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2017年03月01日(水)

教員リレーエッセイ9:求められる森林獣害対策の担い手

伊佐治 彰祥(林業)

求められる森林獣害対策の担い手育成

現在、我が国の鳥獣による森林被害の約8割(面積比)がニホンジカによるものです。その被害は、単木被害にとどまらず、既に森林の生態系を脅かすほどとなっており、今後更に、生息域の拡大や個体数の増加が予想されるなか、一層の対策の強化が求められ、その担い手の育成も重要な課題となっています。

今、森林文化アカデミーでは

森林文化アカデミーにおいてもこうした認識のもと、森林獣害対策に必要なスキルを学ぶための授業をクリエーター科に設定し、担い手の育成に取り組んでいます。

「森林獣害」

この授業はクリエーター科1年生を対象にしたもので、森林被害の現状や加害獣の生態、各種防除対策、関係法令など森林獣害に関する基礎知識を学びます。

「森林獣害」(座学:加害獣の生態や被害の特徴等を学びます。)

「森林獣害」(現地見学:シカ対策では、ツリーシェルター(単木防護資材)のほか、防護ネットや忌避剤等も使用されます。森林では、対象面積の広さや地形条件、アクセスの悪さに加え、積雪等の影響もあり、対策が難しいことを学びます。)

 

「野生動物捕獲実習」

この授業は、1年時に森林獣害を学んだクリエーター科2年生を対象にしたもので、捕獲や防除に必要な実践技術を学びます。授業の中では、わな猟・銃猟(巻狩り)の体験、防護ネットやツリーシェルター設置等の実習を行います。また、狩猟免許取得支援もこの授業をとおして行っています。

「野生動物捕獲実習」(くくり罠実習:罠の取扱い方の他、模擬罠を使い設置技術も学びます。)

「野生動物捕獲実習」(巻狩りに勢子として参加するなど、銃猟技術や解体技術も学びます。)

これらの授業の他、哺乳類や鳥類の生態を学ぶ科目や、岐阜大学で開講される野生動物管理学講座や県、猟友会等が主催する講習会等への参加、森林技術開発・普及コンソーシアムが行う、調査事業への参加など様々な機会を活用し、学びを深めます。

現在、森林獣害関連の科目は、クリエーター科を対象としたものですが、次年度は、エンジニア科にも森林獣害対策の科目を設置することが決まっています。

ロッテンブルグ大学での教育

昨年11月に、森林文化アカデミーと交流を進めるロッテンブルグ林業大学から教授陣が来校され、狩猟や森林獣害対策に関する教育プログラム等について情報交換する機会がありました。日本とドイツでは、銃や狩猟に関する文化や制度が大きく異なる一方で、森林獣害や狩猟者の高齢化など双方の課題は驚くほど共通してます。また、教育プログラムは、狩猟の知識・技術がフォレスターに必要なスキルとされていることもあり、とても充実した内容で授業が行われているようです。これらについては、引き続き情報交換を行っていくこととしており、3月には、ロッテンブルグ林業大学等を訪問し、情報収集してきます。今後、こうした情報を参考に、アカデミーの関連授業の充実を図っていきたいと考えています。

ロッテンブルグ大学授業風景
 ドイツでは、銃所持が日本より容易で、初心者でもライフルを所持することができる。一方で、狩猟免許の取得は日本より難しい。日本では一般的なくくり罠は、動物福祉の観点から、禁止猟法にされているとのこと。

ロッテンブルグ大学授業風景  
猟の終了後に、捕獲された動物を称え、弔う儀式が行われる。捕獲された動物を横たえ、ホルンが吹かれる。こうした狩猟文化も授業をとおして伝えられる。

 

森林文化アカデミーへのいざない

今後、森林獣害対策や狩猟に関する知識・技術は、森林技術者にとって外せないスキルになると考えます。

森林文化アカデミーで、森林、林業、そして森林獣害対策のわかる技術者を目指してみませんか?