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2017年06月28日(水)

鵜飼舟プロジェクトの報告会開催

岐阜県立森林文化アカデミーでは長良川の鵜飼舟の造船技術を記録・継承するため、美濃市の船大工・那須清一さんとアメリカ人船大工で和船研究者のダグラス・ブルックスさん、そして船の設計士であるマーク・バウアーさんを迎え、実物大の鵜飼舟を1艘制作する「鵜飼舟プロジェクト」を実施しています。これにはクリエーター科の古山さんと、教員の久津輪先生も参画しており、今回は中間報告会を開催しました。

長良川の鵜飼舟、今回は単なる川舟ではなく、鵜匠さんが乗る舟を作成しています。長良川でアユ漁に用いる舟は伝統的に100年生以上のコウヤマキを材料にしています。

最初にこのプロジェクトを実施している久津輪先生が経緯などをお話しされ、次いでコウヤマキについてJIRIが簡単に蘊蓄を述べました。

さて、主役の船大工、那須清一さんは昭和5年生まれ、長良川の舟大工70年余りの人間国宝級の方です。そこにアメリカの船大工であるダグラスさんが2003年、2005年と弟子入りを申し込んだそうですが、願いかなわず。

今回は2015年にアメリカの財団から助成金を資金援助してもらい、那須さんの技術伝承を目的に、ここ森林文化アカデミーで鵜飼舟を作成しています。

森林文化アカデミーでは今年の1月30日に「和船技術伝承を考えるミーティング」を開催し、那須さんやブルックスさんにも情報提供を受けました。沖縄や東京など全国各地から集まった参加者の中に、東京の文化財研究所の方もおられ、鵜飼舟制作の映像記録も残すことになりました。

コウヤマキの舟材をつなぐ一つは「舟釘」が必要。今回の舟には1000本の舟釘が必要ですが、800本は那須さんからの提供、あとの200本ほどは各務原市のかじ清さんに依頼。なお一本300円~400円します。

ブルックスさんとマークさん、古山さん、そして指導者の那須さんは、毎朝5:30から舟制作にあたり、毎日12時間労働。

コウヤマキの板厚は約一寸、板と板を矧ぐ(接合する)には、カンナ掛け、ノコギリでの摺り合わせ、金槌での木殺しなどが必要です。

舳先の補強、艫の補強、それぞれ独特の技が光ります。

釘打ち前には「モジ」という道具でよび穴(先導穴)を開けて、舟釘をリズムよく打ち込む。

舟底の反りは石を置いてつくります。海の舟では焼いて曲げることも多いのですが、長良川の舟は河原にある大きな石を利用します。

ちなみに造船は、木材が乾燥する時期に実施するのが一番良いそうです。

 

次に、マークバウアーさん仕事を紹介。マークさんどのような船の設計図をCADで書いたのかなどを詳しく説明。

これまで大きな木造船を設計して、作成した事例を紹介してくださいました。

ダグラスさんは日本で那須さん以外に6か所の船大工に弟子入りし、今回が7人目の師匠さん。

これまでの師匠はみな無口だったが、那須さんはいろいろ話してくださって、日本語を上達させる意味でも有難いとのこと。

ダグラスさんの和船の始まりは、新潟県佐渡の「たらい舟」、どのように弟子入りして、苦労したのかを切々と語ってくださいました。

ダグラスさんは多数の書籍を出されていますが、そのうちの一冊が「佐渡のたらい舟」というもので、これ以外にも高知県や茨城県、千葉県などでも様々な和船の技術を伝承されておられます。

ブルックスさんもマークさんも、那須さんの技術や知識に敬意を払われると同時に、アメリカでの木造船と和船との違い、そしてこの森林文化アカデミーでこうした和船制作できることの価値についてまで、熱く語ってくださいました。

 

最後に、このプロジェクトの報告会と、完成した舟の進水式を、長良川うかいミュージアムの市民講座として実施されます。

https://www.ukaimuseum.jp/events/detail_331.html

市民講座(第3回) 開催日時: 2017年7月22日(土)
開催時間:13時30分 ~ 15時30分

またこれにあわせて、長良川うかいミュージアムでは、6月1日~9月4日まで、鵜飼舟プロジェクト関連企画「長良川鵜飼と和船」の特別展示を行っています。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。