ドイツフォレスターの野生動物管理②
視察研修2日目の様子をお伝えいたします。今回は森と木のエンジニア科2年生の田中大晴さんが報告してくれます。
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ドイツ野生動物管理の視察二日目はロッテンブルク林業学校主催の巻き狩りに参加させていただきました。
※「巻き狩り」とは、森の中にいる狩猟対象獣を人や犬を使って追い立てて行う猟のことです。大きな役割として勢子と射手と呼ばれる二つの役割があります。勢子は大きな声や音を出して野生動物を追い立てていく役割をします。射手はハイシートと呼ばれる小さな高台でじっと待ち構え、勢子や猟犬が追い立てた動物を仕留める役割をします。
朝は薄暗がりの8時から開会式が行われました。ホルンの音が開会合図となっています。開会式では我々をアテンドしてくれているバイムグラーベン教授(専門:狩猟学等)から、今回の捕獲に関するルールや注意事項などの説明がありました。参加者はロッテンブルク林業学校の学生や職員の方をはじめとし、フォレスターの方や地域の猟師の方が参加していました。射手は80人、勢子は70人の総勢150人で行いました。
今回巻き狩りを行う目的としては、ノロジカとイノシシの個体数調整が目的です。また、巻き狩り自体がフォレスターを目指す学生にとって必須科目の授業の一つとしてあるようです。
午前は私とクリエーター科の長さん・通訳をしてくれている小原さんと共に勢子として巻き狩りに参加させていただきました。
巻き狩りでは人だけでなく猟犬も同行しました。猟犬も同じように追い立てる仕事をしますが鬱蒼とした藪の隙間を縫うように移動し、獲物となる野生動物を発見すると走り吠えて追い立て続けており、人の何倍も仕事をこなしていました。
実際にイノシシの群れを目にすることもありましたが、個人的に印象深かったのは最後らへんに遠くでイノシシを吠え続けながらずっと追い続けていた姿が印象的でした。これは人間には到底できない能力です。ちなみにおそらく同一個体だと思われるイノシシは猟犬に追われながら後ろを登って行き、そのすぐ後に登って行ったのであろう方向から銃声が聞こえました。その先のハイシートで捕獲が成功したようです。
バイム・グラーベン先生曰く「猟犬がいなければ今回捕獲した頭数よりもっと少ない捕獲数だっただろう」とのことで猟犬のすごさというものを見て、知ることができました。
午前の部終了後には、早々に地域のTeamブッチャーと先輩学生たちの指導で捕獲したノロジカやイノシシの解体が始まっていました。また、この解体の様子を地域の子供達が見学に来ており、こういったイベントと地域が密接にかかわっていることがうかがえました。
炊き出しを食べた後、午後は射手の方に同行させていただきました。私が同行させていただいたのはポールさんというロッテンブルク林業学校で林業について学んでいる学生の方でした。
私の場所では残念ながら野生動物の捕獲をすることはかないませんでしたが、犬の吠えている声が近づいてきたら銃をいつでも撃てる体制を整えたり、音に反応してみて確認するなど行動の節々から如何に狩猟に対して真面目に向き合っているのかを感じることができました。日本ではなかなか見られない(オープンにされていない)猟師の光景に驚きでした。
閉会の合図となるホルンの演奏が行われ閉会のセレモニーが始まりました。この1日で一番多く捕獲した人やイノシシ、ノロジカを捕獲した人に勲章となるモミの枝を渡していました。
この時にWeidmannsheil(ヴァイドマンスハイル)と言って渡しておりWeidmanndank(ヴァイドマンスダンク)といって受け取っていました。 Weidmannsheilは「狩りの成功を祝う・願う」意味でつかわれ、Weidmanndankは「狩猟の恵みに感謝」という意味でつかわれます。この言葉の掛け合いと勲章を受け取った猟師の誇らしい顔から、狩猟に対しての文化を感じました。
ということでこの言葉を最後に本記事は締めさせていただこうかと思います。
Weidmanndank‼
森と木のエンジニア科24期生 田中大晴
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あとがき
※今回のTreibjagdは日本の言葉で表すなら「追い出し猟」という言葉のほうが適しているのかもしれません。
フォレスターにとって捕獲の技術を学ぶと同時に、ノロジカやイノシシが多いと森林にどの様な影響が出るのか?また、捕獲圧のかけ方によって森と動物にどの様な影響が出るのかを学ぶ機会が設けられています。また、安全管理の徹底やデータ収集が見える形で行われていることも非常に印象的でした。ここでは書ききれないので、年明けに予定している報告会をお楽しみに!
報告:引率教員 新津裕(YUTA)








