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2023年06月06日(火)

日独木造建築シンポジウム 講演会 (木造建築ドイツ研修記4)

日独の建築関係者が集まる木造建築のシンポジウムが、ドイツのロイトリンゲンにて行われました。
今回で第3回となる木造建築シンポジウムは森林文化アカデミーと連携協定を結んでいるロッテンブルグ林業大学校主導で行われました。
コロナウイルス感染症の影響で、4年ぶりの開催です。
会場は木造建築シンポジウムにふさわしい、木材を使用した半野外ステージでした。

Nature Theater Reutlingen

特別講演として、日本からは建築家の隈研吾氏、ドイツからは建築家のProf. Peter CHERET氏が登壇しました。

隈研吾氏

木、竹、萱などの自然素材を利用した建築事例を解説紹介。建物だけでなく、周りの環境から設計していく。本校に併設するmorinosも建築事例として紹介。

「20世紀以前は木の時代であった。ここ20~30年はコンクリート造が主流であったが2000年頃から木が再び注目され始めている。これからは木の時代。」

Prof. Peter CHERET氏

題「Holzdau in Deutschland zwischen Tradition und Moderne」伝統と現代の間のドイツの木造建築、日本とドイツの建築的同意点を解説。

「日本には石場立てがあるがドイツには存在せず、木組みの技術はドイツにもあるが、力の受け方が違うので形が異なっている。これは、地域の特性によって変わる。場にあった建築様式がある。」

その後、ドイツの建築歴史、最新技術を紹介。

お二人の講演後、質問を交えたトークもありました。

木造建築の未来や、講演の内容を掘り下げる質問などがありました。
私は質問中の「若者へのメッセージ」が印象に残っています。
お二人共に「行動する、作ってみる」と言っていました。私も興味を持ったことに対して、やってみる行動してみることを大切に今後取り組んで行きます。

涌井学長

森林文化アカデミーからは涌井学長が挨拶を行いました。また辻教授、小原教授がそれぞれ建築事例を交えながら、各自の専門分野について講演を行いました。

辻教授

題「地域固有の木造建築文化をつくる」

morinosを解説。素材、時間、人と分け建築技術、建築性能について。

美濃の町「NIPPONIA」「WASITA MINO」について紹介。

小原教授

題「構造要素の技術開発から生じる木造建築の構造デザイン」

構造の観点から、技術やデザイン、特性について事例や研究結果をもとに発表。

 

 

ドイツからはミュンヘン工科大学教授Prof.Stephan Birk氏、ダルムシュタット応用科学大学教授Thorsten Helbig氏に講演いただきました。

Prof.Stephan Birk 氏

題「Timber architure-a contribution to the constrution turnaround」木造建築-建築再建への貢献。

建築業界が排出すCO2 に着目。広葉樹の集成材。使用目的の変化、解体のことを考慮した設計について。

Thorsten Helbig 氏

題「weitgespannt und hochgestapelt」広いスパンと高く積みあげられた新しいタイプの木造建築、大スパンを飛ばした集成材の建物、木がクリーン素材、木造の橋の建設について。

最後にロッテンブルグ林業大学のLudger DEDERICH教授の講演を予定していましたが、時間の関係上割愛されました。

後日発表資料を拝見しましたが、日本の木造建築をドイツ的視点から解説された興味深い内容でした。

Ludger DEDERICH教授

シンポジュウムに参加し、日本にも地域で建物の形が異なるように、同じ木造でもドイツと日本では、多くの違いがあると思いました。

各地域の特性にあった建築がその地域で生まれるのを感じることができました。
例として、日本は地震が多く発生しますが、ドイツは滅多に地震が起きません。
地震が少ないので、構造の違いなど独自に発展した形がドイツの建築にはありました。

また、どちらの国も建築が環境にあたえる負荷を重く受け止め、環境負荷の削減や環境に優しい暮らしをしつつ、人間の快適な空間や場所をどのように建築するかを考えているところは、共通項だと感じました。

今回の研修で私たち森林文化アカデミーの学生は恵まれた環境下で勉強させていただいてると改めて感じました。

この環境を最大限活用し、残り半分を切った学生生活を全力で取り組まねばと思います。

 

 森と木のクリエーター科 木造建築専攻2年 坂本一哲