活動報告
2020年03月19日(木)

葉っぱのエッチングガラス(morinos建築秘話14)

morinosの土の洞窟。北外壁に掘り込まれ左官で仕上げられた少し天井の低い空間です。

丸ノコ名栗のベンチ(建築秘話13)と薪ストーブ(またの機会に紹介します)が置かれます。

よく見ると、四角い穴がポツポツあいてます。

近寄ると、葉っぱが形どられたガラスが土を掘り込んではめてあります。

なんとも不思議な質感のガラス。

今回はこのエッチングガラスについて。

morinosは収納庫も含めてワンルーム空間ですが、様々な活動に合わせて空間を切り取れるようになっています。

活動的で大きな多目的空間、プログラムの小道具が見える収納庫、大きな屋根下の半屋外デッキ、ソファの置かれた明るい図書コーナー、そして天井の低い落ち着ける土の洞窟です。

この「図書コーナー」と「土の洞窟」は印象が対照的な和みの空間です。

「図書コーナー」は、天井が高くガラスの壁面から日光がサンサンと降り注ぐ日差しのなか、外の景色を見ながら、ゆったりとしたソファでくつろげる明るい空間

に対して、

「土の洞窟」は、天井を低く押さえて土の柔らかい素材感に囲まれ、薪ストーブの炎の揺らぎなどを見たり感じながら、木のベンチで落ち着いて談話する空間

です。

壁を土壁だけで仕上げると、少し重たい雰囲気になるため、この掘り込まれた洞窟に、一条の光が差し込むようなアクセントを入れたいと思いました。
単なるガラスでもその役目は果たしますが、morinosらしい表現ができないかと考えたのが、葉っぱをモチーフとしたガラスです。

ガラス作家さんにガラス技法をいろいろ見せていただき、全体のイメージを固めていきました。

ベースとなる技術は、硝子表面にサンドブラスト処理を行い、いろいろな文様を描き出す「エッチング加工」です。これで、精度よく葉っぱを形づくることが可能になります。

ガラス背面から光が透過することで明るく見えますが、北面の収納スペースに面するガラスや夜間は、暗く沈んでしまいます。そこで、特殊な鏡面加工も混ぜ、ガラスらしい透過要素を残しつつも室内の光を反射する鏡の性質を併せ持つガラスを作っていただくことになりました。こんなガラスは一人ではまず思いつきません。

技術的にはエッチングや鏡面加工を何層かに分けて行い、積層して接着することで出来ています。何重にも重なったガラスの奥行き感が感じられます。

 

エッチングする葉っぱデザインは、森林生態学が専門のアカデミー教員 玉木先生に協力いただいて、美濃市周辺に自生している特徴的な植物を20種類ピックアップ。
シルエットを原寸大でかたどって、葉柄(ようへい:葉と茎を接続している小さな柄)や葉縁(ようえん:葉身の周縁部)など、それぞれの樹木の特徴がしっかり出ているかを確認していただいて作成しました。

これを、ガラスの大きさ(100mm角、150mm角、200mm角の3種類)にレイアウトして下図を作成しました。
ホオノキ(上イラストの右上)などは大きすぎて200mmでも入りきらず、原寸サイズに加えて、形状を表す縮小版もレイアウトしました。

出来上がったホオノキがこちら。(下の写真)
いかがでしょう。葉っぱの特徴が見れますか。

鏡も単なるシルバーではなく、茶色味がかった柔らかさを感じます。

葉っぱのエッチングガラスは20種類ありますので樹木同定を行ってみませんか?
答えはスタッフに聞いていただければ誰もが答えられます。アカデミー学生でも大丈夫でしょう。

ガラス作家さんからは、制作にあたっての想いもいただきました。

個々の植物の形を図鑑のように並べるのではなく、かつて生きていた存在感まで表現できればと考え、制作をさせていただきました。
ガラスと鏡が持つ、透過、不透過、反射、ゆらぎの表現を利用して、落ちた葉が腐食し、川や風に流れ、やがて消えていく感じを表現しています。
ただ、日々の光の変化のなかで瑞々しく輝き、もの悲しくならないように気をつけて制作しています。
技術的には多層エッチング加工、積層接着ですが、そこに込めたメッセージはこの地球で生きた生命の痕跡と輝きを何とか表現できたのではないかと考えています。

この不思議な質感のガラス、現物を見ないと良さは伝わりません。

 

下の写真は試作品のエッチングガラスです。
光の透過具合と反射具合を確認しました。何度見ても、不思議な透け感です。

昨年末に隈さんが来られた際も試作品を確認いただき、「これは面白くていいね。」とのコメントもいただいています。

このエッチングガラスを設置する壁は、地震の力を伝える耐力壁。通常の構造用合板では、穴をこれだけ開けれませんので、斜めに材を入れる筋交いで確保しています。

この筋交いを回避しながらバランスよく配置していきました。(下の写真の合板の斜めの線が筋交い位置です)

左官の下塗りでエッチングガラスを埋め込み、光の状況も確認します。

夜には、外部照明の光が入りつつも室内の光を反射して、全体が輝いています。(下の写真)

時間を変えて現地に行くと、昼と夜、照明の有無によって、毎回違った表情が見れ楽しませてくれます。

准教授 辻充孝


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