森で暮らし、命をいただく:野生動物捕獲体験実習
クリエーター科科目「野生動物捕獲体験実習」について初回の実習の感想を学生が書いてくれました
以下に紹介いたします
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クリエーター科2年、林業専攻及び森林環境教育専攻で開催されている、「野生動物捕獲実習」。初回となる今回は、猟師だけでなく、木工作家や山ガイドなど、マルチに活躍されている水上淳平さん(Tabi・Factory@郡上市高鷲、アカデミーOB)のもとにお邪魔しました。
まず、水上さんから猟師としてどう暮らしているか、お話を伺いました。「狩猟」と「許可捕獲:被害防止」は違っており、前者は狩猟時期が決まっているのに対して、後者は農作物など人間の活動に害を及ぼす獣を駆除するという目的のため、狩猟時期が決まっていません。水上さんは1年ほぼ休みなく「許可捕獲:被害防止」のため、罠を仕掛け、見回っているとのこと。
罠にかかった動物を埋葬する猟師さんもいるそうですが、水上さんはその命の恵みを最大限生かそうと、お肉もいただいているそうです。シカ肉に関しては、地域の方と分かち合っているとのこと。なかなかとれないお肉は喜ばれるそう。
次に、実際に使用する罠を見せていただきました。
お昼を挟んで、罠の見回りに同行させていただきました。できる限り、農作物被害を防ぎたい箇所に罠を掛け、周辺に住んでいる方と積極的にコミュニケーションをとるようにしているそうです。
見回っていると。。。ある個所にかなり大きいオスジカが罠にかかっていました。あまりの大きさに水上さんも、それまでとは違った雰囲気を見せ、帽子を深く被られました。あのとき、瞳の奥が深くなられていた気がします。
まずは、角にひもをかけ、シカの動きを封じます。そして、頭の後ろに棍棒を振り下ろし、気絶させます。気絶させている間に、一気にナイフを入れて止め刺し。シカはハッハッと荒い息をしていましたが、しばらくすると瞳孔が開き、動きが完全に止まってしまいました。
水上さんがオスジカと対峙して、約10分のこと。私は初めての この体験に、少し戸惑いを感じました。私たちは安全な距離で見守らせていただきましたが…水上さんから逃げていたときのシカ。私の方を見た時のシカのまっすぐな目。なんだか、私は途中で涙が出てしまいそうでした。
その後も、見回りは続きます。ある個所では、クマがいるかもしれないと、緊張感を持ちながら。。普段は人間を襲うことの少ないクマでも、状況によっては興奮状態となり、私たちを襲いかねない。最悪のことをもシミュレーションしながらの見回りは、息がつまりそうでした。
かと思ったら、罠の見回りの途中、キノコが生えていたり。食べられるキノコは採集させてもらいました(水上さんはキノコハンターでもあります)。食べられるキノコに心躍る私。(翌日、キノコソテーにして食べました。美味。)
罠スレスレを歩いていた痕跡も見つけました。水上さんも、「もっと違う工夫をしていればよかったな~」とコメント。シカと人間の攻防に心寄せました。
緊張感があったり、驚いたり、喜んだり、複雑な気持ちになったり。同じ「森に入る」だけれど、私の気持ちはたくさん動いた1日になりました。
罠の見回りが終わると、地域の解体所へ向かいます。捕獲したシカの内臓をとるところまで、見学させてもらいました。
そして、シカの角や頭もいただくことに。今回の、シカとの出逢い。私たちも彼に感謝をして、頭骨標本をつくらせてもらおうと思います。
最近、クマの出没に関して、大きくニュースに取り上げられています。クマはもともと穏やかで怖がりで、人を襲うことは少ないと聞きます。そんなクマが里におりるようになったのは、食べ物の存在。里での美味しいものの味を知り、人が住む地域まで出没することを厭わなくなったのではないかとのこと。自然の摂理だと思います。じゃあこのままでいいのか?と考えると、やっぱり人としても困る。「こっちには来ないでね」ということを伝えるためにも、人里と森の間に立つ、猟師さんの存在はとっても大きいのだと思います。
水上さんと1日一緒に過ごし、改めて猟師という生業の重要性を感じました。それと共に、猟師さんへのリスペクトが生まれました。
また、水上さんと話していて思ったのは、森や動物への大きなリスペクトがあるということ。命と対峙し、命をいただき、命という森からの恵みを共に暮らす人たちと分かち合っている。水上さんは森にあるものを大事に思い、その恵みを最大限に生かしながら自分たちの生活に取り込んでいる印象を受けました。
少しニュアンスが違うかもしれないけれど、私も地球という存在が尊い、と思います。地球や、地球が成り立つシステムや自然の摂理を大事にしたい。そして、地球と共に生きていきたいし、人や自然と響き合って生を全うしたい。水上さんの生き方に触れ、その想いを強くしたような気がします。
そして、私はアカデミーに来なければ、野生動物を捕獲することを経験することなんてなかった。でも、こうやって経験して、動物たちが懸命に生きていく姿や、それに対峙する人(水上さん)の存在を知り、心を動かされている。うまく言えないけれど、確実に私の心はたくましく、豊かになっている気がします。
以上、森林環境教育専攻 森田さんの感想でした☆
編集:新津裕(YUTA)







