今回は、敷地が広大であることもあり、外構は数年かけて完成させていく計画となっています。
私たちは、数年後の理想的な姿を見据えた計画案を提示していますが、利用者が完璧に出来上がった状態の空間を利用するだけでは、利用者と施設の関係性は深く結びつかないと考えています。
それには、利用者が地域の自然との共生を体験できる空間というものを自ら考え作り上げていくことで、地域の施設として愛着が生まれ、利用者と施設の関係性がより濃密になると考えています。
例えば、morinosのように芝生づくりや裸足のトレイルづくりなど、イベントを通して利用者も一緒に整備しながら空間を広げていくイメージです。
木工作家さんや大工さんと一緒におもちゃや遊具を一緒につくるイベントもできるかもしれません。
大人と一緒に「作る」体験が子供たちの糧になり、そして地域を盛り上げる一助になれば良いと思います。

芝生づくり

はだしのトレイルづくり

最後に

今回の木遊館サテライトは、建築物や遊具の計画だけにとどまらない、敷地全体や運営も含めた計画で考える要素がたくさんありましたが、関係者の方々のご理解とご協力もあり、従来のぎふ木遊館とは異なる挑戦的な計画を提案させていただくことができました。
これからより具体的に計画を煮詰め、設計していくフェーズになります。
完成は2年後なのでもう少し先の話になりますが、多くの方が楽しく利用していただく姿を想像しながらプロジェクトを進めていきます。

プラン検討時の様子

学長へのプレゼンの様子

木造建築専攻2年 増岡