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2017年02月20日(月)

教員リレーエッセイ1:これから求められる木工って何だろう

久津輪 雅(木工)

これから求められる木工って何だろう

突然ですが、IKEA(イケア)へ行ってみたことはありますか。私が行ったのはずいぶん前になりますが、大きなカルチャーショック体験でした。最も木材が調達しやすく、人件費が安い場所に工場を建て、量産して世界へ配送する。世界中のデザイナーが製品のデザインに参画する。ふだん使いの木の家具が、世界中どこでも安い価格で手に入る。木工がどんどん高度に機械化し、グローバル化する中で、地方で木工に携わる人たちはどこに軸足を置けばよいのだろう、そんなことを思ったものです。これから木工を仕事にしたいと考えている人たちも、きっと同じような思いがあるのではないでしょうか。

私は考え続けるうち、だからこそ逆に、すぐそこにある森の木を使うこと、機械ではなく手を動かすこと、買うのではなく自分で作ること、を人々が求める時代になると思いました。そこで、生の木を割ったり削ったりして小物や家具を作る「グリーンウッドワーク」という木工を、森林文化アカデミーに採り入れることにしたのです。

グリーンウッドワークとは、直訳すれば「生木の木工」という意味です。ヨーロッパではかつて、木の椅子や器を作る職人たちが森の中に小屋を建て、伐ったばかりの柔らかい木を削って製品を作っていました。日本でも職人たちが、生の木を削ってお椀や杓子を作りました。それを、道具を使いやすく改良したり手順を工夫したりすることで、誰でも楽しめるようにしたものです。在学中にグリーンウッドワークを学べば、学生たちは卒業後に、身近な森の木を使って木工を教えるのを生業の一つにすることができます。

森林文化アカデミーで木工を専攻する学生たちは、グリーンウッドワークの実習でスプーンや椅子を作ります。また、刃物の研ぎ方や木の種類の見分け方、一般参加者を対象にした講座の運営方法に至るまでを学びます。

放課後にグリーンウッドワークを楽しむ、クリエーター科の学生たち

授業で制作したスプーン 学内でコナラを伐り、ナタと小刀と彫刻刀で仕上げた

岐阜から全国に広がる、グリーンウッドワーク人気

いま、グリーンウッドワークは日本全国へ大きく広がりつつあります。森林文化アカデミーでは、自然学校や木工教室などで働く人を対象に「グリーンウッドワーク指導者養成講座」も開講していますが、今年度は4月1日の募集と同時に全国から応募が殺到し、年間6回の講座がすべて埋まってしまうほどのアイドル並み(笑)の人気でした。

北海道では木育を推進している団体「木育ファミリー」のお招きで、私と卒業生が3回にわたって講座を行いました。九州でも、里山の保全や活用を行う「ふくおか森づくりネットワーク」の依頼で、2年続けてグリーンウッドワークの講座を開催しました。北海道でも九州でも、まだまだ人気が高まりそうな気配です。

ふくおか森づくりネットワーク主催の削り馬づくり講座

はじまった、全国から岐阜への「木育留学」

しかし地方にグリーンウッドワークをしっかり根付かせるためには、私が何度も講師として出向くより、若い人を地方から森林文化アカデミーに派遣して2年間しっかり学んでもらうのが一番です。実は北海道に招かれていた時、「木育ファミリー」のイベント会場となったむかわ町の町役場職員の方にそんなことをお話ししていました。ぜひむかわ町の若者を「木育留学」させませんかと。

するとその職員の方が尽力してくれて、なんと平成28年の4月に2人の若者が森林文化アカデミーの学生として入学してきたのです。1人はむかわ町で3年間の「地域おこし協力隊」任務を経てやってきた松田麻子さん。むかわ町をすっかり気に入り、定住するつもりで森林組合に内定までもらっていますが、就職前に「林業+α」の知識や技術を身につけるためアカデミーで2年間学ぶことにしました。もう1人はむかわ町で実家が林業を営む福本祐大さん。実家の仕事を継ぐために、高校卒業後すぐに林業現場の技術を学びに来ました。

北海道むかわ町からの「木育留学生」、福本祐大さんと松田麻子さん

松田さんは今、林業を中心に学びながら、グリーンウッドワークの実習にも積極的に参加して技術を習得しています。卒業後、森林組合での仕事にきっと活かせると思います。松田さんのように、地域おこし協力隊を経て学びに来る人や、全国の地方自治体が送り出してくる「木育留学」が増えてくれれば、グリーンウッドワークは全国にもっと広がっていくと思います。

グリーンウッドワークの椅子づくりを学ぶ、松田麻子さん

グリーンウッドワークをビジネスに、国内で、世界で

グリーンウッドワークは、ビジネスとしてどんな可能性を秘めているでしょうか。欧米では木工を趣味として楽しむ人が非常に多く、今後日本でも大きな成長が期待できます。危険な木工機械を使わないグリーンウッドワークは、大人はもちろんのこと、子供やお年寄りが木工を楽しむのに最適なのです。

使いやすい道具の開発も、ビジネスとして可能性があると思います。森林文化アカデミーでは「削り馬」と呼ばれる木製の道具を共同開発してきましたが、このような道具をヒノキやマツなど地域の材料で製造販売したり、新たな道具を開発したりするのも仕事にできます。また、刃物類は多くを海外製のものに頼っているのが現状ですが、世界に誇る日本の刃物メーカーと使いやすいグリーンウッドワーク用刃物を開発できれば、国内のみならず海外での販売も夢ではありません。これからグリーンウッドワークに携わる人には、そのような可能性も追求してほしいと考えています。もちろん森林文化アカデミーも、研究開発でお手伝いしていくつもりです。

 

全国に木工系の学校はたくさんありますが、グリーンウッドワークを本格的に学べるのは森林文化アカデミーだけです。ぜひ、これからの時代に求められる木工を学びに来てください。
森と木のクリエーター科では、3/13(月)まで入学願書を受け付けています。最終入試は3/19(日)です。


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