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2018年04月12日(木)

大満足!グリーンウッドワークOne Tree講座(後半)

「One Tree〜1本の木から」講座報告(前半)からのつづきです。

5日間連続の「One Tree〜1本の木から」講座の後半は、スプーンづくりです。モデルにするのは、スウェーデンでかつて食事用に使われていたスプーン。さじ面がずいぶん大きく、柄が短いのが特徴です。ジャロッドさんによれば、かつてスウェーデンの農民たちは食卓の真ん中にスープの鍋を置き、そこから家族が直接すくって食べていたとのこと。兄弟たちに負けずにたくさんすくえるよう、さじ面が大きかったのだと話してくれました。農民たちの暮らしが目に浮かびます。

正面から見ると、首の部分がとても細く、折れそうに見えるのですが、横から見ると首の部分がしっかりと太くなっています。力がかかっても折れにくい、合理的なデザインです。

 

さて、スプーンづくりでは斧が大活躍します。ナイフで削り始める前に、斧でだいたいの形を削り出してしまうのです。ジャロッドさんが使っているのはスウェーデン製のカーヴィングアックス(彫刻斧)。細かい細工がしやすいよう、刃は薄く、刃のすぐ近くを握れるようなデザインになっています。

 

日本では下の写真のような枝打斧がいちばん近いでしょうか。しかし、もう少し刃や柄の形状が違うと使いやすいのにと思う所があります。日本でも、林業用ではなく木工用の斧を開発したいと考えています。

斧1本でここまでスプーンの形に近づきました。

斧の作業が終わると、前半のお箸づくりで学んだナイフワークを駆使して、スプーンの形を仕上げていきます。

さじ面を彫るのには、フックナイフと呼ばれる曲がったナイフを使います。

 

受講生のみなさんも、ジャロッドさんに手ほどきを受けながら削り進めます。ところでこの写真、受講生が立ったまま削っているのにお気づきでしょうか。材料を体で支える技術を学んだので、作業台に材料をクランプする必要も、削り馬にまたがる必要もなくなったのです。立ったまま、スプーンが削れてしまいます。この講座によって、木工がとても自由になった!と感じました。

 

最後は塗装の実習です。ジャロッドさんは普段、「ミルクペイント」と呼ばれる技法で作品を仕上げています。下の写真はジャロッドさんの作品。

手順は以下の通りです。
①カゼイン(牛乳から抽出したタンパク質。接着剤として用いられる)を水で溶く。(※硼砂などアルカリ性物質も必要)
②顔料を加えて混ぜる。
③刷毛で2回塗る。
④乾いたら亜麻仁油を塗って仕上げる。

下の写真は、カゼインを水で溶いたところ。カゼイン自体が白っぽいので、ミルクペイントはパステル調に仕上がります。

 

こちらが赤の顔料です。よく見ると「Red Iron Oxide」つまり酸化鉄、日本で言うベンガラです。日本の漆塗りと使っている顔料自体は変わらないのです。

日本では、漆や柿渋にベンガラを混ぜて塗り、上からさらに漆を塗って仕上げます。カゼインの代わりに漆や柿渋が接着剤の役割を果たします。漆自体が茶色っぽいので、漆塗りの場合は同じ顔料を使っても、やや暗い仕上がりになります。

森林文化アカデミーのオープンカレッジ史上はじめての、5日間連続の木工講座。ゆったりとした時間の流れの中、楽しく学び、たくさん削り、受講生のみなさんは大満足でした。

 

明るくて人なつこいジャロッドさんとジャズミンさんが、講座を盛り上げてくれました。また、過去の受講生やアカデミー卒業生の方たちが食事スタッフを務めてくれたり、講座中に差し入れを持参してくれたり、受講生が五平餅を焼いてくれたりと、たくさんの方に支えられての開催でした。ありがとうございました。グリーンウッドワークによって、あたたかいコミュニティが育ちつつある感じがします。みなさんに楽しんでもらえる講座をこれからも提供していきますので、お楽しみに!

 

久津輪 雅