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2021年01月13日(水)

木造建築専攻のSDGs後付けマッピング

最近よく耳にするSDGsをご存じでしょうか。

SDGsのカラフルな17個のアイコンは、テレビや会社、日常生活のいろいろなところで目にされていると思います。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている「地球上の誰一人として取り残さない」という2030年までの国際社会共通の目標です。

SDGsで取り上げられている17のゴールを見ると、扱う範囲が広すぎて専門外の内容も多いと感じませんか。

ですが、関心が高かったり、専門分野だったり、身近なところから紐解いていけば、広い視点でいろいろなことを気付かせてくれます。実際に、普段実施していることがゴールにつながっている事柄もたくさんあるわけですから。

SDGsの生まれた背景を考えてみると、世界の偏った状況を修復するためでしょう。

開発途上国の人口は先進国の4倍近い状況に対し、富は先進国の一部の富裕層で世界全体の8割以上を保有しています。
先進国は開発途上国を利用して稼ぎ、富を持つ人々はさらなる快楽を求めて資源とエネルギーを浪費し、ゴミ(CO2含む)を廃棄する。これらのゴミは生態系を破壊し、病や気候変動となって私たちを襲います。この変化に対応できるのはやはり富裕層。更なる格差が広がっていきます。
この状況を改善し「地球上の誰一人として取り残さない」という目標のもとSDGsが掲げられています。

こう考えるとやっぱり扱う範囲が大きすぎて・・・となってしまいそうですが、すべての目標を個人が、あるいは1企業だけで取り組む必要はなくて、できる範囲で、国、自治体、企業、他専攻、個人がそれぞれ実践していけばいいわけです。チームとして、最終的な目標達成を目指していきます。

後付けマッピング

次の世代に残るツケをなるべく少なくするために、森林文化アカデミーでも林業や森林環境教育、木工、木造建築の専門分野の様々な角度から取組を行っています。

木造建築専攻も2001年の森林文化アカデミー開学以来、森林と都市を繋ぐことを目指して、教育手法を発展させてきました。現在は、7つの教育手法にまとめ実践しています。

この7つの教育手法には、SDGsの17の目標に寄与している内容も多くあります。

まずは私の考える木造建築専攻の後付けマッピングを行ってみました。
大きなアイコンが特に取り組んでいる内容です。
特に左上の大きなアイコン、GOAL4「質の高い教育をみんなに」はすべての教育手法で特に意識している内容です。

1.自力建設プロジェクト(GOAL4、12、15)
 ・設計から施工まで学ぶ現地現物主義の質の高い教育を行っています。
 ・演習林の木材を学内で製材し、利用する素材の一連の流れを学びます。

2.木造建築病理学(GOAL1、3、4、11、12)
・既存住宅活用を積極的に取り組み、住宅医の人材育成に取り組んでいます。
・空き家の利活用提案など、将来にわたって価値ある街並みの形成に寄与しています。

3.性能設計(GOAL3、4,7、13、16)
 ・耐震や温熱などの建物性能を高め、人の健康と命を守る家づくりを推進しています。
 ・パッシブデザインを基本に温熱やエネルギーを定量的に判断する教育を行っています。
 ・ライフサイクルをを見据えた、製造から廃棄までのエネルギーを考えています。

4.実践プロジェクト(GOAL3、4、5,13、14、15)
 ・人体に安全な木材等の自然素材を積極的に活用しています。
 ・トレーサビリティの明確な流域の木材を積極的に活用することで、森林資源の持続可能な利用を心がけています。
 ・省エネ性能の極力向上させることで、CO2排出量も抑制します。
 ・年齢、性別を超えて使いやすい設計を行っています。

5.専門・共通科目(GOAL4)
 ・木造建築だけでなく森林から暮らしまでの広い視野を持てる教育を行っています。

6.課題研究(GOAL4)
 ・学生が自ら発見した課題の解決に教員全員で指導します。

7.ネットワーク構築(GOAL8、17)
 ・卒業生や専門家、他分野とのネットワーク構築を重視し、チームで問題解決に当たることを推進しています。

右下に取り上げた取り組めていない、あるいは取り組みが浅い内容も気づかされます。何かこじつけることもできますが、それでは意味がありません。

冒頭にも書いた通り、すべての目標を木造建築専攻だけで取り組む必要はなく、国や個人も含めたチームとして取り組んでいくべきだからです。

 

先付けマッピング

これまでの振り返りから後付けマッピングをしてきましたが、今後しっかり取り組むべき内容も見えてきました。

次のステップでは、後付けマッピングをもとにこれから取り組むべき優先度を設定していく必要があります。先付けマッピングです。

教育機関である私たちの木造建築専攻として取り組むべき軸と、地域社会にとっての取り組むべき軸を意識して、両方にとって重みの高いものが最優先事項として取り組む領域です。

この領域分布に、まずは私の主観でざっとプロットしてみました。

すでにある程度達成している後付けマッピングのアイコンの大きさ(達成度を表す)と先付けマッピングの目指すべきアイコンの大きさ(目標像を表す)を比較して、差異が大きなところが、取り組みを始めていかないといけない部分です。

この視点で見ていくと、GOAL9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、GOAL8「働きがいも経済成長も」が、今後伸ばしていかないといけないGOALとして見えてきます。

GOALが見えれば、2030年までを一つの目安として、どのように取り組んでいけばよいか、あるいは、具体的な目標の策定も考えやすくなります。

年度ごとに検証したり、情報発信を行いながら、SDGsの全体性の視点を持って取り組みを行っていければと考えています。

准教授 辻 充孝

 


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