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2022年08月05日(金)

自力建設の材料の材料:製材のはなし (自力建設2022「丁稚基地」)

以前の記事(https://www.forest.ac.jp/academy-archives/jiriki2022-02/)でもご紹介のとおり、自力建設はアカデミー演習林の木で建てています。
建物を組み立てる柱や梁といったパーツ=建物の材料を「部材」と呼びますが、伐り出した丸太を切って削る、だけでは部材には使えません。

伐ったばかりの丸太は重さの約半分が水です。
木材として使うまでに1割近くにまで水分を落とさないと、寸法が狂ううえ簡単に腐れやシロアリの餌食になってしまいます。
そのために乾燥処理が必要!ということを、授業「木造建築材料(乾燥)」でも扱っています(https://www.forest.ac.jp/academy-archives/tsm-drying1/)。

そこで乾かしやすくするためにまず、丸太を部材のだいたいのサイズで鋸挽きするのが「製材」です。
いわば、「自力建設の材料の材料」づくりですね。

部材は授業「部材をつくる」や他の授業の間を縫って学生が製作します(https://www.forest.ac.jp/academy-archives/jiriki2022-04/)。
それまでに実は、舞台裏で連日製材が進んでいます。

 

まずは丸太選び。
部材に必要な寸法を考えながら、林業専攻の教員・学生が伐ってくれた丸太から頂くものを決めます。
池戸先生・杉本先生に林業機械での助力を受けながら、太さや曲がりを見て1本ずつ選んでいきます。
川上~川下の連携がある学校だからこそできる、ゼイタクな体験です。

 

丸太を製材棟に運び入れたら、製材機で製材。
一本ずつ形と大きさの違う丸太に鋸を入れてゆく操作は、ベテラン・吉野先生の経験から。


太い部材をつくるため、曲がりのある材も製材しました。
四角く製材を切り出すには、時間を使って形をよく確認する手間が必要になります。
実務のなかではなかなか難しく、こういった曲がり材は値段がつかずパルプ・チップ材(紙や燃料)として利用されることが多い現状があります。
吉野先生の技量のおかげでまっすぐに製材できました。元の大きさをムダにすることなく、自力建設にうまく役立ってもらえそうです。

 

学生も製材機の操作を体験。

 

連日の製材のなか、まとまった数ができあがった製材は乾燥処理に移します。

まずはスピード重視の人工乾燥。
岐阜県森林研究所の蒸気乾燥機を利用し、1週間で乾燥を仕上げます。

森林研究所・土肥さんにご指導頂き、乾燥処理する板材をきれいに桟積み(さんづみ)しました。
専用の機械(桟積機)は用意がないため、1枚ずつ丁寧に手積みしています。
きれいに整えるのは見た目の問題ではありません。
きちんと積まないとあちこちで反りが発生する恐れがあるためで、実は大事な工程です。

このまま蒸気乾燥機に投入。

反ってこないよう錘をしっかり載せて、1週間の乾燥処理です。

このあと第2弾として、柱材も人工乾燥処理を行いました。
表面割れの発生を抑えるため、板材と違い「高温セット処理」を乾燥スケジュールに加えています。
先ほどの曲がり材を挽いた柱もこの桟積みの中です。

人工乾燥機に入りきらない長尺材(長さ5m、6m)は、2003年自力建設「活木処(かっき)」で太陽熱乾燥を行っています。
時間は掛かりますが人工乾燥に比べて乾燥温度が低く、木材の成分(香りや色合い)を残すのに向いた方法です。


そうして乾燥が仕上がった製材が、部材へと加工されてゆくことになります。

木を育てるのももちろん大仕事ですが、丸太から「使える」状態にするのも実はけっこうな手間や経験、知識が必要な工程です。
自力建設はもちろん木造建築をご覧になったら、ぜひその部材が辿ってきた道に思いを馳せてみてください。

「丁稚基地」でこの製材がこれからどんな部材になるのか?も、ぜひお楽しみに!!!!

木造建築教員:助教 上田麟太郎