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2017年09月22日(金)

【事業体の経営を考える】林業で必要な人材育成はスペシャリストかゼネラリストか

クリエーター科「事業体経営」の授業です。今回の授業では大きく2つのテーマについて考えました。

 

◆ 森林を「資産」として捉える

◆ 人の育成を考える

 

今回の非常勤講師は、前回の授業でもお世話になった、

マルカ林業株式会社の新永先生です。
前回の事業体経営では、ゲーム形式で持続的な林業事業体の経営を考えました。

持続的な林業事業体の経営を考える

前回は、小規模な森林所有者を取りまとめて施業委託をうける事業体を想定し、

単年度の事業収支を見ながら経営の持続性について検討しました。

 

今回は立場を変えて森林所有者やこれから森林に投資をしようとする会社という目線で、

森林を捉えてみました。すなわち森林を「資源」ではなく「資産」として捉えました。

そうすることで、いかに山から収益を上げるのか、どんな山づくりをすべきなのか、

単年度の事業収支を追うだけでは見えないポイントが見えてきました。

 

演習では正味現在価値(NPV)を計算しました。正味現在価値(NPV)とは投資判断に用いられる数字で、NPV>0なら投資を行う。NPV<0なら投資は行わないという判断になります。NPVは、投資将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引くことで計算することが出来ます。

 

事例としてスギの育林投資を考えました(育林費用は林業会社での実績値を入力)。例えば、木材単価が18,000円/m3、伐採費用が10,000円/m3の場合、61年生の時にNPVが最大となり、82年生の時にNPV<0となりました。

 

61年生で伐採できるなら、最も投資効果が高く、伐採が82年生以降になると投資しない方がよい(銀行に預ける等、他の運用を考えた方がよい)という結果です。

 

誰でもできるエクセルを使った数値のシミュレーションですが、

大事なポイントは、意思決定の判断材料にできるということです。

 

◆ 再造林の際に、どんな樹種を選べばいいのか(そもそも植えるべきか)

◆ 伐期をどう設定したらよいのか

◆ 木材単価の目標をどう設定したらよいのか

 

実際には、

「造林補助金が出るから樹種は気にしない」

「主伐すると再造林が必要だからとりあえず長伐期にする」

という事情はあると思いますが、

 

どういう山にするのか、いつアクション(間伐、主伐)を起こすのか、

 

ロジックに基づく判断が大事です。

これからの林業では人がビジョンや計画を持って意思決定することが求められます。

 

もう一つのテーマは、「人の育成を考える」です。

 

 

◆ 林業業界で求められるのは、スペシャリストかゼネラリストか?

◆ 自分はどうありたいか?

 

というテーマについて考えました。

 

ディスカッションしながら、林業ではどのような人材が求められるのか?自分はどうありたいのか?考えました

例えば森林文化アカデミーは「森と木に関わるスペシャリストを育成する専門学校」であり、学生はスペシャリストを目指して入学するわけですが、例えば、

 

「会社運営に関わり組織内外で動きながら新しい仕事を生み出す」

「会社を社会の変化に合わせて変革する」

 

ようなゼネラリストも必要ではないか?という問いかけも。

 

「林業業界で働くゼネラリストは、他の業界から見れば十分スペシャリスト!」

 

というように見る範疇によってスペシャリストなのかゼネラリストという見方は変わりますが、アカデミーを卒業してからどんな働き方をするべきか、考える機会となりました。

 

小規模事業体が多い林業業界で、組織での役割が議論されることは少ないですが、他の業界と同じく人材確保・育成が急務の中、組織での役割を明確にするという、これからの林業に必要な視点を与えてもらいました。

 

ということで2日間にわたり、投資の考え方、組織や人材育成のあり方といった経営に必要な要素について新永先生に教えてもらいました。ありがとうございました。