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2021年08月27日(金)

木工事例調査⑦「早川曲物店」中津川市連携事業

今年も連携協定を結んでいる中津川市の林業振興課にご協力頂き、中津川市の木材産業を巡る木工事例調査を実施しました。中津川市は木曽ヒノキや東濃ヒノキで知られる木材の一大生産地であると同時に、全国でも有数の木工が盛んな地域です。
学生達の目線から報告するレポート第7弾は、曲げわっぱと呼ばれるお弁当箱やせいろなど、曲げ物を専門に作っている「早川曲物店」です。

 木工事例調査の最後は、曲げわっぱを製造されている早川曲物店(代表 早川勝利さん)を訪問しました。早川さんの元で修業をされている森林文化アカデミー卒業生の清水貴康さんも同席してくださいました。清水さんは独立開業のため、本日が最後の勤務日ということでした。
 今年の木工専攻は人数が多いこともあり、製品を見学するグループ、作り方の工程を見学するグループ、「かんば(樺皮)」(サクラ皮のこと)を準備する作業を見学するグループの3つに分かれて少人数でお話をうかがいました。

1 製品について

早川曲げ物店の曲げ物

 和せいろ、中華せいろ、お櫃、柄杓(ひしゃく)、ふるいなど、薄い板を曲げて器にする「曲げ物」を作られています。これら曲げ物の需要はとても多く製品のほとんどは問屋からの注文による物で、在庫がないどころか注文を受けられないこともあるとのことでした。これは、手作業で曲げ物を作れる業者が減ってしまったため、早川さんのところへの注文が増えているという事情もあるようです。

2 作り方・工程について

 側板(がわいた)はヒノキ、底板はサワラが使われます。底板にサワラを使うのは収縮が少ないためだそうです。それぞれ加工済みの状態で仕入れて、早川さんのところで製品に仕上げています。まずは丸く曲げられている側板を一度伸ばす作業から始めます。私たちも体験しましたが、意外と硬くて、伸ばすと割れてしまうのではないかとヒヤヒヤしましたが、割れる心配はないそうです。
 私たちがおそるおそる側板を伸ばしている間に、早川さんはあっという間に側板を型にあてて大きさを決め、端に接着剤を塗って、留め具で固定し終わっていました。とても作業が早く、手が動いたと思ったらもう作業が終わっています。小さいものだと2日で100個ほども作るそうです。

曲げ物、接着剤の塗布

曲げ物の接着

 次に、固定した側板に「木刺し」(木に刺して穴を開ける道具)で穴を空けていきます。早川さんは墨付けもせずに、ものすごいスピードで木刺しを側板に刺してはかんばで編み留めていきます。接着剤はあくまで仮留めで、側板をしっかりとつなぐのは「かんば」の役目です。

曲げ物の接着 底板と側板を接着して、隙間を埋めて蓋を作成したら、縁を円盤鉋で仕上げて完成です。早川曲物店で唯一の機械であるこちらの円盤鉋も体験させていただきました。ちょっと怖かったですが、早川さんの「指は切れないよ」の言葉を信じて鉋をかけました。

曲げ物の鉋掛け 最後に、お櫃や和せいろになる大きめの側板と底板の合わせを体験しました。手作業で行うのですが、とても力が必要な作業でした。隙間なく合わさったところで印をつけるのですが、両手を使って合わせているため片手を離せず側板を合わせるので精一杯でした。
曲げ体験 
 3 「かんば」をこく作業について

 「かんば」とは、曲げわっぱの側板を留めるのに使うヤマザクラの皮のことです。そのままでは分厚すぎて使えない為、皮を薄くする必要があります。この薄くすることを「こく」と言います。前日から水につけておいた皮を適当な幅に切り、膝に当てた自作の鉈と膝の間で引っ張りながら、磨くように削っていきます。どのくらいの薄さにするかは作る製品によって異なるため、感覚でこいていくそうです。薄すぎても切れてしまうため丁度いい薄さにするのが難しいと清水さんはおっしゃっていました。
 なぜ、そもそもヤマザクラの皮を使うのか?それは、ヤマザクラの皮が丈夫で切れにくいからです。清水さんはアカデミー在学中にいろいろな木の皮を試してみたけれど、ヤマザクラに代わる物はなかったそうです。

カンバの皮

カンバをこく 訪問を終えて

 まず、早川さんの作業スピードの速さに驚きました。早すぎで何をどうしたらこうなったのかがわからないまま工程が一つ終わっている。速く正確に作業するための技術の熟練に加えて、段取りを工夫したり、使いやすく道具を自作したりして、効率よく製作していくことの大切さを学びました。注文に対して期限までに求められた数と品質で製造するという職人としての姿勢を、言葉でなく作業する姿で教えていただきました。

 曲げわっぱは需要があるのにも関わらず、作り手がほとんどいない現状です。ヤマザクラの皮を採取・販売する業者もなくなってきて、自分で調達しなければならなくなってきています。卒業生の清水さんのように伝統工芸を担う後継者がもっと増えるように、職人さんの調査を行っていくなど、私たちの代で伝統を止めないように後継者育成についてもっと考えていく必要があると思いました。
 最後になりますが、お忙しい中私たちのために時間を割いていただき、また体験の準備までしていただきありがとうございました。とても貴重な時間でした。学んだことを今後に生かしていきます。

文責:井上真利、矢木満夫(クリエーター科 木工専攻1年)


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