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2025年05月28日(水)

【見学報告】揚輝荘・聴松閣を見学しました

名古屋市千種区にある揚輝荘・聴松閣をクリエーター科の学生2名と見学しました。

揚輝荘は、伊藤次郎左衛門祐民(松坂屋の初代社長)の別荘で、戦災や戦後の開発によってその敷地・建物の大半が失われてしまいましたが、

その一部が名古屋市に寄贈されたのちに、史跡として整備されています。

 

聴松閣(名古屋市指定有形文化財、昭和12年竣工)は揚輝荘のシンボル的な建物で、迎賓館のような役割を果たしていたそうです。

ハーフティンバー様式の山荘風の建物であり、独特の風合いがあります。

竹中工務店創業者の竹中藤右衛門が建築に関わり、竹中工務店の小林三造が設計したそうです。

この聴松閣、「木材趣味」的には身震いする建物になっています。

まず玄関床の輪切りの丸太がお出迎え。かなりモダンです。

 

玄関扉のケヤキには手斧による“名栗(なぐり)”加工が施されています。

細部の装飾にも強いこだわりを感じます。

構造材はツガ、マツあたりが使われているそうですが、

すべて広葉樹の化粧板で覆われています。そして、これらにも“名栗”が施されています。

床にも“名栗”で模様があしらわれています。

灯具類もおしゃれです。「いとう」の文字も。

内装材等の広葉樹にはナラ、タモ、チークが主に使用されているのだとか。

2階の寝室はイギリス山荘風だったり中国風だったり、各部屋で趣が異なる仕様になっています。

世界各地の建築史の知識が深ければもっと楽しめるのかも・・・

こちらの部屋のフローリングは模様が中国風になっていて、独特の雰囲気。

ナラ、タモの他に、シタンが使用されているのだとか。

和室の廊下は竹編天井です。

この建物のハイライトは地下空間です。

地下はダンスホール(舞踏場)になっています。

ドライエリアから陽光が差し込み、地下とは思えない明るい空間になっています。

ダンスホールのフローリングの意匠も素敵ですね。なお、こちらに使用されているのはサクラだそうです。

バーカウンターを見るとテンションが跳ね上がります(お酒好きですみません)。

夜間時間帯だけでも、バーとして営業して欲しいですね・・・

地下には秘密?のトンネルもあります。

このトンネルは全長170mあり、揚輝荘の敷地内にT字状に設けられていたそうですが、現在ではこの入口付近を残して壊されてしまいました。

詳細な建設目的は不明なのだそうですが(南京政府の汪兆銘婦人を匿うため、との説も)、なんだかとてもロマンを感じます。

聴松閣、「多様な木材の多様な使われ方」が一気に学べる稀有な建物でした。

なお、各所の使用樹種等については、解説員の方に説明をいただきました。この場を借りて深謝いたします。

 

講師 石原 亘