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2021年12月28日(火)

「広葉樹CLTパネル」小径木との相性を探る

先日森林文化アカデミーと連携協定を結んでいる飛騨市で昨年に引き続き「木工房・木工作家の広葉樹の活用」というテーマで講義をさせていただきました。

 

飛騨市では「広葉樹のまちづくり」というプロジェクトが2014年から始まっており、広葉樹利用に関して、全国的に見てもとても先進的な取り組みをされている自治体です。詳しい内容は飛騨の森を君とつむぐというホームページでご覧いただけます。

今回はそのプロジェクトの一環で開催されている、広葉樹のまちづくり学校のカリキュラムの中での講義でした。昨年、今年と飛騨市の小径木広葉樹利用に関して取り組んだ内容をいくつか発表させていただきました。

 

昨年は全国の木工房、木工作家のみなさまに国産広葉樹利用についてのアンケート調査を実施したり、飛騨産ミズナラと、近い種であるロシアナラ(モンゴリナラ)でまったく同じ寸法のチェストを作り比べてみるといった実証をしました。

飛騨産ナラ(左)とロシアナラ(右)

 

今年度も「収納家具」という授業で木工専攻の2年生が飛騨産広葉樹を使った学内会議室用のモニター台を製作したり、

樹種はクリ、セン、キハダ、ミズナラ

一人で移動がしやすいように片側が車輪になっています。

 

6月に開催された樹の一脚展Nagoyaに出展した、薄い木材で座面を編んだスツールの製作も行いました。

 

樹種はすべて飛騨産ナラで、座面は黒染めしたあと編み込み、フレームに組み込みました。

 

 

飛騨市の広葉樹材はほとんどが小径木のものです。それは伐採できる範囲では大径木がほとんど切り尽くされており、その後天然更新したものはまだ家具用材としてしっかり育っておらず、これまででは流通してこなかった径の小さいものを使っていこうという段階だからです。

 

こういった節や曲がりの多い小径木を家具にするには手間がかかります。昨年、今年と製作した家具も、それぞれ板の矧ぎ合わせや節の残し方などの工夫が必要で、決して作り手として使いやすい材ではありませんでした。でも材を選び手間をかけ、出来上がったものは充分家具として使うことができますし、とても個性的なものになったかと思います。そしてどこで誰が伐採し、製材したかがとてもわかりやすく、しっかりと地域に利益を還元できている事を実感できます。

 

木工専攻2年生、樹の一脚展出展の木工家の方々と飛騨市黒内の伐採現場を見学に行きました。

飛騨市古川町の西野製材さんで材を選びました。

 

ただしもう少しまとまった量の需要を生み出すためにはこういった用途はもちろん踏まえた上で、広葉樹を規格化していくことも必要です。そして規格化されたボードを作るとしたら、少しずつ建材などで広がりを見せているCLT(Cross Laminated Timber)パネルがいいのではないかと考え、実際にパネルを作ってみて検証してみました。(※JAS規格で定められているCLTは1層の厚みが12mmとされているようです。今回は直交させて貼り合わせた構造なので一般的な呼称としてCLTパネルと書いています。)

 

どうして小径木がCLTに向いていると思ったかというと、CLTパネルはベニヤなどに比べて厚い材を3層、またはそれ以上を木目を直交させて貼り合わせていきます。間に挟む材は、接着剤で固めるので、ある程度割れや節が許容されるのではということと、間に挟む材は、短くてもいいので、曲がりが強い材や欠点の多い材でも短く切って使うことができるのではというところです。

 

そこで、普段では材としては売ることができないほど割れが入ってしまった材をあえて中に挟み込んでみました。

すべて一般的な木工機械で加工し、手作業でプレスしていったので、かなり手間がかかってしまいましたが、パネルとしてしっかりしたものが出来上がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

次は広葉樹CLTパネルを家具に使ってみました。CLTを天板と脚、引き出しなどにも使ってみたかったので、引き出し付きデスクを作りました。

 

飛騨材で自作したCLTパネルを天板に使い、脚材には北海道の愛別町にある緑川木材さんで製作されているものを使いました。実は針葉樹のCLTは大規模な工場も少しずつ増えており、普及してきていますが、おそらく現状では国内で広葉樹のCLTパネルを作られているのは緑川木材さんだけです。どうして広葉樹で作ろうと思われたのか、どういう需要があるのかなどを緑川新之介さんにオンラインでお話を伺った上で、21mmのナラ材のCLTパネル(緑川木材さんでは3層パネルという名前です。)を作っていただきました。

北海道、旭川周辺の広葉樹の事情も教えていただいたり、広葉樹CLTについて詳しくお話しいただき、大変参考になりました。ありがとうございました。

 

これまでの作り方と、CLTパネルでの違いを示すために、片側の脚は従来どおり部材を組んで作り、もう片方はCNCルーターで加工しました。

 

左が木組み、右がCNC加工のもの。木目の向きが違います。

CLTパネルは一般的な横矧ぎパネルに比べ、外側と挟み込んだ材が木の動きを打ち消し合い、収縮や反りが少なくなります。CNCなどのデジタル加工機との相性はいいはずなのでその検証も兼ねていました。

 

CNC加工に関しては森林文化アカデミーとの連携授業を担当していただいている、大垣市の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)産業文化研究センター、伊澤宥依さんにご協力いただきました。IAMASイノベーション工房のCNCで片側の脚と天板裏の溝加工をしました。精度の高い加工を、データの修正も含めてやっていただきました。本当にありがとうございました。

 

CNCでの加工は予想通りとてもうまくいきましたが、引き出しの組み立て中に木組み加工において、木目が直交しているために無垢材では起こり得ないような不具合が起きてしまいました。CNCでの加工性の良さがある反面、ホゾやサネなど、木組みの加工の場合には注意が必要だとわかりました。

 

今回は加工の詳細を見てもらいたかったので、工具無しで簡単にバラすことのできる構造で製作しました。

 

 

送り蟻(寄せ蟻)という伝統技法をCNCで加工しました。

 

今回はまずはあまり市場にはないCLTパネルを使ってみるということをやってみて、CNC加工との相性や無垢材との加工性の違いなどを確認できました。これから寸法安定性、耐久性など、経年変化を観察していきます。

向かって左がCLT、右が木組みで製作した脚

来年度以降、飛騨市でCLTパネルや横矧ぎパネルなどの規格化された広葉樹パネルの試作や製作コストの計算、新たな活用方法に関するコンペの実施などが検討されていて、予算要求され、協議していただいているとのことです。

これからもしっかりと関わらせていただいて、広葉樹の新たな一面の可能性を探っていけたらと思っています。

 

渡辺 圭 (木工専攻講師)