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2025年06月27日(金)

【視察報告】大建工業㈱R&Dセンター・岡山工場を見学しました

岡山にある大建工業のR&Dセンター(研究開発部門)と工場を見学してきました。

大建工業は、複合フローリングやMDF(中密度繊維板)などの木質ボードをはじめとする内装建材を主力製品とし、木質系建材分野で国内トップクラスのシェアを誇る企業です。今回は課題研究の一環として、同社が国内で生産しているインシュレーションボードの製造工場を見学し、素材開発室の福井さんからもお話を伺いました(福井さんはアカデミーで木質材料学の臨時講師も務めている方です)。

見学はまず、「ミライ」と名付けられた展示室からスタート(写真撮影はNG)。ここでは、これまでの開発製品や現在開発中の製品が紹介されており、1945年の創業以来の歩みとともに、木質ボードやその他の製品について詳細な解説を受けました。木材の細胞に樹脂を注入する独自技術などの紹介もあり、また環境配慮型の製品づくりにとどまらず、「心地よさ」を追求した空間設計や、性能評価にも力を入れていることが印象的でした。

※写真NGのため、モデルスペースの写真から。各木材チップの形状

 

次に、工場内で畳表とインシュレーションボードの製造工程を見学(写真撮影はNG)。

畳表の製造工程では、原料の和紙(※和紙の主原料は針葉樹パルプの機械すき和紙で、楮ではありません)を巨大なマスキングテープのようなロール状で購入し、これを撚ってこより状の横糸を製作。さらに表面の強化・汚れ防止処理を施したうえで、別会社が製作した縦糸と織り合わせて畳表が完成します。各工程の作業室は湿度を70〜80%に保っているとのことで、大変な作業環境の中、繊細な製品管理がなされていました。また機織り機には、イグサの一大生産地だった頃の機械も残っており、今も使い続けられているとのことでした。

和紙製の畳は、ナイロン製とはまったく異なるやわらかな肌触りで、つい寝転びたくなるほど心地よいものでした。色あせもなく、汚れも落としやすいため、改めて畳のある暮らしの魅力を感じました。

※写真撮影不可のため、モデルスペース展示からの紹介

右側のものが、全長9,000mにも及ぶマスキングテープ状の和紙

 

続いて、インシュレーションボードの製造工程を見学。

このボードは木材の繊維から作られており、バージン材だけでなく、解体された古材などのリサイクルチップも使用されます。それらをさらに繊維状に解繊し、水と接着剤を混ぜてシート状に成形。加圧・乾燥して板状に固めた後、所定のサイズに切断し、表面を仕上げて完成します。その製造工程は、和紙の紙漉きに似た印象です。製品名などの印字には、最近のレーザー印字ではなく、昔ながらのスタンプ方式が使われていて、どこか懐かしさを感じるものでした。

 

最後に、製品を実際の空間で体験もできるモデルスペースを見学。

ここでは、木質ボードや畳(大建工業は「世界一長い畳」のギネス記録を保有)などの製品のほか、防音室などが展示されており、性能の違いやコストとのバランスを「体験を通じて納得して選んでいただく」という、顧客視点の思想が印象に残りました。

(左)調質性能の比較実験(右)壁のインテリアパネルが防音性能をもつ。違いを体験中。

 

とても丁寧に説明いただき、実際に製品や工程を見ることによって理解が深まりました。

半日という時間で、大変充実した見学でした。

福井さんをはじめ、対応いただいた大建工業の皆さま、ありがとうございました。

 

木造建築専攻 葛山