ドイツフォレスターの野生動物管理⑥
5日目は教員の新津が報告いたします
濃厚な日々はあっという間に折り返しを迎えています
この日はシュヴァルツヴァルトの国立公園を訪れました
ビジターセンターは休業でしたが、急遽国立公園の野生動物管理におけるマネジメントリーダーが迎えてくれました。
この土地の歴史と国立公園の概要を伺いました。ルーエシュタイン(Ruhestein)という地名はバーデン地域とヴュルテンベルク地域の境界を歩く人たちが岩(シュタイン)に座って休む(ルーエ)ことからついた地名だそうです。言われてみれば大きな岩が目立つ地域です。
この公園の位置するシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)はドイツの中でも降水量が多く、かつては120日/年はスキーができたと言います。ところが、近年では気候変動の影響もあってか冬季の8日程度しかスキーが出来なくなったそうです。降水量も2,000mm/年あることで、キクイムシ被害の影響も少ないのではないかと予測していたところ、積雪が少なくなったことで保水力も落ちてしまいキクイムシの被害が多く発生しています。
国立公園に指定されている面積は3,000haの北エリアと7,000haの南エリアを合わせた10,000haです。国立公園ではあるものの、その内50%が野生動物の捕獲を伴う管理を行っています。対象はノロジカ(Rehwild)・イノシシ(Schwarzwild)・アカシカ(Rotwild)です。基本的にはその3種以外の狩猟捕獲は行いません。また、国立公園の中枢部分では狩猟を行わず、国立公園の外周部分を中心に捕獲を行うようです。これは、森林への被害を及ぼす3種の動物が森林経営を行う国立公園の外へ影響を及ぼすのを防ぐためのようです。大きな被害を及ぼすアカシカは行動範囲が狭く、50%のエリアで対策を行えば事足りるとのことでした。
なお、アカシカは森林への悪い影響を及ぼすだけでなく、希少動物へ対して良い効果も及ぼすようです。アカシカが下層植生を食べることで、林床が明るくなります。これは針葉樹林の中でも明るく開けた空間を好む「オオライチョウ」にとって良い環境なのです。その為、一部では牛の放牧も許されており、オオライチョウのいるゾーンではアカシカは捕獲しないのです。
林業における木材生産の視点からしたらアカシカの存在は目の上のたんこぶですが、希少種がアカシカのつくる環境に依存しているという一面もあります。ドイツでは開発を行う際にも調査を徹底的に行い、開発に伴う影響や代替え策をしっかりと考えています。我々も自然に対して行う行為が、どんな影響を及すのか今一度考えながら判断をしていきたいと考えさせられる1日でした。
過去の活用報告
・1日目
・2日目
・3日目
報告:引率教員 新津裕(YUTA)





