野生きのこについて学ぶ〜きのこハンターと歩く「特用林産物実習(春夏編)」〜
先日、クリエーター科2年生の特用林産物実習(春夏編)で野生きのこの実習を行いましたので、報告します。
この実習では主に林業専攻と森林環境教育専攻の学生が、きのこ栽培と野生きのこの同定について学んでいるのですが、今回は郡上市北部の山林において野生きのこを地域の山村資源としてとらえ、活動しているOBの水上淳平さんのフィールドにお邪魔してきました。水上さんは本学のエンジニア科で林業を学んで卒業したのち、山の仕事をする中で森林資源の利用についてより深く学びたいという思いからクリエーター科に再入学、木工専攻で学び、3年前に卒業しました。クリエーター科在学中は木工だけでなく、きのこなどの山の資源についても熱心に勉強していたのですが、現在はそれらの経験を活かし、木工や野生きのこのワークショップ、狩猟など山と地域の資源を活かした活動をしています。今回はきのこワークショップの体験を通して、それらの取り組みについて伺ってきました。
活動フィールドは複数あるそうですが、今回は家族連れなど野生きのこに触れるのが初めてというような初心者向けフィールドを案内してもらいました。ここは貸別荘、キャンプなどの施設の裏山で水上さんのかつての職場でもあるそう。それらの施設が近く、安全管理もしやすそうです。初心者向けと言ってもコナラやアカマツ、スギなどの様々な林が混在しており、植生の違いなども気にしながらきのこ採取を体験できるコースです。
可愛らしい籠をそれぞれに手渡してもらい、いざ山の中へ。当日は小雨模様だったのですが、ここ最近はちょうど気温も下がってきつつあり、適度な湿り気もあってそこかしこに大きなきのこが!これは期待できます。水上さんの説明を受けながら、ひとつひとつ採取していきます。
ポルチーニ類のひとつであるヤマドリタケモドキやムラサキヤマドリタケ、そしてそれによく似たイグチたち、さらにはテングタケ科、ベニタケ科のきのこなども次々に出てきます。指先ほどの小さなきのこも見逃さず採取していました。1時間半ほどの散策でしたが、あっという間にそれぞれの籠がいっぱいに。
施設に戻って来てからはまずは水上さんがいつものワークショップで実施している流れできのこを調理します。きのこの同定をしながら食用となるものを調理して昼食に、という流れなのですが、今回はきのこが大量に取れたため、明らかに食用となる美味しいきのこ(主にヤマドリタケモドキなどのポルチーニ類)を選び、調理をします。アヒージョと焼きうどんにしていただきましたが、焼きうどんにはあらかじめ用意していただいていた鹿肉や野菜類なども入れ、さらにそれにきのこの味が加わり濃厚な味わいに。水上さんが作った様々なきのこの乾燥パウダーを振りかけるとさらに違った香りと味になりました。私自身はこれまでもよく食べてきた食材でしたが、新たな発見もあり、本当においしくいただきました。
食事後は残りのきのこの同定を行いました。
きのこについてはその場で名前が判明したものは40種弱ですが、採取してきたものが大変多く、時間の制限もあって未同定のものがそれ以上に残ってしまいました。実習でこれほど多くのきのこが集まったのは久しぶりです。私と水上さんでわかるものだけ解説を行いました。
このようなワークショップは郡上市の観光webサイトから募集しているそうで、名古屋や静岡、石川など県外からのお客さんが多いそうです。お客さんのニーズにも十分応えられるように、ワークショップ一回の定員は10名程度にしているとのことですが、一回の参加で飽き足らずリピーターとなっている方や、さらに山深い場所で実施している上級者コースに参加する方もいるそうです。
ただ、きのこの発生は天候に左右される面があるため日によってはあまり取れない時もあり、その場合は事前の下見で中止の判断をしたり、あらかじめ用意した食材や山に置いてあるほだ木のきのこなども利用したりするそうです。そう言った意味できのこシーズンは胃の痛い日が続くそうですが、それども全く出ていないということはまずないので、きのこを食べることにこだわらなければ、見かけたきのこを観察し、採って話をし、山の資源を活かした食事を提供するするだけでも満足してもらえるとのこと。
下見についても、狩猟の罠の見回りついでに行うためそれほど手間ではないとのことでした。とはいえ色々と気苦労もあるのではと思いますが。
またワークショップ以外にも複数のレストランへヤマドリタケモドキなどの野生きのこを卸しているそうで、そちらも需要が多くこの時期は忙しく作業しているとのことです。
これらの取り組みは今はほぼ1人で頑張っているそうですが、行く行くは地域の山の資源に関わる関係者人口を増やして盛り上げていきたいとのこと。そのためにも定期的に小学校に行って、子どもたちに山の様々なことを教えているとのことでした。以前から山を利用してきた地域ではありますが、先人の思いも引き継ぎながら地域全体で山を使ってよくしていこうという思いがひしひしと伝わって来ました。学生も自分たちの卒業後のことを考えながら、思うところがあったようです。
水上さんにはきのこシーズンで忙しいなか対応していただき、本当にありがとうございました。
次回はやはりアカデミーOBのところで、1年生の時から関わらせてもらっているマイタケ栽培の集大成であるマイタケの収穫を体験させてもらう予定です。
(林業専攻教員 津田)