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2019年07月08日(月)

木工事例調査「白山クラフト」 中津川市連携事業

今年度、森林文化アカデミーは中津川市と連携協定を結びました。今回、木工専攻の授業「木工事例調査」の実施にあたり、中津川市に仲介して頂き市内7社の木工関連企業を訪問させて頂きました。その見学レポートを学生から報告いたします。


今回、私たちが訪問させていただいたのは、岐阜県中津川市福岡に工房を構えておられる「白山クラフト」です。自然の風合いを生かした大きな一枚の板を、天板に据えるテーブルを主力商品として製作されている企業です。今回は、五年前の設立から現在に至るまで、「白山クラフト」をおひとりで営んでおられる松井靖二さんに、仕事の内容から、経営に関することまで幅広いお話を聞かせて頂きました。

白山クラフト見学

まずはじめに松井さんに案内していただいたのは「白山クラフト」の製品が生み出されている工房です。実際に中に入ってみると、その広さと、設備の充実度に一同驚きを隠せません。詳しくお話しを伺ったところ、その工房はもともと松井さんが社員として働いていた民芸家具を制作していた会社の工房で、親方がやめられた際に、工房を丸々譲っていただいたのだそうです。その前身となる会社の規模が、従業員数で最大15名ほどであったとか。道理で加工機械の種類が豊富だなぁ、と思っていると松井さんは中でもとっておきの機械があるんだ、と我々を外へと案内してくださいました。

こちらがその機械です。なんとこちらの機械、幅は1m40cmまで、長さは4mまでの木材をmm単位の厚さで削ることができるのだそう。この機械は、全国的にも珍しいものらしく、近隣の会社からこの機械を使った製材の依頼もあるのだとか。機械は最新のものが良いと思われがちですが、昔に比べて大きく減ってしまったという機械技師の手によって作られた昔の機械には、現代でも十分に通用する機能性があることを痛感しました。

1枚板を削る機械

これらは一枚板のテーブルに使われる材料です。樹種としては主にトチ、ケヤキが多く、どの板も立派なものばかりで、ついつい目を奪われてしまいます。そんな中、松井さんが「白山クラフト」の木材の仕入れ方について興味深いお話をしてくださいました。木材の仕入れは一般的に、板買いか原木買いの二通りありますが、「白山クラフト」では原木の状態で買い入れる事が多いそうです。原木での購入は、製材の際の加工賃が含まれないため、板買いよりも安く買うことができます。しかし、節の出方や割れなどの見極めが難しく、ほぼ生の状態での利用となり狂いも大きいため、とくに小さな敷地で個人の工房をされている方には難しいとされています。ですが、「白山クラフト」では、①原木を一から製材できる機械が揃っているということ、②製材した板を乾燥させるため置いておけるだけの敷地があること、そして③一枚板のテーブルでは、節や割れがアクセントとして良い印象を持たれること、と原木での仕入れにあった条件が揃っているのだとか。その話を聞いて、松井さんは、今自社が持っているものをいかにうまく活用し、他社と違いをつけていくのか、ということをすごく大事にされているのだな、と感じました。

一枚板の在庫

他との違いをつけているのは何も仕入れの方法だけではありません。「白山クラフト」の大きな特色として、一枚板のテーブルに漆塗装を施した製品があります。漆の塗装作業はとても手間と時間のかかる作業で、一枚板の大きなテーブルに塗装を施すのは簡単な仕事ではありません。しかし松井さんは、入念に漆を塗り、拭き残しのないよう丹念に拭き取るという作業を6度も行うこの工程を、無心になって製作に向かえる時間としてとても大事にされているそうで、それゆえに最も楽しい作業であると仰っていました。だからこそ、松井さんの作る作品はとても丁寧で、綺麗な仕上がりなのだろうと思いました。

漆を塗られたテーブル

ショールームに展示された1枚板テーブル

最後に、松井さんは先日作られたばかりのギャラリーに案内してくださいました。そこでお聞きした話の中で特に印象深かったのは、松井さんのお父さんがよく仰っていたという「損して得とれ」という言葉です。もちろんその考え方だけでは、実際に社会に出て物を売っていくということは難しいかもしれませんが、自分が作る作品と、その作品を買ってくれるお客さんへの誠意があってこそ、次の仕事に繋がるのではないか、と感じました。

ショールームで作品の説明

学校の中での学びとは違い、実際に仕事として木工をされている方のお話はすごく刺激的でした。これから私たちが踏み出そうとしている業界について、表も裏も包み隠さずお話いただき、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。松井靖二さん、どうもありがとうございました。

文責 森と木のクリエーター科 木工専攻 2年
久保 遼一


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