【見学報告】揚輝荘・聴松閣を見学しました
名古屋市千種区にある揚輝荘・聴松閣をクリエーター科の学生2名と見学しました。
揚輝荘は、伊藤次郎左衛門祐民(松坂屋の初代社長)の別荘で、戦災や戦後の開発によってその敷地・建物の大半が失われてしまいましたが、
その一部が名古屋市に寄贈されたのちに、史跡として整備されています。
聴松閣(名古屋市指定有形文化財、昭和12年竣工)は揚輝荘のシンボル的な建物で、迎賓館のような役割を果たしていたそうです。
ハーフティンバー様式の山荘風の建物であり、独特の風合いがあります。
竹中工務店創業者の竹中藤右衛門が建築に関わり、竹中工務店の小林三造が設計したそうです。
この聴松閣、「木材趣味」的には身震いする建物になっています。
まず玄関床の輪切りの丸太がお出迎え。かなりモダンです。
玄関扉のケヤキには手斧による“名栗(なぐり)”加工が施されています。
細部の装飾にも強いこだわりを感じます。
構造材はツガ、マツあたりが使われているそうですが、
すべて広葉樹の化粧板で覆われています。そして、これらにも“名栗”が施されています。
床にも“名栗”で模様があしらわれています。
灯具類もおしゃれです。「いとう」の文字も。
内装材等の広葉樹にはナラ、タモ、チークが主に使用されているのだとか。
2階の寝室はイギリス山荘風だったり中国風だったり、各部屋で趣が異なる仕様になっています。
世界各地の建築史の知識が深ければもっと楽しめるのかも・・・
こちらの部屋のフローリングは模様が中国風になっていて、独特の雰囲気。
ナラ、タモの他に、シタンが使用されているのだとか。
和室の廊下は竹編天井です。
この建物のハイライトは地下空間です。
地下はダンスホール(舞踏場)になっています。
ドライエリアから陽光が差し込み、地下とは思えない明るい空間になっています。
ダンスホールのフローリングの意匠も素敵ですね。なお、こちらに使用されているのはサクラだそうです。
バーカウンターを見るとテンションが跳ね上がります(お酒好きですみません)。
夜間時間帯だけでも、バーとして営業して欲しいですね・・・
地下には秘密?のトンネルもあります。
このトンネルは全長170mあり、揚輝荘の敷地内にT字状に設けられていたそうですが、現在ではこの入口付近を残して壊されてしまいました。
詳細な建設目的は不明なのだそうですが(南京政府の汪兆銘婦人を匿うため、との説も)、なんだかとてもロマンを感じます。
聴松閣、「多様な木材の多様な使われ方」が一気に学べる稀有な建物でした。
なお、各所の使用樹種等については、解説員の方に説明をいただきました。この場を借りて深謝いたします。
講師 石原 亘