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2021年06月02日(水)

野帳でなぞるデザインの意図「空間認識」

先日「自力建設公開プロポーザルコンペ」が行われましたが、その少し前、建築専攻の授業「空間認識」では【実測野帳】を作成しました。

アカデミーは初めて建築に入門する人がほとんどですが、この【実測野帳】の作成は、図面を初めて引く人や、木造の設計を始めた人にとって最も適した実習だとぼくは思っています。

実測野帳作成5

【実測野帳】作成とは、実際に建物をみてそれを図面にすることです。
課題は、先輩のつくった自力建設。平面図作成は4m×4mでわかりやすいプランの建物「風の円居」です。

柱、通り芯、梁、寸法、方位の描き方を伝え、実際に目の前の建物をフリーハンドでひたすら描いていきます。
フリーハンドというところが大切です。「大体このくらいの太さかな?」というプロポーションを探っていく感覚は、手で覚えるのが一番早く、忘れません。

 

実測野帳作成6

フリーハンドで部材を余さず描き込んでいくと、設計者が何のために、どこに心を込めたのかがわかります。
すべての寸法に理由があり、無駄のない納まりになっている建物は、学びの場所に最適です。
「風の円居」は窓の周りにたくさんの工夫が凝らされています。

実測野帳作成4

今年の自力建設は「屋根付き自由通路」なので、同じ通路である「おうらいの茶の間」も実測。
立面図を描いて高さを測ります。1:50の感覚が身についてきたかな?

実測野帳作成3
実測野帳作成2
実測野帳作成1

そして今年の授業の目玉は自力建設「switch」自転車置き場です。
この建物は、機能・性能・意匠のバランス、つまりデザインが高いレベルで納まった傑作です。
木造建築を学ぶには最高の自転車置き場と言えるでしょう!
ここでは、平面図、断面図、土台伏図、小屋伏図を描きました。

はじめは平面図だけで半日かかっていた学生も、4回の授業をこなすうち、半日で伏図を2枚仕上げられるようになりました。
大進歩です。コンペ前の自分の設計案を練り上げるときに必要な、図面作成スキルもつきました。

実測野帳作成9

 

ぼくは古民家の改修設計をするときに必ず野帳を採ることにしているのですが、それは古民家には図面がないから設計に必要ということ以上に、建物をつくった人の「意図をなぞる」ことが大切だからです。
グラフ用紙に間取りから高さ、骨組みまでじっくりと描き出していると、大工職人の「意図」がはっきりと理解できる瞬間があります。 「この柱がここにあるのは、こっちの建具を引き込んで見えなくするためなのか!」「あ、ここは前に直してるのか!」など、漫然と見ているだけではわからない「意図」を理解できたときは、感動があります。
よく観察して、測って、描くことによって炙り出されてくる細部のこだわりに、自分と同じものを感じて嬉しくなることも多々あります。これだから実測はやめられません。

これからも実践プロジェクトの中で、実測野帳を採る機会があると思います。たくさんの学びを得るチャンスですので、はりきって臨んでくださいね。いい建物を選んでおきます。

 

木造建築教員:松井匠


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