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2025年06月03日(火)

竣工から実験へ、新たな物語が始まる(自力建設2024「栞」)

建築専攻1年生のプロポーザル後、予定通り24年度の自力建設の竣工式を迎えることができました。雨の中でも多くの方にお越しいただき、心より感謝申し上げます。

24年度自力建設「栞」の春夏秋冬をドローン撮影した動画です。

春夏秋冬を経て、小規模木材乾燥庫『栞』がついに完成!これからしっかり活躍となりました。

当日は東濃ひのき製品流通協同組合 大工の鈴村様、瀬尾様、坂井様、有限会社後藤板金 取締役専務 後藤真紀様 ご参列いただきました。

初めに「栞」の建設プロセスにおいて、各メンバーがそれぞれ、皆さんに伝えたいと思う部分を紹介しました。

続いて、長年にわたりアカデミーの自力建設を支えてくださった東濃ヒノキを代表して坂井梨奈様によるご挨拶です。
アカデミー卒業生の坂井さんには、「栞」の建設にさまざまな面でご尽力いただきました。

『栞』の施主である渡辺先生には、建設の過程において大変大きなご協力をいただきました。
施主として感謝するだけでなく、実際の建設プロセスの各所でも多大なご助力をいただいております。

竣工式のセレモニーとして、渡辺先生に『栞』建設の最後の作業を担っていただきました。
それは「車知栓の仕上げ」として、打ち込んだ栓の余分な部分を鋸で切断ことです。

ここで一つ補足させていただきます。「普及性」において、2種類の仕様(普及仕様とアカデミー仕様)の違いをご説明する際、桁の接合に関する違いの部分を漏れてしまいました。

この2種類の仕様では、柱の両側に桁を取り付ける方法が異なっています。一方(アカデミー仕様)は、日本の伝統的な継手技術である「車知継ぎ」が使われており、もう一方(普及仕様)は、より一般的な「両引きボルト」によって固定されています。

渡辺先生に鋸で切断していただいたのは、車知継ぎに用いられた栓の余分な部分でした。さすがは木工プロで、切断された断面も非常に美しく、きれいに仕上がっていました。

最後に、副学長からのご挨拶がありました。ご挨拶の中では、2024年度の自力建設に対するご評価をいただくとともに、今後この施設が木材乾燥設備として実務や実験においてどのように活用されていくかについての展望もお話しいただきました。

そのお話を受けて、ここで今後の施設実験および木材乾燥実験に関する考えを共有させていただきます。実験は大きく2つのカテゴリーに分けて想定しています。

一つ目は、高性能建築に関する実験です。

具体的には、気密測定やサーモ実測など、温湿度の季節的・昼夜的な変動応じて温湿度データを長期的に蓄積していくことを考えています。
今回の「住まい手」は人間ではなく木材ですが、「栞」は住宅仕様の断熱材や透湿防水素材を用いて建設されており、温熱性能にも一定の期待が持てます。
また、設計の基本コンセプトである「自然エネルギー」につきまして、太陽から得られた熱エネルギーがどの程度保持されるのかを、より定量的な視点で分析することも重要です。
この観点では、提案された蓄熱材料に関する仮説的な実験も行う予定です。
天然素材である蜜蝋、松ヤニ、石を用いて、特に冬季において温度変化の緩和や乾燥温度の調整にどのように貢献できるかを検証していく計画です。

二つ目は、広葉樹木材乾燥庫としての性能や、異なる樹種・季節における実用的な運用パターンの検討です。

関連する取り組みとしては、温度・湿度のリアルタイムモニタリングとクラウドへのデータアップロードを完了させた上で、さらに木材の重量を測定できるデータ取得装置を追加し、木材の含水率の変化をダイナミック的に把握できるようにしたいと考えています。
そのうえで、乾燥条件に対してどのようなファクタを導入すれば適応できるかを模索していく予定です。

自力建設の竣工は、一つの区切りであると同時に、新たな始まりでもあります。
この施設の活用方法については、これからもまだまだ面白い発見があるはずです。今後の展開にぜひご期待ください。

木造建築専攻2年 銭