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2021年01月26日(火)

活木処の雨漏りメンテ(メンテナンス実習)

2003年(3期生)の自力建設 木材の乾燥施設「活木処」。「処」は発音せずに木を活かすとして「かっき」と読みます。

活木処は、自力建設に使用する木材や、演習林から出てきた材を乾燥させるのに使用しており、利用頻度の高い自力建設です。

この活木処、実は特殊な木材乾燥システムを採用しています。竣工当時の南の屋根面をご覧ください。

なにやら、屋根にパネルが載っています。これは、太陽光発電ではなく太陽の熱を集熱する強化ガラスのパネルです。

屋根で加熱された空気を室内に取り込み、内部に置いた木材を効率的に乾燥させる仕組みです。

昨年、雨漏りがあり、メンテナンス実習で建具回りを修繕しました。

昨年のメンテの様子はこちらから。
活木処の建具が動くようになった?!

これで一安心と思っていたら、今年の秋に今度は屋根からの雨漏りが発覚。天井のシミを見ていただければわかりますが、かなりの雨漏り具合です。

屋根が特殊な構成をしていますので、多少のリスク増加もあります。築17年にして、屋根に不具合が発生してしまいました。


今年度のメンテナンス実習も緊急を要する活木処に決まりました。ほかにもメンテナンスをしたい自力建設もありましたが、マンパワー不足のため次年度に持ち越しです。

まずは現状を正確に把握するための雨漏り診断です。

ステップ1 予備診断(下見・ヒアリング)

予備診断として、雨漏りを発見した松井先生にインタビューを行い、その時の動画を見せていただき、現状の様子を聞き出します。
そんなに大雨でもない状況にも関わらず、中に置いている木材にポタポタと雨粒が落ちてきていたとのこと。

その時の木材の様子が下の写真。結構水が溜まっています。
翌日は応急的にブルーシートで棟を塞ぐと、一応雨漏りがなくなっていましたので、この雨漏りの範囲はある程度特定できます。

ステップ2 一次雨漏り診断(非破壊・目視・触診)

本格的に学生と、目視と触診を中心に現状を調査し、仮説をいろいろ立てていきます。
全体を俯瞰し、雨漏りリスクのありそうな箇所を挙げていきます。

昨年メンテナンスした建具回りの雨漏り事例もあるので、屋根以外にも雨漏りが無いかを注意深く観察もします。

そのうえで、当時の施工写真も確認して、屋根の構成を共有し、いろいろな仮説を立てていきます。
こんな時、図面や写真が多く残っているのは仮説の精度が高くなります。

もちろん、自力建設はたくさんの写真が残っています。

下の写真は、屋根に穴をあけている!写真です。
何で屋根に穴なんかあけているの?となると思いますが、屋根で集めた太陽熱を室内に入れるためのダクト用の穴です。
いかにも雨漏りのリスクがありそうですよね。仮説を検討する際には、当然ここからの雨漏りも考えておきます。

また、空気層を確保するための横桟も見えますね。これも入ってきた雨を溜めてしまって、天井面から広がりながら漏ってこないか・・・。今回の二次板に雨漏りが広がっている原因にもなりそう?

ですが、そんなことは、当時もしっかり考えています。

この穴の上部には、ガルバリウム鋼板の波板が全面に張られて、この穴には雨水が行かないように考えられています。
先ほど開けていた穴は完全に屋根の下に入ってしまいます。

となると、波板の継ぎ目、いやいや、波板の上部(棟)が怪しい??となってきます。

また、この上にガラスを乗せるための架台をつけていますが、そのビス止めも怪しい??

雨漏り箇所の仮説は多いほどいいです。

ステップ3 二次診断(非破壊・散水試験)

仮説がいろいろ出たところで、雨漏りを再現できるか散水試験を行いました。(昨日です。)

今回はステップ4の三次雨漏り診断(破壊・直視)は行いませんので、散水試験は非破壊で雨水浸入位置を特定するための最も有効な診断です。三次診断は普段も改修に入る際にできる程度でなかなか破壊はできません。

仮説で検討した箇所を順番に散水していきます。下の方から、順番に数十分、散水していきます。(通常は90分)

有力な仮説のところに来ました。

下の写真は、ガラスを抑えているプレートの側面のゴムパッキンが切れた隙間から、屋根とガラスの間に浸入した雨水が、受け材のビスを通って内部に入っているという仮説です。

20分ほど散水した段階で、下で観察していた学生からポタッときた!!との報告。

雨水浸入箇所が判明しました。

ですが、先日の雨のようなポタポタと落ちてくるほどでもありませんし、他の箇所からの浸入もありそうです。

次はその上の棟板金の継ぎ目部分です。

今度は、5分もしないうちに、下から、先ほどの比ではないほどの雨漏りが・・・。先日の雨漏りの状況に近いです。

ここが最も怪しいとにらんでいた部分です。

コーキングが劣化し、一部穴のような隙間が見えていました。また、板金の勾配が上手くとれておらず、雨水がたまってしまっています。

内部に立てた足場からも状況を確認しました。(下の写真の銀色の部分は、屋根の熱を集熱・搬送するダクトです)

ですがこれで終わりではありません。他の仮説も検証していきます。

今回の散水試験では、この2か所からの浸水がに加え、離れた棟部分から同様に少し水が漏る箇所も発見しました。

つまり、雨水浸入位置が3か所、雨水浸出位置も複数です。

以上が、雨漏り診断でした。

雨漏り対策検討

次に、どのように対策していくか。まずは、教室に戻って情報共有です。

散水試験で撮影した写真と計測した棟部分の形状をホワイトボードに描き、現状の雨漏りを共有します。
そのうえで、限られた予算と、実習にかけられる時間・人工を考慮して、最善の対策を考えていきます。

今回考えたのは、2段階での対策。

第一段階として、現状のコーキングを除去し、新たにコーキングをやり直し、その上にブチル防水テープで補強する。
これで一応雨漏りは止まるはずですが、10年程度で、また雨漏りリスクが上がってきます。しかも、棟板金の水勾配の課題が解決しません。

そこで第二段階として、現状の棟の上に新たに勾配を設けるように木材を入れ、ルーフィングをかけ、その上に屋根材で保護することです。

これで、現状の補強+新たな屋根で、かなり強固に抑えられるはず。

必要な道具や素材をリストアップして段取りします。(ここまでは昨日)

雨漏り対策工事

今朝は朝から、マスキングして雨水浸入箇所に加え疑い高い場所すべて、コーキングを打ち直します。

雨水浸入量の大きな板金の継ぎ目は、防水テープで補強して、第一段階の完成です。

次に第二段階用の棟勾配用の木材加工です。

これは自力建設を経験している二年生にはお手の物。コーキング部隊と並行して完成。

水勾配が確保できました。

この上に、アルファルトルーフィングを敷き、天然パルプを原料とした屋根材(耐候性50年)を施工しました。

このあたりの加工もお手の物ですね。

これで雨漏り補修の完成です。

散水試験+雨漏り対策工事で2日間のメンテナンス実習が完成です。

下から見上げても、色合いや形状ももともとの設計だったかのように建物になじんでますよね。(下の写真の一番頂部です)

今日はこの後、雨予報。何とか工事を終えることができました。

室内に置いてきた乾燥板材が濡れているかで、雨漏りの確認ができます。直っていますように。

准教授 辻充孝


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